「オーブンでブロック肉料理は上級者向け」を覆す。初心者でも簡単に始められる、美味しい肉料理レシピが詰まった一冊
公開日:2024/2/27
オーブンでブロック肉(かたまり肉)を焼く料理は「上級者向け」というイメージが強い人が多いだろう。筆者もそんな1人だった。
オーブンレンジを購入後も長らくオーブン機能は使用せず、奥さんが焼き菓子を作る時に使うのみ。一度だけネットのレシピでローストチキンを焼いた時は「意外と簡単なんだな」と気づいたものの、それ以外のレシピは特にチャレンジしてこなかった。
そこで「他の肉料理にもチャレンジしてみるか」と買ってみた本が、『低温オーブンの肉料理 拍子抜けするほどかんたんなのに、絶品“常備肉”』(今井真実/グラフィック社)だ。
今井真実さんは近年SNSでも大人気の料理家で、筆者もファンの1人。身近な材料で、少し意外な組み合わせや手順で作る料理が非常に絶品で、切った大根をトースターで焼くだけの「素焼き大根」は我が家でも定番料理だ。そんな今井さんのオーブン料理の本を、実際に作ってみながらレビューしてみた。
簡単なのに本格的な味がする「絶品焼豚」
まずトライしてみたのは、本の冒頭に紹介されている「絶品焼豚」。筆者がレシピ通りに作ってみた写真がこちらだ。
香ばしそうに焼けた外側の色みや、お肉のしっとり感が伝わるだろうか。実際、メチャクチャ美味しかった。
八角の甘い風味が本格的で、お肉はみずみずしく、脂身の少ない部分も、噛むほどに肉の旨みが口いっぱいに広がっていく。決して派手な味ではないが、とても品のある美味しい焼豚に仕上がっていた。
そして、これがメチャクチャ簡単に作れてしまうのである。主な手順は以下の通りだ。
肩ロース肉(ブロック)を常温に戻す
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予熱なしの100℃のオーブンで90分焼き、粗熱が取れるまで庫内で冷ます
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タレに漬け込んで1~2日置く
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食べる直前にトースターや魚焼きグリルで香ばしく焼く
オーブンで焼く時間や、タレに漬け込む時間は長いが、手を動かす時間は非常に短い。タレの材料に八角が必要な点だけ購入が手間だが、それ以外の調味料は普通に手に入るものばかり。料理初心者でもトライしやすいレシピと言えるだろう。
この焼豚のレシピを知れただけでも、本書は十分に買う価値があると感じるが、ここからが今井さんのレシピ本の真骨頂。この先には「香港風焼豚丼」「炒飯」「焼豚NEWめん」など焼豚を使ったアレンジレシピが複数紹介されており、その一つ一つが美味しそうなのだ。
いくつか作ってみた中で、特に面白かったのが「焼豚NEWめん」。温かいそうめんに焼豚をのせるレシピなのだが、「茹で汁をそのままスープに使う」「だしの代わりに塩昆布を多めに使う」「お酢を少量入れる」など意外性のある作り方が今井さんらしい。焼豚に合った中華風の味わいで、まさに食べたことがないにゅうめん=NEWめんだった。
低温調理でしっとり柔らか。しかも冷凍保存の「常備肉」になる!
本書には他にも「絶品ローストポーク」「レモンローストポーク」「絶品ベーコン」「絶品ローストチキン」「絶品ローストビーフ」などなどが紹介されている。
作り方の共通点はタイトルの通り、オーブンを使い、低温でじっくり加熱すること。筆者はローストチキンやベーコンのレシピを試してみたが、やはり低温で加熱したためか、どのレシピでもお肉が非常に柔らかだった。しかも冷凍保存すれば1カ月程度は持つので、タイトルのとおり「常備肉」として日々活用することができる。
そのまま食べても美味しい肉料理ばかりなのだが、アレンジレシピも含めて覚えれば、料理のレパートリーを大きく増やすことができ、時短で美味しい料理を作ることも可能になるのだ。
そしてアレンジレシピの一つ一つが、やはり意外性があって楽しい。絶品ベーコンを使う「ブロッコリーのくたくた煮」はローリエくらいしか変わった食材は使わないが、非常にリッチで複雑な味がして、我が家でも家族が大絶賛。オイスターソースや黒コショウが入る「ベーコン豚汁」は、不思議な甘さがクセになる味だった。
……という感じで色々な料理を作ってみたのだが、本書に掲載されたレシピはこの10倍くらいはある。噛めば噛むほど美味しいお肉のように、このレシピ本はじっくり長く付き合いながら、折に触れて新しい料理にトライすることで、より楽しさが増していく本になりそうだ。
文=古澤誠一郎