真夜中の学校で確認したいことが…。家をこっそり抜け出した理人とアルク/歩く。凸凹探偵チーム②
公開日:2024/3/2
先週金曜日は、避難訓練があった。
そのときオヅは「おなかがいたい」と言って、保健室に行った。
オヅは「1人で寝てますから」と言って、残ったんじゃないのか。
保健室のとなりは職員室だ。
職員室には事務の先生だけ。
オヅが1人忍びこんでも、気づかないかもしれない。
事務の先生の席からは、チャイムの機械の場所は、見えにくいし。
無事に解除して、その放課後、0時にはセットされていないことを先生に確認してもらった。
そして、土日のあいだに新聞を完成させて、印刷した。
市役所の印刷コーナーは土日もあいているから、できたんだ――。
ぼくが長い推理を言い終えると、一瞬、あたりがシンとなった。
「――って、どれもただの想像だよ。オヅには、0時にチャイムが鳴るようにすることができたってこと。そして、新聞のネタがほしかったっていう、動機があるってこと。ぼくがわかってるのは、それだけだ」
と、ぼくは両肩をすくめた。
オヅが、うっすら微笑んだ。
「今日の放課後、理人は職員室へ行って、0時にセットされとらんか自分でも確認したんじゃろ?」
「うん、セットはされてなかった」
「もし今夜0時にチャイムが鳴ったら、オレが犯人じゃないって証拠になるわけじゃね」
オヅが、挑戦的な顔になる。
……たしかに。
セットされてないのにチャイムが鳴ったら、ぼくの推測は全部くずれる。
その時計は正確だ。
少しひんやりした風が、ぼくたち3人の間を拭きぬけた。
そのとき、時計の短い針と長い針が重なった。
0時だ。
キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン
0時になると同時に、レトロなチャイムの音が鳴った。
「チャイムが……鳴った?」
学校のチャイムは、たしかにセットされてなかった。
先生には帰るときにも、もう一度チェックしてくれるようにたのんでおいた。
鳴るはずがない。
すると、アルクが立ちあがった。
「音が、ちがいます」
「……!」
鳴らないと思っていたチャイムに、おもわず動転していたけれど、そう言われてみれば……。
音の大きさも響きも、ちがってないか。
アルクが校門を乗りこえた。
夜、校庭に入っただけでは、警報機は鳴らなかった。
でも、校舎に入ると、きっと警報機が鳴る。
アルクが校舎に入らないか心配したけど、アルクは、校庭の桜の木のそばで立ち止まった。
大きな枝の根元にスマートフォンがおいてあった。
そのブルーのスマホには、見覚えがあった。
オヅのだ。
オヅがやってきて、スマホを取りあげてポケットにしまった。
「……チャイムの音を出せるアプリがあるんじゃ。理人が来るまえにセットしといたわ」
オヅは、それだけ言うと、ぼくらに背中をむけて、校門のほうにむかう。
そのうしろすがたに、なんだかぼくは腹がたってきた。
「おいオヅ! インチキしてまで、特ダネがほしかったのか? 新聞ってのは、真実を書くもんじゃないのかよ!」
「わかっとる」
オヅは、振りむいてはくれなかった。