ラブレターをもらった4人には共通点が。理人が気づいた、桐野さん宛ラブレターの差出人は…/歩く。凸凹探偵チーム④

マンガ

公開日:2024/3/4

歩く。凸凹探偵チーム』(佐々木志穂美:作、よん:絵/KADOKAWA)第4回【全4回】

自閉症の凸凹も、ひとつの個性――。小学6年生の理人と、いとこのアルクは毎日いっしょ。自閉症のアルクには色々なこだわりがあって、気をつけてないと辛くなるときもある。でもその代わり、アルクには理人が気づけない「ほんの少しのチガイ」が分かるのだ。ある日、理人はクラスメイトのオヅから【真夜中の学校に鳴るチャイムの怪異】のナゾ解きを持ちかけられた。アルクがポソリとつぶやいたヒントから真実はすぐに見えたけれど、でもこれってどういうことだ…? ぼくらみんなが探偵だ。みんなの個性をつなげて、大きな真実を見つけよう! 全員主役のニュータイプ・ミステリー『歩く。凸凹探偵チーム』をお楽しみください。

歩く。 凸凹探偵チーム
『歩く。 凸凹探偵チーム 』
(佐々木 志穂美(著), よん(イラスト)/KADOKAWA)

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 アルクといっしょに、待ち合わせの公園に行く。

 ほどなくオヅが来た。

「先生に手紙をわたして、これまでの状況、話しておいたけぇ。それから、オレなりに3人の共通点、4人の共通点を考えていたんじゃけど、たいしたのが浮かばないんじゃ。3人は同じ塾じゃけど、桐野は行ってないし。あ、そうそう、喜多川くんと丸谷は同じ自転車じゃ。あれ、かっこいいけど高いけえのぉ。うちの母ちゃんは絶対買ってくれんわ」

「同じ塾……それが一番大事な共通点だったかもね。ぼくが最初に気づいたのは、数字と方角なんだ」

 

   喜多川一也

   丸谷信二

   三田東

   桐野美波

 

 4人には、キタ・ニシ・ヒガシ・ミナミが、名前のなかに隠れている。

 3人には、一二三がふくまれている。

「喜多川くんがケガしたのは塾より北じゃし、ミタは塾より東でケガしたんじゃ。方角も関係あるんじゃないかのぉ」

「どこでケガするかなんて、しかけた人間にもわからないから、方角は無関係だ。そもそも桐野さんも、この事件に無関係だ」

「へ、なんでじゃ? ラブレターをもろうてるのに?」

 オヅが間のぬけた声を出した、そのとき。

 そこへ、桐野さんがやってきた。

 差出人がわかったと言って、ぼくが呼びだしたからだ。

「こんなところに呼びださなくても、メッセージで教えてくれたらよかったのに」

 わざわざ呼ばれたことに、ちょっと不機嫌そうだ。

「で、だれなの。ラブレターの差出人は」

 桐野さんの大きな瞳の奥に、真実がうつってないか。

 見つめてみたけど、なにも見えない。

 証拠も、自信もないけど、ぼくの考えを言うしかない。

「ぼくの推理では――――差出人は、桐野さん自身だよね?」

 桐野さんの目は、一瞬さらに大きくなって、またなにごともなかったようにポーカーフェイスにもどった。

 

「桐野さん、気づいたんだよね、ラブレターをもらったって騒いでた3人の名前のなかに、たまたま方角が入っていることに。そして、自分の名前にも、その方角が入っている。それで、このラブレター事件に便乗しようと思ったんだよね。自分だけ女子で、1人の人間がラブレターを書いてるって設定はちょっと不自然だけど、どうもこのラブレターは、本気っていうより、不幸の手紙っぽいところがある。それなら便乗できるって。

 なぜ便乗しようなんて思ったか。それは、3通のラブレターからキラキラの香りがしたからじゃない? キラキラの香りの手紙は、願いがかなうって言われて人気だけど、キラキラの香りの手紙を受け取ったら悪いことがおきるってイメージがつけば、キラキラの人気が下がるかもしれない。それが目当てだったんじゃない?」

 桐野さんは数秒間、ぼくをにらみかえしていた。

 けど、すぐにケラケラ笑いはじめた。

「有川くん、すごーい。本当に探偵なんだ」

 あたった……あたったのか?

「そう。立石化粧品店さんだっけ。ただでためさせてくれるから、もー、あっちこっちでみんな、キラキラの香りをさせてるの。でも私、あんな安物とはいっしょにされたくないのよね」

「ピンクローズドリーム」

「あら、探偵さんって、そんなことまでわかっちゃうの。私がママに買ってもらってるパフューム、PRDの香り、キラキラとちょっと似ているの。めいわくよ。『美波ちゃんもキラキラ使っているんだね!』なんて言われちゃって。ちがうっつうの!」

 桐野さんが、鼻息をあらくする。

「だからキラキラをイメージダウンさせたかったわけね」

「そ、適当なときに、ケガをしたふりしてね、『キラキラの香りのラブレターをもらうと不幸がおこるらしい』って騒いで、うわさにしたかったの。そして、みんながキラキラ使わなくなって、香りを忘れたころ、私はPRDを使えばいいでしょ。でもねー、私がもらうラブレターなら、内容は、あの3人がもらったのみたいな、そっけないのはいやだわ。だから熱烈なのを書いたの。でも、そしたら、もっとみんなにこの事件のことを知ってもらいたくなって……。それでオヅくんにたのんでみたわけ。あなたたちが動くと目立って、うわさになりそうでしょ」

 熱烈……だったかな? あの手紙。

「みごと、正解よ、探偵さん! お礼はどうしたらいいの?」

 

「それはええから」

 ぼくより先に、オヅが桐野さんに答えた。

「そのかわり、事件が全部解決したらこれ、新聞に書いてええ?」

「え―――っ。どうしようかな? 私が悪者にならないように、上手に書いてくれる?」

 図々しいことを言うなあ。

 オヅが、「ええっと……」と、あいまいな返事をして鼻をかいた。

 帰りかけた桐野さんが数歩歩いてから振りかえり、頬に片手をあてて、かわいらしく言った。

「ところで、探偵さんたち。あとの3人にラブレターだした相手のほうは、わかったの? あれは、私じゃないわよ」

 そうだ。

 男子3人がもらったラブレターは、桐野さんが書いたものじゃない。

 ラブレターは、塾でかばんに入れられた。

 桐野は塾には行ってない。

 わかってる……けど、犯人はまだ不明だ。

 答えられないぼくらに、桐野さんがクスっと笑った。

 

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