大人気ファンタジー小説「八咫烏」シリーズの第2作が2024年4月にアニメ化! これから「八咫烏」に触れる初心者に向け、シリーズの魅力を解説
PR 公開日:2024/3/2
シリーズ第1作の『烏に単は似合わない』(文藝春秋)刊行から12年、累計発行部数200万部を突破した阿部智里氏のファンタジー小説「八咫烏(やたがらす)」シリーズが、この4月にNHKでついにアニメ化される。アニメになるのは第2作の『烏は主を選ばない』。なぜ第1作の『烏に単は似合わない』ではなく第2作なのか、と本シリーズを読んだことのない人は首をひねるかもしれない。だが、その理由にこそ多くの読者が魅了され続けている。ここでは、アニメで初めて本シリーズを知る人に向けて、ネタバレにならない程度に説明したい。
八咫烏シリーズとは、山内(やまうち)と呼ばれる異界を舞台に、人間の姿に変化する八咫烏の一族を描き出すファンタジーシリーズ。松本清張賞を20歳という最年少で受賞した第1作の『烏に単は似合わない』で描かれるのは、いずれ一族の統治者となる若宮の后選び。病を患った姉のかわりに候補として後宮に登殿することとなった、「あせび」という名の姫君の視点で物語は始まる。あせびというのは後宮をとりしきる御前につけられた新しい名なのだが、そこに含まれた揶揄にまるで気づかないほど、あせびは世間知らずでおっとりしている。南北東西の大貴族の家から選ばれた4人の姫君だけでなく、彼女たちを支持する家や女房の深謀遠慮が渦巻く後宮を生き抜けるのか、心配になるほどである。
実際、ある失踪事件をきっかけに、物語は不穏な展開を見せ始める。〈登場人物全員に対する印象が、最初と読み終わったときとで、がらっと変わる物語を書きたかった〉と阿部氏は過去のインタビューで答えているが、印象が変わるのは登場人物だけではない。私たちが日ごろ、いかに与えられた情報をうのみにし、頭でつくりあげたイメージで物事を判断しているか、それがいかに危ういことなのかを、さまざまな角度から突き付けてくるのである。
さらに著者は第2作『烏は主を選ばない』において、第1作の印象を再びひっくりかえしてみせた。第1作にはほとんど登場しなかった若宮の従者・雪哉の視点を通じて、第1作の裏側で何が起きていたのかを描き直したのである。しかもただ同じエピソードをなぞっているわけではない。若宮は若宮で、命を狙われるほどの権力闘争に巻き込まれており、単体の作品としても読み応え十分。つまり、どちらを先に読んでもまるで問題がないのである。
そして第2作がアニメ化タイトルとなったもうひとつの理由として、第2作の主人公である雪哉こそが、このシリーズにおいては誰より重要な役割を担う人物なのである。しぶしぶ若宮に仕え、「いつかぶっとばしてやる」と思っている小生意気な少年。だけど家族思いで芯に熱いものを持った彼と若宮の主従関係は、第3作以降も物語の展開に大きく関わっていく。詳細は、まあ読んで、としか言いようがないが、巻ごとに「そういうことだったのか!」という驚きと、私たちの思い込みを覆す予想のつかない物語を味わえることだけは保証する。
原作小説はすでに第二部まで進んでおり、2024年2月22日刊行の最新作・第二部第4巻『望月の烏』は、ある意味で原点回帰。新たに一族の長「金烏」となった人物の后を選ぶため、4人の姫君たちが宮中にあがる。だが『烏に単は似合わない』の時とは、山内そのものの状況が違う。金烏に課せられる責任の重さも。同じ舞台で果たしてどのような新しい物語が紡がれるのか――。
また、コミック版『烏は主を選ばない』(原作、監修:阿部智里、松崎夏未:漫画/講談社)の最新5巻も2月22日に発売されているので、4月のアニメとあわせて、ぜひ原作小説とコミックにも触れ、その壮大な世界観に浸っていただきたい。
文=立花もも
『烏は主を選ばない』アニメ公式サイトはこちら
https://www.nhk-character.com/karasu/