その発想はなかった… いつもの味噌汁が少しの工夫で大変身!「じゃがバターのお味噌汁」を作ってみた
PR 公開日:2024/2/16
最近出たばかりのレシピ本『有賀薫 私のおいしい味噌汁』(有賀薫/新星出版社)を参考に、日々の味噌汁をせっせと作っていたら、「お味噌汁って同じ具になりがちだから、その本すごく良いね。長いもをすりおろして具にするなんて思いつかないもん」と夕食を食べた奥さんが言っていた。
ちなみに、その時に作ったのは「おとしいも」というレシピのお味噌汁。京都の汁物専門店『志る幸』の名物を参考にしたものだそうだ。
スープ作家の有賀薫さんが初めて「お味噌汁」をテーマにした本書には、この「おとしいも」のように、ちょっと変わったお味噌汁のレシピが64種類載っている。筆者が魅力に感じたのは、どれも「ちょっと変わったお味噌汁」ではあっても、味わいは非常に素朴で、具材や作り方も生活に寄り添ったものが多いことだ。
たとえば「小さな豆腐と油揚げとみょうが」のお味噌汁。豆腐は7~8mmの小さな角切りなのだが、このレシピは有賀さんの息子さんが離乳食だった頃に、豆腐を小さく刻んでいた体験から生まれたレシピなのだそう(本書はこうしたレシピにまつわるエピソードも一つ一つが面白く味わい深い)。
食べてみると、プルプルの小さな豆腐たちが、口の中を滑るように入ってくる食感がまず楽しい。そして舌で軽く潰すだけで、大豆のコクと甘みが口いっぱいに広がっていく。みょうがが入ることでピリッと爽やかな風味も加わっており、大人が食べてもとても美味しい一杯に仕上がっているのだ。
味噌汁の専門書だけど、ハードルはメチャクチャ低い!
本書は味噌汁の専門書といえる内容だが、冒頭で「いばるような味噌汁はこの本には出てきません」と書かれているように、ハードルは極めて低い。
筆者は顆粒だしに頼りっきりで味噌汁を作っているので、「だしは絶対に煮干しと昆布でとりましょう」など書かれていたらその時点で心が折れてしまうのだが、本書は「顆粒だしやだしパック、どんなだしでもOK!」と書いてあってホッとした。
もちろん味噌汁の本なので、煮干しと昆布のだしのとり方も紹介されているし、「だしと味噌の深い沼」を掘り下げるページもあるのだが、ほぼ全てのレシピは「だし…450ml、味噌…大さじ2」のように、だしの種類・とり方も、味噌の種類も指定されていない。この点も初心者は非常に安心だろう。
そのほか筆者が作ってみて気に入ったのは、たとえば「豆腐とピリ辛ねぎ」のお味噌汁。ラー油で和えた薄切りねぎを乗せただけの豆腐のお味噌汁なのだが、シャキシャキしたねぎの食感と、ピリリと響くラー油とねぎの辛味で、ごく普通の味噌汁が気の利いた大人の汁物に変身してしまうのだ。時間のないときにもサッと作れて満足感の高いお味噌汁といえるだろう。
あとは「じゃがバター」のお味噌汁もたまらなかった。「なんとなく札幌ラーメンからの連想」と書かれていたが、味噌汁にバターを入れるというのは、思いつけそうで思いつけない。このレシピでは「15分ほど、じゃがいもが柔らかくなるまで煮る」と指定があるのだが、バターの甘さとじゃがいものほろほろ感の相性が抜群で、こうしたレシピのこまやかさも「さすが有賀さん!」と唸るポイントだった。
……という感じで、本書のレシピは本当に気取っておらず、ベーコンエッグのお味噌汁もあれば、「マッシュポテトの素」を使ったレシピ、ポテトチップスを入れてしまうレシピまである。背表紙に「味噌汁はがんばらなくて大丈夫!」との言葉が掲げられているとおり、「頑張らずに美味しいお味噌汁を食べたい」という人には非常におすすめしたい一冊だ。
調理・文=古澤誠一郎
新星出版社のライフマガジン『Fun-life!』
https://fun-life-shinsei.com/