最恐マフィアのボスと両親に売られた少女…。重い設定なのに、ツンデレと健気さがてんこ盛りのキュンキュンラブコメ!
公開日:2024/2/16
クールなキャラクターや冷酷なキャラクターが、特定の人物にのみ惚れ、心を揺らされ、甘い顔を見せずにいられなくなっていく。こうしたいわゆる「ツン」の強いキャラクターが「デレ」を開花させていく様は、ラブコメや恋愛ものの定番だ。このツンとデレの高低差が激しいほどキュンとしてしまう、という人も多いはず。
『世話焼きマフィアと薄幸少女』(久遠アユム/フレックスコミックス)は、そんなツンデレの究極と言っても過言ではない、マフィアのボスと薄幸少女のラブコメディ。2024年1月に単行本1巻が発売された本作は、WEBコミック配信サイト「COMICポラリス」で連載中だ。
主人公は、ツンが激しい最恐マフィアのボス・楊昇龍(ヤンシンロン)と、親に売られて彼に引き取られた15歳の薄幸少女。楊によって桜都(おと)と名付けられた彼女は、母親が彼氏に猫をプレゼントするためヤクザに売られたという。それを聞いて放っておけなくなった楊は、18歳になったら高級娼婦として売るという名目で彼女を引き取り育てることにする。
桜都は、自分が商品として扱われていると自認しながら、それでも売られた自分に住む家や食べるもの、着る服を与えて何不自由ない生活をさせてくれる楊に感謝し、慕い、少しでも恩を返そうと思考を巡らせる。一方、楊は桜都が見せるその健気さに心を打ち抜かれ、コロコロ変わる表情や儚い笑顔に魅せられ、日を追うごとに彼女の虜になっていく――。
最恐マフィアのボスとして生きてきた楊は、これまで誰かを愛したことなど一度もなかった。婚約者はいるが、それは政略結婚の類で、そこに愛情は介在しない。そのため自身の感情に困惑し、桜都に対してちぐはぐな態度を取ってしまう。例えば桜都が「普通の家族ってこんな感じ――なんですかね…?」と聞けば、「身の程知らずが」「おまえはただの商品だ」と凄み、圧をかけてしまう。そしてあとから後悔したり、「何てこと言い出すんだコイツ…!!!!」と悶絶したり……。
自分がこんな小娘に惚れるわけがないという理性と、それでも放っておけず気になってしまう止められない感情。本当は大事でたまらないのに、だからこそ冷たくあたってしまう楊の不器用さに、見ているこちらが悶えてしまう。楊、可愛すぎでは……!? また、儚さと豊かな感情を併せ持つ桜都の危うさ、繊細な愛らしさにもキュンとしてしまう。設定は全然可愛くないのに、可愛いと可愛いがぶつかり合っている。尊い!
だが楊はマフィアのボスで、前述の通り婚約者がいる。桜都との間に障害が発生しないわけがない。黒社会(=中国語圏の裏社会)の女帝を狙う婚約者に狙われ殺されかけたり、金髪イケメンに身の上を心配され、「俺が桜都ちゃんを引き取って育てる」と保護されたり……。
しかし何があっても、楊の桜都へ対する気持ちが消えることはなく、むしろどんどん募っていくばかり。そして第1巻のラストでは、更なる危険が迫る様子も描かれ――。
ふたりの生活は、まだ始まったばかり。これからどんな事件が起こっていき、関係はどうなっていくのか。見守っていきたい。
文=月乃雫