「ここは俺にまかせて先に行け!!」と言って戦っていたら10年経過? 魔神王を倒してから始まる冒険ファンタジー漫画

マンガ

公開日:2024/2/22

ここは俺に任せて先に行けと言ってから10年がたったら伝説になっていた。
ここは俺に任せて先に行けと言ってから10年がたったら伝説になっていた。』(えぞぎんぎつね、阿倍野ちゃこ:著、天王寺きつね、DeeCHA:他/スクウェア・エニックス)

 王道ファンタジーと言えば、勇者パーティーが魔法使いや剣士とともに魔王を倒すべく旅に出るRPG風の話を思い浮かべてしまう。最近では、そのオーソドックスな流れ以外にも様々なバージョンが登場し飽きが来ないジャンルだ。

 魔神王を倒した後から話が始まる『ここは俺に任せて先に行けと言ってから10年がたったら伝説になっていた。』(えぞぎんぎつね、阿倍野ちゃこ:著、天王寺きつね、DeeCHA:他/スクウェア・エニックス)は、人気のライトノベルの漫画化作品だ。導入をそのまま表現したようなわかりやすいタイトルの通り、主人公の魔導士ラックが1人で魔神王と戦い、倒して戻ると、10年の月日が経っていた……。

 次元の狭間で魔神王と戦っていたラックは、生還後、戦い続けて10年経っていたことを知る。10年といったら、10歳の子が大人になり、赤ん坊も小学生になっているくらいの時間である。それだけ長い月日を戦っていたのかと驚く。10年経った世界では、ラックはすでに亡くなっているとされていた。広場には「10年前に次元の狭間で自分の身を犠牲にして魔神の大軍を一人で食い止めた大英雄です!!」と、“英雄ラックさまの像”が建てられていた。魔法の影響で若返りまでし、過去に取り残された状態のラックだったが、旅の仲間たちと再会を果たす。そこでめでたしめでたし……、で終わりになったら話はすすまない。

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 ラックは元の世界に戻れば、仲間たちと昔と同じように冒険の旅に出られると思っていた。しかし仲間たちは歳を取ってライフステージも変わり、勇者は王様に、剣士はギルド長となってしまっていた。ラックは世間的に死んだと思われているため、「ロック」と名乗りFランク新人冒険者として新たな生活をスタートすることにする。

 魔神王が倒され、平和な世界になったと思いきや新たな強敵も現れる。それは、吸血鬼(ヴァンパイア)たちだ。あまりにも強力で世界を揺るがしかねない敵たちに、ラックは新たに加わる仲間たちやかつての仲間の協力を得て、立ち向かっていくことになる。新たな仲間と絆を深め、その関係はやがて「家族」のようになっていく。

可愛い女子に胸キュン必至!? ラックのまわりに集まる登場人物も大注目

 本書の注目ポイントは、ヒロインたちがとても魅力的に描かれていることだ。読んでいると、自分の推しが誰かしらできそうなほど、多彩な女性キャラが登場する。ケモ耳と尻尾がキュートなヴァンパイアハンターの獣人族、かつて一緒に旅した戦士の娘で自称ラックの1番弟子、古代魔法研究をする王国一の錬金術士をはじめ、才能と個性に溢れた女性陣が活躍し、ストーリーを盛り上げていく。恋愛メインではないためお色気要素も気にならず本筋に集中できるが、これだけ女性がいて主人公は誰かと恋に落ちないのだろうか。今後の展開に注目していきたい。

 また、吸血鬼たちとの戦いはどうなっていくのか。13巻においては、ラックが次元の狭間で戦っていた時やラックの子ども時代のエピソードも描かれる。そして、思わぬ展開へと発展しそうな火種を残していく……。世界の平和を守るラックと仲間たちの冒険から目が離せない。

文=山上乃々