真夜中の学校で確認したいことが…。家をこっそり抜け出した理人とアルク/歩く。凸凹探偵チーム②
公開日:2024/3/2
0時少し前。校門前についた。
結局、アルクもついてきた。
しゃがんで、目を閉じている。眠いんだろうな。
アルクは苦手な音がする場所では、イヤマフをつける。
ヘッドフォンみたいなかたちのもので、今はそれを首にかけている。
真夜中だから、アルクの苦手な音なんてしないのに、習慣で持ってきたのだろう。
その数分後のことだ。
「小月くん、こんばんは」
顔もあげずにアルクが言った。
ぼくが気づくと、すぐそばにオヅが立っていた。
ぼくには、なにも聞こえなかったのに。
イヤマフをしてないときのアルクは、やたら耳がいい。
かすかな足音を、ちゃんと聞きわけていたのだろう。
「こんばんは、アルク、理人」
「来たんだな」
「そりゃあ来るわいのぃ。指文字で、今夜0時にチャイムが鳴らんかったら犯人はオヅ―――なんて言われたらのぉ。――でも、なんで俺が犯人なんじゃ、理人」
「犯人はオヅだ、なんて言ってないだろ。オヅなのかってきいただけだろ」
「似たようなもんじゃろ。なんで、そう思った?」
「動機と、可能性からだよ」
ぼくはまっすぐにオヅを見つめながら、説明をはじめた。
オヅは機械に強い。
チャイムの時間変更だって、やればきっとできる。
だけど、職員室には、いつも人がいる。
でも、あれは3月14日。ホワイトデーのこと。
クッキングクラブがクッキーを作って、職員室へ差し入れをして、先生たちはみんな、そのまわりに集まっていた。
ぼくは科学クラブの先生に用があって職員室をのぞいた。
けど、科学クラブの先生はいなかった。
そのとき、職員室のすみっこに、オヅがいた。
色画用紙などの備品がおいてある場所だったので、選んでいるのかなってそのときは思ったんだけど……、チャイムの機械は、あの奥にあるんだよな。
「―――チャイムは、3月14日の放課後から、正しいです」
しゃがんで地面に顔をむけたまま、またアルクが言った。
アルクの「3月14日からチャイムの音が正しい」って言葉を聞いて、その日の職員室でオヅを見かけたこと、思いだしたんだ。
「そのとき、オヅは、0時にチャイムが鳴るようにセットしたんだろ。そのついでに、チャイムの機械本体の時間が1分遅れていたのを、直したんだ。オヅ、そういうところ几帳面だよな」
オヅはなにも言いかえさずに聞いている。
ぼくはつづける。
0時にチャイムが鳴ってることを何人かが気づいたら、今度はセットを解除しないといけない。
真夜中のチャイムのことがあまりに騒ぎになると、先生がチャイムを調べるだろう。
だれかが勝手に0時にセットして鳴っていただけじゃ、ただのいたずらで、謎でもなんでもなくなってしまう。
はやめに解除したい。
だけど、なかなかできなかった。
春休みは職員室に入る用もないし、新学期もチャンスが少ないからだ。