虐げられた少女は最強のあやかしに溺愛される――『鬼の花嫁』4巻では「かくりよ学園」入学で新たな波乱の予感!?

マンガ

PR 公開日:2024/2/14

鬼の花嫁
鬼の花嫁4』(富樫じゅん:漫画、クレハ:原作/スターツ出版)

 成功を勝ち取るというストーリーは、多くの場合、本人だけの実力で得られるものではない。タイミングや運、周囲からの助けなどさまざまな要素が重なって、そこで初めて生まれる奇跡だと筆者は思っている。だから立場だけで人を判断し、見下したり虐げたりするなんてもってのほか。しかし中には、自分の現状をそのまま自分の実力と錯覚して思い上がってしまう人間もいる。

鬼の花嫁』(富樫じゅん:漫画、クレハ:原作/スターツ出版)は、容姿や環境に恵まれ、何でも許される環境で育ってしまった妹に虐げられてきた、不遇の人生を歩んできた主人公の逆転劇。原作は、スターツ出版が運営している小説投稿サイト「ノベマ!」で連載されている小説で、2024年1月26日にはコミカライズ版最新刊となる『鬼の花嫁4』が発売されたばかり。

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 本作品は、あやかしと人間が共存している架空の日本を舞台に描かれる。この世界では、優れた能力と美貌を併せ持つあやかしたちが、稀に人間の中から運命の存在「花嫁」を見出す。この関係は非常に強固なもので、花嫁として見初められた人間は、そのあやかしに繁栄をもたらす代わりに、絶対的な愛によって守られるのだ。

 主人公・柚子の妹・花梨は、あやかしの中でも大きな力を持つ妖狐・狐月瑶太(こげつ ようた)の花嫁。そのため家の中に柚子の居場所はなく、ずっと辛い思いをしてきた。だがある日、とある事情で家を飛び出したその先で、柚子は最強と言われている鬼のあやかし・鬼龍院玲夜(きりゅういん れいや)の花嫁として見初められる。

1巻p84

1巻p46

 そして柚子の状況を知った玲夜は、実家から柚子を救い出して一緒に暮らすことにするが――!?

 甘え上手で我が強い花梨に虐げられ、両親にもないがしろにされてきた柚子。さらには初めてできた恋人も、柚子より花梨を選んでしまった。そのため、玲夜に愛を伝えられても最初は信じられずにいた。だが柚子は、さまざまな人物からの妨害や障害、疑惑を乗り越え、少しずつ成長しながらめげずに玲夜との関係を育んでいく。

 一方、柚子が瑶太より上のあやかしと幸せになることが許せない花梨は、玲夜と柚子の関係を引き裂こうと手を尽くす。

1巻p193

 自分は優遇されて当然、我儘を聞いてもらえて当然、という思い上がりの中で、止める瑶太の話も聞かずにやりたい放題。隙あらば柚子と玲夜の邪魔をしていく。

2巻p46

 しかしその結果は――。

 もしも花梨が手にした幸運に感謝し、素直にそれを享受していたら、きっと花梨も幸せを掴んでいたことだろう。人の足を引っ張ろうとする行為は、自分の大事な時間をその相手で失う行為に等しい。花梨は、柚子を妬み玲夜から引き離したいと願うあまり、本当に見るべきものが見えなくなってしまったのだ。こうした状況は、現実でもよく見かける。花梨を見ていて、自分にとって本当に大切なもの・ことが何なのか見失ってはいけない、という良いお手本だなと感じた。

 最新刊の4巻では、花梨や家族とのいざこざも終息し、柚子が高校を卒業した後の進路の話に。柚子は親友の透子や玲夜、玲夜の元婚約者・桜子の勧めで、あやかしや花嫁の大半が通うという「かくりよ学園」への入学を決意する。

19話p13

 しかし、あやかしが多く通う「かくりよ学園」において、玲夜の花嫁である柚子は否が応でも目立ってしまう存在だ。柚子はそこで新たな花嫁と出会うなどして世界を広げていくが、何やら怪しい人物の動きも見え隠れしていて――!?

19話p39

 玲夜に相応しい花嫁になろうと真っ直ぐ生きる柚子と、そんな柚子を見守り助けてくれる玲夜や透子、鬼龍院家次期当主の玲夜の「花嫁」を狙う者、妬む者、取り入ろうとする者など、これからも多くの人々の思いが交錯していくことだろう。だがきっと、柚子と玲夜なら何があっても乗り越えてくれるはず。また、柚子の両親や花梨の行く末も気になるところだ。引き続き、ふたりの関係から目が離せない!

文=月乃雫