家の中を走り回る不気味な黒い影… 訳あり物件に住んだらどうなるか? 建築デザイナーが明かす、恐怖の実体験『その物件、告知事項アリ』
公開日:2024/3/21
いわゆる“事故物件”と呼ばれる物件に、あなたは住みたいと思うでしょうか? 相場よりも値段が下がることが多く、その点で魅力を感じる人、絶対に住みたくないと思う人……反応は様々だと思います。そんな事故物件、もしくは告知事項のある物件に実際に住んだらどうなるのか? 本稿で紹介する『その物件、告知事項アリ: 建築デザイナーが明かす怖い部屋』(宮本ぐみ:イラスト、宮本ぺるみ:著/竹書房)は建築デザイナーとして働く宮本ぺるみさんが実際に関わった不思議な出来事が起こる物件と、その周辺で起きた出来事を漫画化したものです。
知人の紹介で、とある古民家のフルリノベーションを請け負ったぺるみ。早速おうちを見に行くことになりますが、前の住人が使った家具もそのまま。畳がカビて腐っているなど予想していなかった状況に驚きます。さらに家の外には墓地があり、そこに白い人影が……。実は霊感があるぺるみ。家の中でも走り回る黒い人影を目撃してしまいますが住人に言うこともできず、そのままリノベーションを進め、完成にこぎつけます。
しかしほっとしたのもつかの間、家主から「あんたんとこの設計ミスのせいで変なことばかり起こる」という怒りの電話が。もちろん身に覚えがないため、顧問弁護士を連れて再び問題の家へ出向きますが、そこで思いもしなかったものを発見してしまうのです……。この物件は、とある告知義務を怠っていたのでした。
本書ではほかにも、孤独死のため事故物件として売られていた中古マンション、過去に自殺が起きた元葬儀場の物件にまつわる出来事も紹介されてます。そもそも告知事項とは、前に人が亡くなっているということだけでなく、周辺環境や物件そのもの、土地などに問題がある場合にも課せられるもので、その内容は多岐にわたります。人が亡くなっているといった情報は、気の持ちようとして片付けることもできますが、周辺環境などの場合は物理的に不都合が生じることも。本作で紹介されている物件も心霊現象だけでなく、泥棒に狙われやすい家だったことが判明する物件も出てきます。
今回のエピソードはどれも最終的に家主はその物件から離れる選択をしますが、家というのは、買う・借りるのを決めてからはなかなか変更しづらいもの。引っ越しするのも大変ですし、購入した場合はお金の面でも大きな損害になりかねません。本作にはぺるみさんの他作品にも登場している、ぺるみさんの会社の顧問弁護士・のっぽ先生によるコラムも掲載。告知事項に該当する出来事があっても、告知義務を負わない物件があるなど知っておくべき情報が掲載されています。
ホラーとしても、お仕事マンガとしても面白い本書。ぜひ一度手に取ってみてください。
文=原智香