「怪・真夜中にチャイムが鳴る!?」学校新聞のトップ記事を見て、自閉症のアルクが一言/歩く。凸凹探偵チーム①

マンガ

公開日:2024/3/1

 教室に入ると、みんなけっこうオヅの新聞を読んでいる。

「なあ、夜中のチャイムって、やっぱ、霊のしわざかなあ?だって、この学校の横って、昔墓地だったんだって」

 と、前の席の川野が振りかえって、ぶるっと震えてみせた。

 新聞で『霊がチャイムを鳴らしている』って断言してるわけじゃない。

 真夜中のチャイムの記事の最後に『昔、学校のそばに、墓があったらしい』とあるだけだ。

 うそはついてないけど、バッチリ興味をひける。

 オヅの悪知恵にひっかかってる川野にむかって、ぼくは冷静にこたえる。

「あのさ、人類の歴史は何千年ってあるんだぜ。あちこちでいろんな人は死んでいるだろうよ。それがいちいち化けてでて悪さしたら、日常生活なりたたないだろうが。それに霊がわざわざ真夜中にチャイム鳴らす意味がわかんねえ。訴えたいことがあるなら、昼間にリンゴンリンゴン鳴らしたらいいだろ?」

「理人くん、虹岡小学校のチャイムの音はリンゴンリンゴンではありません」

 アルクが横から、細かいことにつっこむ。

 ちょうど朝のチャイムが鳴り、オヅがすべりこんできた。

 ぼくの右横の席についたオヅは、

「のぉ、新聞読んでくれた?」

 と、つついてくる。

 真夜中のチャイムの記事のなかには、学校の近所の人のインタビューが数人分のせてあった。

「夜中ごろ、たしかにチャイムの音を聞いた」と。

「その音は、どこか不気味で怨念めいたものが感じられた」と、

 さらに「チャイムの機会の時間設定を先生にたのんで確認してもらったが、0時にセットはされていなかった」と……。

 ふむ。

「オヅ、質問。真夜中のチャイムはいつから鳴りはじめた?」

 記事にはそこは書いていなかったから、気になった。

「おおっ。理人、記事に興味持ってくれたんかー。うれしいのぉ。……いつからか正確なことはわからん。春休みに夜更かししたやつが気づいて教えてくれたんじゃ。それで、あちこち聞き込みしたら、そういえば夜中に聞いたような気がするって人が、たくさんいたんじゃ。」

「職員室のチャイムの機械、『0時にはセットされてない』って確認したのはいつ?」

「3日前。先週の金曜日じゃ。高木先生にたのんで、見てもらったんじゃ。」

「金曜日以後も、0時のチャイムは鳴ったのか」

「いや、金曜夜は確認できなかった。土日はチャイムが鳴らない設定じゃし……」

 そして今日は、月曜日。

 ―――――――なるほど。

「なあ、オヅ。もう0時のチャイムは、鳴らないんじゃないかな」

 そういったぼくの顔を、オヅがじっと見る。

 そのとき、担任の田野先生が入ってきた。

 日直の「起立」の言葉に立ちあがりながら、そのつづきは、指文字でオヅに伝えた。

 オヅとぼくは、手話を習ったことがある。

 手話は少ししか覚えられなかったけど、指文字は覚えている。

 指の動きで五十音を表現するんだ。

 オヅも覚えているはずだ。

 ぼくの指の動きを読んだオヅは、なにも返事せず、まっすぐ前をむいた。

 その日、オヅが、真夜中のチャイムの話題をぼくにすることはなかった。

 

<第2回に続く>

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