人の顔色が気になる。自己嫌悪に陥りやすい… 生きづらさを個性に変えるためのヒントを教えてくれる『マンガでわかるパーソナリティ障害』
公開日:2024/5/10
「どうしていつもこうなんだ…」「なんでわかってくれないの?」日常的にそう感じていたら『マンガでわかるパーソナリティ障害』(岡田尊司:監修、松本耳子:漫画/光文社)を手に取ってみてほしい。精神科医である岡田尊司先生が可愛らしいキャラクターとなって、あなたの悩みにまつわるヒントをわかりやすく教えてくれる『マンガでわかる愛着障害』に続くシリーズ第2弾だ。どうせ変わらないし変われない…そんな心の鍵を外してくれるような一作だ。
誰でも多かれ少なかれ生きづらさをもっているだろう。そんな中、パーソナリティ(傾向)に著しい偏りがみられ、生活に支障をきたしている状態をパーソナリティ障害だと岡田先生は言う。それは本人はもちろん、まわりの人が困っている場合も同様なのだそう。
作中には、落ち込んでは自傷行為を繰り返す女子大生のエイミをはじめ、さまざまな生きづらさを抱えた人々が岡田先生のもとを訪れる。先生は彼らの気持ちを受け止めつつ、そのつらさを魅力的なパーソナリティ・スタイル(個性)に変えていけると伝える。本作では、そのための正しい知識と方法をマンガでやさしく、コラムでくわしく学ぶことができる。
パーソナリティ障害はおよそ10タイプに分けられるという。たとえば、自分は特別な存在だという意識が強かったり、人の顔色をうかがいすぎたり、異常に疑り深かったりといった特徴があるのだそう。なかでも代表的なのが、エイミのように態度に不安定さがあり、行動が極端になりがちな境界性パーソナリティ障害だ。どれもその背景は複雑で、生まれもった気質と養育環境との相性、社会状況などさまざま。原因を探り出すとついつい過去を呪いたくなったり、それに囚われて動けなくなったりすることがあるかもしれない。しかし、パーソナリティ障害は正しい方法であきらめずに取り組めば克服していけることがわかってきていると岡田先生は言う。
エイミのケースでは、岡田先生はまず、本人とその家族の話をよく聞き受け止めたあと、思いを汲み取り代弁する。寄り添いと信頼関係構築のお手本だ。そして、それぞれにアドバイスをする。エイミには、感情や行動を客観視するために日記をつけること。家族には、目まぐるしく態度が変わる本人に対してなるべく変わらない態度で接すること。これ以外にも、さまざまな事例に対する具体的なアドバイスが描かれており、自分と相手を知ることが未来を変える第一歩だと教えてくれる。心身が不安定だと、どうしても「どうせダメだ」と心を閉ざしてしまいがちになる。それでも、あなたが知ろう、変わろうとすれば、たとえ時間はかかったとしても、きっと自分に合った生きやすさを見つけていけるはずだ。そして、まわりの人は本人だけの問題だと決めつけないでほしい。障害とは、人と社会の間にあるバリアだ。まわりの人の理解とサポートが、そのバリアを取り除くのにとても重要になる。
作中には10タイプのパーソナリティそれぞれの特徴と対応方法が載っているので、ぜひ参考にしてみてほしい。苦しみを理解してくれる人の存在は大きいし、味方になってくれる人や言葉がお守りのように背中を支えてくれることがある。しかし、適切な医療機関や理解者に繋がるまでには時間がかかることもあるだろう。それまではこの作品が、きっとその代わりとなってくれるに違いない。