頑張りすぎてしまっている時、自分を見失った時に…“忘れちゃいけない”大切なものを思い出させてくれる『ふたごパンダのおくりもの』
PR 公開日:2024/3/8
カバーに描かれたのは、愛くるしい双子のパンダがプレゼントのようにくるまれた優しいイラスト。最初のページをめくると、「あいを あげる よろこび あいを もらう しあわせ」と心温まるメッセージが…。『ふたごパンダのおくりもの』(西島三重子:文、はせがわゆうじ:絵/中央公論新社)は、パンダの可愛いイラストと心に沁みるメッセージがギュッと凝縮された絵本です。
ゆらん ゆらん
いったり きたり
ないたり わらったり
おもいでは ゆりかご
たのしかったことを
おもいだすと
こころが
あたたかくなる
双子パンダがゆりかごのような三日月の上で「ゆらん ゆらん」と揺れているイラスト。この後には、楽しい時に喜び、悲しい時に泣くパンダの姿も描かれています。私たちも彼らと同じように、毎日の中で「泣いたり笑ったり」を繰り返し、心はいつも揺れ動いています。まさに「思い出はゆりかご」。それは誰にでもあることであり、自分の気持ちに素直でいることは大切なのだ、ということを絵本が教えてくれるようです。今ちょうど悲しい気持ちになっている人は、優しいパンダのイラストが泣きたい気持ちを温かく包み込んでくれるかもしれません。
うみの ふかさや
そらの たかさで
ゆめの おおきさは
はかれない
「わすれられないものがある
わすれたくないものがある
わすれちゃいけないものがある」
「海の深さや空の高さで夢の大きさは計れない」——。自分だけが抱く夢や目標は、この世でただひとつのものであるはずなのに、周りのことばかりを気にして、夢や目標がしぼんでしまってはいないだろうか…。そんなふうに、目指すべき場所を見失っている自分の心の状態にハッと気づかせてくれるメッセージです。イラストには、雲によじのぼり、雲の上に腰を据えるパンダの姿が描かれています。「他人軸ではなく自分軸で考えよう」と言われる現代、手を離さないようにしっかりとしがみついていたいのは、周りの人の気持ちではなく、「自分がどうしたいのか」という気持ちなのかもしれません。
「忘れられないものがある。忘れたくないものがある。忘れちゃいけないものがある」。このメッセージには、双子パンダが、食事を作るお母さんパンダをのぞき込むようなイラストが添えられていました。大切な人の思い出や、大切な人からもらった褒め言葉、叱咤の言葉は、いつまでも忘れられないもの。同時に、自分のためを思って送られた言葉は、いつでも自分を支え、自分を奮い立たせてくれる「忘れちゃいけないもの」なのかもしれません。大切な人の存在を思い出し、支えてくれる人がいるから自分は今ここに立っているのだ、ということを思い出させてくれるメッセージです。
できないと
おもう きもちが
おくびょうにする
できると おもう きもちが
ゆうきを くれる
いまの きもちを
たいせつにしよう
こころが コロコロ
ころがらないように
ぎゅっと だきしめよう
臆病になって立ち止まってしまうのか、勇気を与えられて更なる一歩を踏み出すのかどうかは、自分の気持ち次第。自分を支える大切な人の存在を思い出し、お互いに助け合ってきたことを認め合い、そして自分が信じる道を再確認した双子パンダは、リュックをかついで素敵な場所へと出かけていきます。彼らがどんな場所に辿り着くのかは、本書を読んでからのお楽しみ。
本書の著者はシンガーソングライターの西島三重子さん。イラストは『もうじきたべられるぼく』の著者でもある、はせがわゆうじさん。どのページをめくっても美しい本書はプレゼントにもぴったり。パンダの可愛らしいイラストと心温まるメッセージが心に浸透し、眺めているだけでも心がほっこりとします。
「嫌い」という気持ちに支配されたり、周りと自分を比べてしまったりする時、本来いちばん大切であるはずの自分の気持ちや、周りへの思いやりを忘れてしまいがち。けれど、そういったネガティブな気持ちは誰もが持っているということ、「好き」な気持ちを取り戻し、愛情をもらった分だけ与えていけば、夢やしあわせは巡っていく…ということを本書が教えてくれます。子どもから大人まで、心を落ち着かせたい時や、自分の本心を見つめたい時、いつも頑張っている自分を励ましたい時などに、手に取ってほしい一冊です。
文=吉田あき