真夜中の学校で確認したいことが…。家をこっそり抜け出した理人とアルク/歩く。凸凹探偵チーム②
公開日:2024/3/2
翌朝。
寝不足で、ぼくがいつもよりいっそう重い足をひきずって学校に近づくと、
「号外! 号外~!」
と元気のいい声が聞こえた。
新聞を配っているオヅのすがたが見えた。
……おい……。
「おはようさん、理人、アルク」
オヅはぼくのすがたを見つけると、笑顔で1部さしだした。
ぼくたちは1部ずつ受けとって、そのまま教室にむかう。
ゆうべ、あれから号外を作ったのか?
無料印刷へいく時間はない。
家のプリンターか、コンビニでコピーしたのか。
1ページ片面だけとはいえ、広告もなく、赤字覚悟で作ったんだろう。
「新聞には真実だけ」
っていうぼくの声に心を動かされて作った号外か……ん?
号外なのに、天気予報のコーナーがある。
アルクとの約束だからか。
天気予報コーナー ずっといい天気
そう書いてあるだけだけど、オヅオリジナルのお天気マークを見て、アルクが笑顔になる。
少しなごんだ気持ちが、記事を読んで、ふっとんだ。
『真夜中のチャイム事件の真相』
前号掲載の「真夜中のチャイム事件」。じつは、あの記事は我が新聞社からの挑戦状であった。
3月14日、記者の1人が、ひそかに職員室のチャイムの機械を0時にセットし、この謎をしかけた。その音を聞いた人が現れたあと、セットを解除したのだ。
真相はごく単純なものであった。だが、ある2名が、この真相をつきとめたスピードは、評価に値する。
我が新聞社は今後もさまざまな謎の解明をしていく予定である。それには謎解きが得意な記者が必要であった。そのための推理力をためす、採用試験をかねたのが創刊号であった。
晴れて2名が、我が新聞社専属の探偵となった。
探偵の力を借りたい読者は、ぜひ情報をお寄せいただきたい。
なんだっ、このつっこみどころ満載の号外は!
「記者の1人が」って、そもそも記者はオヅ1人しかいないだろうが!
そして、この写真はなんだ――っ!
記事の中に小さな写真があって、よく見ると、校門のところでとられたらしいアルクとぼくだ。
しかもまるで犯罪者のように、目のところに黒い線をいれて!
ぐぬぬぬぬ。
オヅが来たら、山ほどの苦情を言ってやる。
謎解きなんか、だれがするものか。
朝礼のチャイムすれすれ、オヅが教室に飛びこんできた。
「理人! アルク! さっそく、謎解きの依頼がきたぞ――!」
うれしそうなガッツポーズのオヅを見て、ぼくは、かるくめまいがした。
<第3回に続く>