お仕事系小説の名手・山本幸久が贈る…“お花と幸せ”満載の物語『花屋さんが言うことには』が文庫本化
公開日:2024/3/12
2022年に「王様のブランチ」で取り上げられて話題を集めた小説『花屋さんが言うことには』の文庫版が、2024年3月5日(火)に発売された。花屋を舞台に繰り広げられる心温まる物語に、読者から多くの反響が集まっている。
著者の山本幸久といえば、2015年にドラマ化された『ある日、アヒルバス』や第11回エキナカ書店大賞に選ばれた『店長がいっぱい』などを執筆した“お仕事系小説”の名手。ほかにも『ミックス。』や『コンフィデンスマンJP』を始めとした人気作のノベライズ版を手掛けたことで知られている。
そんな山本が贈る『花屋さんが言うことには』は、題名の通り“花”がテーマとなった作品だ。主人公・君名紀久子はグラフィックデザイナーを目指して芸大を卒業したが、就職活動が上手くいかずに食品会社へ務めていた。その会社は絵に書いたようなブラック企業であり、嫌気が差した彼女は退職願を叩きつけて別の道へ進むことを決断する。
しかし、あるとき職場の上司から半ば強引にファミレスへ呼び出され、脅迫まがいな物言いで会社へ戻るよう要求されてしまう。そこへ外島李多と名乗る女性が割って入り、言葉巧みに上司を言いくるめて撃退。彼女は「川原崎花店」の店主で、紀久子は話の流れからアルバイトの面接を受けることに。そこで花や人々と触れ合い、やがて自分の心にもう一度向き合っていく――。
同作は花がテーマになっていることもあり、作中では花にまつわるエピソードが紹介されている。たとえば、第I章の副題にもなっている「泰山木(タイサンボク)」には「前途洋々」という花言葉があり、新たな門出を迎えた紀久子にピッタリな花だ。
また花言葉だけでなく、第II章の「向日葵(ひまわり)」では、戦後を代表する歌人・寺山修司の「列車にて遠く見ている向日葵は少年のふる帽子のごとし」という短歌が登場。少年はかつての自分であり、大人になりつつある今では遠い存在になってしまった……と解釈されている歌だが、同作では山本によるアレンジが施された上で物語に落とし込まれている印象だ。
さらに同作は“お仕事系小説”ということで、花屋の現実にもフォーカスが当てられている。世間一般的には華やかで憧れの職業というイメージが定着しているが、実際はいくつもの花桶を運んだり洗ったりと肉体労働が中心であり、紀久子も最初の一週間は筋肉痛に苦しめられていた。ちなみに「川原崎花店」で15年近く働いているパートタイマー・丸橋光代いわく、「花屋さんになりたいですぅ、勉強させてくださぁいとかいう子に限って、さっさとやめちゃうのよ」とのことだ。
そうした花屋の過酷さに触れつつも、花売りを通して繰り広げられる温かな物語が展開されていく『花屋さんが言うことには』。さっそく読者からは、「読みやすく、ストーリーも軽快で、知らないこともたくさん勉強になりました」「好きになれるキャラクターばかりで、心地良く読み進められます」「花言葉も添えられていて、素敵で優しい気持ちになる本でした」といった感想が寄せられている。
花に興味がある人はもちろんのこと、まもなく新生活を迎えるという人にもオススメな1冊。勇気と感動をもらいたい人は、ぜひとも同作をチェックしてみてはいかがだろうか。