ラブレターをもらった4人には共通点が。理人が気づいた、桐野さん宛ラブレターの差出人は…/歩く。凸凹探偵チーム④
公開日:2024/3/4
隠し撮りなんて、してもいいのか?
心臓がバクバク言っている。
撮影をはじめて、まだ10分しかたってないのに、オヅが、ぼくの持ち場へやってきた。
「おい、オヅ……」
「のぉ、理人。これ、見てみいや」
オヅのスマホ画面に映っているのは、うちの学校じゃないヤツだ。あ……!
「な?」
こいつの乗っている自転車が、喜多川くんと丸谷のと同じだ。
けっこう高い自転車で、あまり見かけない。
そして、履いている靴は、ミタと同じやつだ。
「――オレ、今から子の写真を見てもらいに、おばちゃんとこ行ってくる」
「ぼくらも行くよ」
と言うと、オヅは首をふって言った。
「それより理人、折れ、ちょっと気になったんじゃけど。喜多川、丸谷、ミタって順番に事件があったじゃろ。一二三の順番だったじゃろ。次に四がつく名前のやつがねらわれるってことはないんじゃろうか?」
オヅの質問に、ぼくらは首をひねる。
「ぼくらの学校の児童だけねらわれているだろ。ぼくらの学校の6年に四がつく名前の子はいないだろ? 五は2人いるんだけどね、青葉塾には行ってないし」
すると、オヅが言った。
「いや。四がつく名前のやつ、おるんよ。2組の貫井、母さんが再婚して最近『四谷』って苗字になっとるんじゃ。理人、知らんかったか? しかも最近、この塾に通いはじめたんじゃ」
「!」
貫井の家は坂の上で、2階玄関から入る可能性が高い。
2階玄関には――アルクがいる!
「貫井がもう来たか、アルクにきいてみよう。貫井をつかまえられたら、ラブレターをもらってないかって、きいてみる!」
「じゃ、オレは立石のおばちゃんに写真を見てもろうてから、もどってくる!」
ぼくとオヅは、うなずきあって二手に分かれた。
塾の建物は、変わった形で、2かい玄関は1階の玄関とはまるで方向がちがう。
横は車が1第通るのがやっとのほそい坂道で、アルクはその道から撮影しているはずだ。
いるはずの場所に――アルクはいなかった。
えっ、どこだ?
ぼくはあたりを見まわした。
アルクはトイレが近いほうだ。緊張すると、特に近くなる。
公園のトイレにでも行ったんだろうか。
塾の授業がはじまる時間がすぎて、もう、入ってくる子はほとんどいないから、ぼくと入れちがいに正面へむかったんだろうか。
貫井も、もう中にいるんだろうな……。
貫井をよびだしてまで、たずねることでもない。
そのとき、男子が1人、目立たないように塾の建物から出てきた。
靴が、ミタと同じ靴。あの、写真のやつだ。
とっさに隠れたぼくには気づかず、まわりに、だれもいないことを確認すると、そいつは自転車おき場へとむかった。
帰りは親に車で送迎してもらう子も多いけど、家が近い男子は自転車を使うやつもいるらしい。
そいつが近づいた自転車に、見覚えがあった。
電動式のママチャリで、貫井が、
「かっこよくないけど、これすげー楽なんだぜ。オレんち、坂の上だけどこれならスイスイさ」
と自慢していたからだ。
そのタイヤに、そいつがなにかしようとしている。
ぼくは、デジカメを取りだした。
気づかれないように撮影する……つもりが、あたりの薄暗さが増していて、自動でフラッシュが光った。
「「!?」」
今まで光らなかったから、フラッシュの設定を解除してないことに気づいてなかった。
そいつが振りむいた。
全速力で走れば、逃げられるだろう。
この写真を先生にわたして、注意してもらえばいい。
それで事件は解決。
新聞にのせるときは、一応個人が特定できない写真にしないといけないだろうけど、特ダネであることにはちがいない。
オヅも満足するだろう。だけど……。
ぼくはそのまま、そいつを見つめた。
足がすくんだんじゃない。
こいつと話してみたくなったんだ。
なぜこんなことをしているのか、を。
「それ、貫井の自転車だろ。おまえの4番目の被害者か」