人気のシリーズ絵本(2024年2月 新刊&おすすめ絵本)
更新日:2024/2/15
面白い! と思った絵本のカバーに、シリーズ巻が紹介されていると嬉しくなりませんか? おはなしの世界観を深めてくれて、より印象に残るのがシリーズ絵本の魅力。途中から読んでも、最初から揃えても楽しめる、おすすめの絵本をご紹介します。
三浦太郎さんによる『おうさまのこどもたち』は、小さな王さま、大きなお姫さまに続いて10人の子どもたちが主役の完結作。角野栄子さんの描く「みつごちゃん」シリーズからは、『びっくりさんちのみつごちゃん』を。持ち運びできるサイズが嬉しい「だるまさん」シリーズや、宮沢賢治の文章と現代の画家との珠玉のコラボレーション「宮沢賢治の絵本シリーズ」など、本棚に揃えたくなる個性豊かな絵本ばかりです。
お子さまと一緒に少しずつ集めていくのも楽しいはず。読みたい! と思えた本から、ぜひチェックしてみてくださいね。
赤ちゃん絵本の人気作が、持ち歩ける手のひらサイズに。電車や公園などお出かけに連れて行って。『だるまさんが ボードブック』
だるまさんが ボードブック
作:かがくい ひろし
出版社からの内容紹介
みなさまの声にお応えして、だるまさんシリーズにコンパクトでじょうぶな、ボードブックが新登場!内容そのまま、小さくかわいい手のひらサイズ。読み聞かせに大人気の、泣く子も笑う絵本!
『ちいさなおうさま』完結作。個性豊かな10人の子どもたちの中から王を継ぐのは……? デビュー20周年の三浦太郎さん作『おうさまのこどもたち』
おうさまのこどもたち
作:三浦 太郎
みどころ
ある国の王さまとお妃さまに、10人の子どもがいました。
つぎの王さまを決めるため、どのように国を治めたいか考えるようにといいつけられた子どもたち。
人々の暮らしを見るために、さっそく街へ出ます。
はじめて見る街のようすに、王子さまもお姫さまもおおはしゃぎ!
王さまは、帰ってきた子どもたちに、どんな王や女王になりたいかたずねるのですが――
あれ!? 王さまになりたい子が、ひとりもいない!?
花屋やサッカー選手、アーティストにメカニック!
ひとびとの暮らしを見たことで、自分がどうやって人の役に立ちたいかを知った子どもたちは、それぞれがあたらしい夢をいだいて、お城に帰ってきたのです。
でも、それじゃあつぎの王さまはだれが――?
著者は、『くっついた』(こぐま社)や『あ・あ』(童心社)などで知られる三浦太郎さん。
切り絵のようなシルエットに、コントラストも鮮明な独特のグラフィックで、それぞれのページが一枚のポスターのように、いつまでもながめていたくなる魅力があります。
にぎやかなお寿司屋さんのカウンター。
敵味方入り乱れるサッカーグラウンド。
歌って踊る、きらびやかなアイドルのステージなどなど。
子どもたちが、それぞれに自分の夢をかなえて働いている姿を思い描くページは、どれもにぎやかでカラフル!
一見してシンプルなキャラクターながら、彼らの働く風景は、ちいさなアイテムのひとつひとつにいたるまで描きこまれていて、つくりの細かいオモチャの街をながめているようなたのしさがあります。
三浦太郎さんのほかの絵本が本棚にあったり、別のページの風景がテレビ画面に映っていたり、小ネタもあちこちに――
『ちいさなおうさま』『おおきなおひめさま』(偕成社)の続編にして、完結編の本作。
読んだ後に『ちいさなおうさま』『おおきなおひめさま』を読み返してみるのもオススメです。
シリーズ作品
ちいさなおうさま
作・絵:三浦 太郎
おおきなおひめさま
作:三浦 太郎
3歳の三つ子の姉妹がお留守番。そこに、いろんな三つ子のお客さんがやってきます。角野栄子さん絵本の新版『びっくりさんちのみつごちゃん』
びっくりさんちのみつごちゃん
作:角野 栄子絵:西巻 かな
出版社からの内容紹介
びっくりさんちのみつごちゃん、
アーちゃん、レーちゃん、マーちゃん。
みんなさんさいの、みつごちゃんです。
とん とん とん
いろんなみつごのおきゃくさんが、おうちにやってきます。
「あー」「れー」「まー」
おともだちいっぱい、びっくりびっくり!
2003年初版『びっくりさんちのみつごちゃん』が装いも新たに、改訂新版として登場。
改訂新版よりあとがきが追加されています。
『みつごちゃんとびっくりセーター』もあわせてどうぞ!
シリーズ作品
みつごちゃんとびっくりセーター
作:角野 栄子絵:西巻 かな
ラップ風絵本待望の続編『DJ YOYO アゲイン』。「YO YO あそぼうYO」「しゅくだいやってるからだめだよー」ノリノリで気分爽快!
DJ YOYO アゲイン
作:おおなり 修司絵:飯野 和好
出版社からの内容紹介
ラップ風絵本『DJ YOYO』が再び登場だYO!!
勉強している時、ぼくの部屋には時々、DJ YOYOが現れる
YOYO あそぼうYO
いま しゅくだいやってるからだめだよー
すこしくらい、だいじょうぶだYO
遊びたい気持ちをぐっと我慢して勉強している時
君の部屋にもDJ YOYO(ディージェイヨーヨー)が現れるかもYO!!
シリーズ作品
DJ YOYO
文:おおなり 修司絵:飯野 和好
ラルフがねこのコンテストでライバルと対決! とびきり大きなトロフィーを手にしたのは?『あくたれラルフ コンテストにでる』
あくたれラルフ コンテストにでる
文:ジャック・ガントス絵:ニコール・ルーベル訳:小宮 由
みどころ
自由気ままに、好きほうだい! とんでもなく「あくたれ」な飼い猫、ラルフが巻き起こす騒動を描いた「あくたれラルフ」シリーズが小学生向けの読み物になりました。
ニタニタ笑顔、まっ赤な毛並み、おおきな鼻の猫「ラルフ」は、いたずら、いじわる、悪だくみ、なんでもござれの、キング・オブ・「あくたれ」ですが……今度のラルフは、お利口さん!?
猫のいちばんを決める「ねこコンテスト」で優勝するために、ラルフは生まれ変わるのです。
コンテストのルールは「ねこであること」「とくぎがあること」「おぎょうぎがよいこと」!
ラルフには、ちょっとむずかしそう……
ラルフはいつもはぐーたらで、手のつけられないほどのいたずらものですが、こんどばかりはちがいます。鏡の前では笑顔の練習。ぼってりお腹をへこます運動。しゃんとした姿勢の訓練。清潔な身だしなみだってバッチリ! すべては、いけすかないライバルのパーシーを負かし、ステキな猫の一等賞にかがやくため! ところが、パーシーはやっぱり、何もかもカンペキにステキな猫で──
いつもは手のつけようもないくらいわがままで、いたずら大好きなラルフですが、本作ではそんな「あくたれ」をガマンして、ステキな猫に変身しようと奮闘します。
ふだんなら、もしラルフが自分の飼い猫だったらと想像すると気がめいってしまうほどの、あくたれぶりなわけです。それなのにいざ、いつもの自分らしさにフタをして不器用にいい猫を演じるラルフを見ると、「あんまり無理しないで!」となぐさめたくなってしまう不思議……。
コンテスト当日、いくらがんばってもパーシーにはかなわないとしょぼくれるラルフを見て、飼い主のセイラも同じ気持ちになったみたいです。
「ラルフ、くよくよしないで。あなたは、あなたらしくやればいいのよ。」
ところがラルフ、変にその言葉を真に受けてしまって?
「ぼくのとくぎは、なんてったって、あくたれることだもんね。やってやるぞ!」
さあ、ラルフが自分らしさを大解放! あくたれ120パーセントであばれまわる!
ああ、やっぱりもう少しいい子でいて……。
あくたれほうだい、いたずらざんまい! 叱られたって、なんのその! 「良い子に見られよう」だなんて考えのまったくないラルフの悪さの数々が、なんだかスカッと気持ちいい! 元気いっぱいの小学生におすすめの一冊です。
月夜の林に集う、木と人間とふくろうたち。不思議な調子の歌や言葉と、奥行きのある絵の世界に引き込まれる『かしわばやしの夜』
かしわばやしの夜
作:宮沢 賢治絵:中野 真典
みどころ
おひさまが山裾に落ち、野原もさびしくなった頃、だれかが調子はずれの声で「鬱金しゃっぽのカンカラカンのカアン。」とどなるのが聞こえて、畑仕事をしていた清作はびっくりして声のする方に走っていきます。
すると声の主は、赤い帽子をかぶった変な男。どうやら画かきらしく、清作のえり首を捕まえ、怒ったかと思えば笑い出し、柏の木大王に招待されたから一緒に行こうと、清作を林へ誘うのでした。
変な画かきの男について柏の林の中に入っていく清作。ところが、木こりの清作を木たちは嫌って、つまずかせようとしたり「せらせらせら清作、せらせらせらばあ。」と気味の悪い声でおどそうとします。清作も負けずにやりかえしながら、画かきと一緒に、柏の木大王の前へ。
待ち構えていた大王と若い木々は、月がのぼると同時に自作の歌を次々歌い出すのです。画かきは一等賞から九等賞までメタルをやるといって歌合戦を盛り立て……ついにはフクロウまでもが参戦、月夜の歌合戦と大乱舞会が繰り広げられるのでした。
見どころは、それぞれいわくありげで変てこな木たちの歌。清作が木たちにひやかされて怒ったり、柏の木大王との口げんかをする様子……「おれにはなぜ酒を買わんか。」「買ういわれがない。」と繰り返し言い合う場面にも笑ってしまいます。
宮沢賢治の物語世界を、個性豊かな現代の画家たちが絵本にしていく「宮沢賢治の絵本シリーズ」第39弾。今作では中野真典さんが立体物を制作。それらを撮影したものが絵本になっています。場面によって、木々や画かきの服、メタルは月の銀の光を跳ね返すよう。またあるシーンでは木々は黒い影絵のよう。読者がどこまでも林の中に分け入っていかされ、まるで舞台の前に立って見ているかのような立体感です。
……不意に月が霧に隠されると、舞台は消え去り「赤いしゃっぽのカンカラカンのカアン。」と響き渡るかすかな声で、おはなしの幕がおります。画家・絵本作家が持つ力を再認識させられるこのシリーズ。今作も期待を裏切りません。ただ子どもたちには、この不思議でおかしな世界とその余韻をそのまま味わってほしいのです。
宮沢賢治童話初期の傑作。心が洗われるような美しい文章と絵が、天空と海底を駆け抜ける。双子座宮の童子たちの物語『双子の星』
双子の星
作:宮沢 賢治絵:平澤 朋子
みどころ
夜空に輝く2つのお宮で、向かい合わせで銀笛を吹いている、チュンセ童子とポウセ童子という2つの星のおはなしを描いた絵本です。
1つ目は、空の泉で大がらすの星と大サソリの星が、ケンカで互いに大ケガを負わせ、チュンセ童子とポウセ童子が助けようとするおはなし。カラスのくちばしはサソリの頭をひどく傷つけ、サソリの毒はカラスを瀕死にして、童子は自らの口で毒を吸ったり、身を挺してサソリを抱えていこうとします。それを空の王様は見ていて、ふたりの童子に手を差し伸べてくださる……というおはなしです。
2つ目は、嫌われ者・暴れ者のほうき星が、チュンセ童子とポウセ童子をだまして、お宮から旅に連れ出し、わざと海に振り落としてしまうおはなし。海の底で、「罪を犯して落ちてきたのだろう」とヒトデたちに責められますが、2人の童子はつつましく、海に落ちた運命を受け入れようとします。でもやはり海蛇や海の王様のはからいで、無事に空のお宮に戻ることができるのです。
宮沢賢治の物語世界を、個性豊かな現代の画家たちが絵本にしていく「宮沢賢治の絵本シリーズ」第40弾。今作で平澤朋子さんは、童子たちの無垢な銀色のきらめきと、プライドの高い大カラスと大サソリや、ほうき星の素朴な悪意のこわさの対比を、思い切って描き出しています。
読み聞かせの絵本としてはそれなりの長さですが、わが家の7歳の息子に読んで聞かせると、驚くほど集中して最後まで聞いていました。聖なるものと、不条理でまがまがしいもの、その両方の存在を、幼い子でも薄々感じるのかもしれません。チュンセ童子とポウセ童子の愛らしさか、子どもを引きつける不思議な魅力がある『双子の星』。賢治童話初期の傑作のひとつを、ぜひ一度手にとってみてください。