黒ギャルの女医がガチで活躍する4コマ医療ギャグ漫画『ギャル医者あやっぺ』。血圧アゲアゲの患者に見せたものとは?
公開日:2024/3/10
1990年代後半から2000年初頭頃、都心に数多くいた黒ギャル。いまではK-POPスタイルを中心にファッションセンスが多様化し、黒ギャルの姿を見ることはかなり少なくなった。しかし彼女らが当時、若者たちのファッションリーダー的存在だったことは言うまでもないだろう。そんな黒ギャルになつかしさを感じる人には、ぜひ『ギャル医者あやっぺ』(長イキアキヒコ/竹書房)をおすすめする! 冒頭からギャル語満載の女医あやっぺが主役の本作は、あの頃の渋谷や池袋にいた黒ギャルたちを思い出させてくれる。
ただ医療漫画と聞くと、『医龍』『ブラック・ジャック』『コウノドリ』といったシリアスな作品を思いだす人は多いはず。医療小説も医師とその患者の苦悩を描いた作品が多い。総じて「医療現場=心にグッと刺さる話が多い作品」になりがちで、主人公をコメディ側に振り切った作品はあまりなかったのではないだろうか。でも安心してほしい。そんな医療漫画の常識を覆そうとしているのが本作だからだ。
コマの構成も医療漫画には珍しく4コマ漫画風、また感覚値ではあるが「うええええええい!」や「血圧アゲアゲになってんじゃん!」「マジおめでたじゃね!」といった、かつて黒ギャルが多用していた言葉の方が多くみられる。あやっぺ以外の登場人物、院長や看護師のノリも良く、終始テンションが高いのも魅力だ。
コメディ要素が多いとはいえ、医療・診察シーンはしっかり描かれている。歯科・眼科・救急と診療科の区別こそないものの、患者への接し方はリアルな現場に近いように感じられる。ただオチはしっかりギャル風に仕上げており、リアルとコメディがバランスよく織り交ぜられている。本作が多くの人に読まれている点はここにあるのだろう。
また昨今は、社会情勢を鑑みた意味やテーマを込めている作品や、伏線をちりばめつつ話を膨らませている作品は多い。もちろんそれも漫画の醍醐味であり熱中するポイントなのだが、本作にそれらを感じることはなかった。すなわちそれは難しいことを考えずに読み進められるという証でもある。「黒ギャルの女医」という設定ですでにぶっ飛んでいるが、作中では宇宙飛行士や、ある国のお姫様、刑事、ホームレスになったあやっぺも登場する。読めば読むほど「何かを考えながら読むことがいけないのでは?」と思ってしまうほどハチャメチャだということに気付くはずだ。
日々の仕事で疲れている人はもちろん、人生につまずいた人や、仕事やプライベートでモヤモヤを抱えている人にも読んでいただきたい。完結巻となる4巻は2024年4月17日(水)に発売が決定している。あやっぺの清々しい性格とギャル特有の潔さに元気をもらえるはずだ。
文=トヤカン