ラブレターをもらった4人には共通点が。理人が気づいた、桐野さん宛ラブレターの差出人は…/歩く。凸凹探偵チーム④

マンガ

公開日:2024/3/4

「あのラブレターを書いたのは、男子だと思うわよ」

 得意そうにくちびるのはしを上げた桐野さんに、ぼくらは目を丸くする。

「な、なんでわかるんじゃ?」

「そんなの、ちょっと推理すればわかるわよ。――女子が、あの3人にいたずらでラブレターを書くなら、きっと手書きにするわよ。わざとかわいい文字でね、♡とかも入れちゃって。いろんなカラーペンも使って。でも、あれはパソコンで打った文字だったでしょ。女子からだって思わせるために、わざと香りをつけたんだと思うの。犯人は、あの3人が女子からラブレターをもらったってうかれるところを、かげから見て楽しもうとしたんじゃない?」

 桐野さんがサラサラと推理を披露する。

歩く。凸凹探偵チーム

 

「でも、手に入りにくい『キラキラ』のパフュームを、男子が持ってるとは思えないでしょ。お姉さんか妹がいて、キラキラを持っているか……でなかったら、立石化粧品店でキラキラを使わせてもらったんじゃないかと思うのよ。だから一応、立石で、『最近、手紙にパフューム使った男子がいなかったか?』って、きいたらどうかしら」

「桐野―――おまえって、おしゃれしか興味ないアホだと思ったら、じつはかしこかったんじゃな!」

 ……オヅ、それはぼくも一瞬思った。

 だけど、口に出すのはやめておいたほうがいいと思うのだが……。

「まあね」

 桐野さんは、ふふんと鼻で笑って、帰っていった。

 ええっ。怒らないのか。

 もしかして、ほめられてると思ったのか?

 桐野さんって……利口かアホかわからん。

 

 立石化粧品店のおばたんは気のいいひとで、化粧品店なのに店先でなぜか売っているアイスを、たまに買うだけのぼくらのことも、ちゃんと覚えていた。

 そして「いつか恋人ができたらプレゼントはここで買うこと」を条件に情報提供してくれた。

「キラキラを使った男子、ねえ……。いたわね」

「「えっ!!!」」

 ぼくとオヅは、思わず身を乗りだした。

「虹丘小の子ではなかったわ。これまで顔を見たことないもの。こんなに学校に近いし、1学年2クラスの小さな学校だもの。たいていの子の顔は覚えているんだけど。特徴って言われても……目が2つに、鼻が1つ、そうね口も1つだったわ」

「「……………」」

「あ、そうそう。これから塾だったのかな。青葉塾のテキストがはみだしたバッグを持っていたわ。あそこのテキストって表紙が真っ青でしょ」

「写真を見たら、その子かどうかわかりますか」

「ん-。多分ね」

 

 公園にもどって、オヅはリュックからデジタルカメラと使い捨てカメラを取りだした。

 

「青葉塾の入り口は、3ヵ所あるんじゃ。正面、裏口、それから横に坂道があるじゃろ。直接2階に入る入口もあるんじゃ。その3ヶ所に分かれて、入っていく虹丘小以外の学校の男子全員の写真を撮ろうぜ。それをお立石のおばちゃんに見てもらおうや」

「それはいいんだけどなオヅ、おまえ大丈夫なのか?」

 オヅの家は遠い。

 今日は放課後いきなりぼくんちに来て、うちで預かっている、自転車で行動している。

 帰りはかなり遅くなるんじゃないか?

「ああ、心配いらんけ。『今日は理人が1人で留守番することになって不安がっとるから、つきあってやるんだ』って言っておいたけ。帰るときは電話したら、母ちゃんが迎えにきてくれるけ」

 おい。つくなら、もっとマシなうそにしろよ。

 オヅはスマホのカメラで、ぼくはデジカメ、アルクは使い捨てカメラを持って、3ヶ所に分かれた。

 オヅは自分の持ち物に油性ペンでサインとにがお絵を描く。カメラに描かれたオヅの顔も緊張して見える。

 

本作品をAmazon(電子)で読む >

本作品をebookjapanで読む >