チョロすぎ天使とポンコツ悪魔が“惚れさせ”バトル! アニメ絶賛放送中のハラグロラブコメコミック『愚かな天使は悪魔と踊る』
公開日:2024/3/1
「彼女は、悪魔のような天使だった」
天使と悪魔が仁義なき戦いを繰り広げるハラグロラブコメが『愚かな天使は悪魔と踊る』(アズマサワヨシ/KADOKAWA)である。
悪魔の阿久津雅虎(あくつまさとら)は、ある目的のために人間界にやってきた。そこで出会ったのが美少女・天音リリー(あまねりりー)。ふたりは権謀をめぐらし、文字通り戦う。その目的は、相手の心を“オトす”ことであった……。
2016年から連載している作品で、現在TVアニメも絶賛放送中である。アニメにハマって原作を読もうか迷っている人、SNSで話題になっている作品で気になっていた人は、ぜひ本稿を読んでいただきたい。
悪魔の少年を下僕にした美少女の正体とは?
阿久津雅虎はある高校に転入する。彼は故郷で敵と戦い劣勢になっている同胞たちのやる気を出させるため、悪魔のアイドルになりうるカリスマ性のある人間を探しにやってきた。クラスの隣の席になったのが天音リリー。“人とは思えない”超絶美少女で、彼は一目で心を奪われるのだった。
そんな彼女に自分の正体を知られた阿久津は、思い切って悪魔のアイドルに勧誘してみた。次の瞬間、阿久津は鎖形の結界で縛りあげられてしまう。それはリリーの能力だった。実は彼女は悪魔の“天敵”「天使」だったのだ。
「我を誘惑するとは阿呆な悪魔もおったものよ」と言うリリーは、しおらしく儚げだった学校での様子とは別人であった。彼女は阿久津に、自分へ協力し悪魔探しを手伝うように命令する。特殊な首輪をつけられて下僕になった彼は、逆らえば意思に反して酷い目に遭い“いろいろな意味で”死んでしまうという。
かくして阿久津はやむをえずリリーに従うことに。ただ彼は密かに決意する。
なんとしてもアイツを堕天(おと)してやる
体は支配されていても、心をかどわかして彼女を悪魔に従わせようというのだ。しかし阿久津は、リリーがこれまで敵視していた天使とは違っていたことに気づく。
彼女は理由があるにせよ、阿久津を生かし、見つけた悪魔も倒さずにわざわざ封印していた。「わしは~」「なのじゃ」などと口にする彼女の気が強い本性に引いていた阿久津だが、ふとみせる優しさと残酷な天使とのギャップにぐっときてしまい……。
支配された下僕の少年(悪魔)のリベンジラブコメ、というのが本作の一面だ。ただ、物語はもう少し複雑な様相を呈していく。
悪魔のようなハラグロ天使は予想外にチョロかった?
ヒロイン・天音リリーはルックスもしぐさも外面(そとづら)もいい。さらに前述の通り敵である阿久津や悪魔たちにもなんだかんだと優しい。まさにパーフェクトヒロイン。天使というのは伊達じゃない。そんな彼女は、阿久津に対してこう決意していた。
奴を必ず、更生(おと)してやる
リリーは“ある目的”のため、悪魔である阿久津を自由に使役できるようにしたかった。そのために彼を「清く正しく健やかに更生させる、そのために自分に惚れさせよう」と画策する。こうして阿久津と同じ目的で心理戦をしかけるリリーは、あざとさ満点のフワフワ系美少女に磨きをかけて、彼を誘惑する。
阿久津はそんな彼女にドキドキしながらも、どこかで見た知識を生かして、清潔感をアップさせ、髪のセットを整えてキラキラ感を演出。そしてシャツの襟を開けてネクタイを緩め、腕の筋肉を見せつけてきた。
いわゆる女性が男性にキュンキュンしてしまうやつをくらったリリーは……動揺する。それからも、一緒にいるなかで言葉を交わして相手を知り、直接触れ合い(言い方はあれだが文字通り)、優しい言葉をかけられ、リリーは阿久津を強く意識するようになる。腹黒い天使は思ったよりもチョロかった……。
ふたりは自分の感情は棚に上げて、相手を好きにさせるための絶対に負けられない戦いに挑む。もはや言うまでもないが、これは読者がやきもきするタイプの王道ラブコメ展開だ。
ただ、本作はここからさらに展開する。
悪魔と天使という物語の根幹になる設定、そして彼らの立場や感情にスポットが当たり、阿久津とリリーの秘密と、ふたりの戦いが描かれていく。ゆめゆめ油断なさらず読んでいってほしい。とにかく飽きさせないことを保証する。
読者の多くは阿久津とリリーの関係がどうなるかが気になってしまうだろう。原作未読勢のその気持ちは、羨ましいとさえ思える。長期連載であり2024年2月時点で18巻とそれなりに長い物語を、これからたっぷりと楽しめるからだ。ぜひ、悪魔と天使のハラグロラブコメ+バトルを堪能していただきたい。
文=古林恭