高田純次が朝まで読み通してしまった本とは? 「宮部みゆきさんの『火車』を超える作品に出会えていない」【私の愛読書】

文芸・カルチャー

公開日:2024/3/15

 さまざまな分野で活躍するみなさんにお気に入りの本を教えていただくインタビュー連載「私の愛読書」。今回登場していただくのは、『最後の適当日記(仮)』(ダイヤモンド社)を刊行したばかりの高田純次さん。

 挙げていただいた本は、なかなかネタバレできないミステリーやサスペンス色の濃い3作。その代わりに(?)、時代小説の不思議やおすすめの映画にまつわる話題が展開。冗談だらけの愛読書トークをお届けします。

高田純次さん

●『火車』を超える作品にまだ出会えていない

——東野圭吾さんの『白夜行』、宮部みゆきさんの『火車』、高村薫さんの『照柿』という3冊を挙げていただきました。

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高田純次(以下、高田):俺がひと晩で、寝ずに読んだ本だけを集めたのが、この3冊。あまりにも面白いから、読んでいたら寝られなくなっちゃって。

——眠れないほど熱中できた3冊なんですね。

高田:そう。『火車』はずいぶん前のお話だけどね。刊行されたのは30年くらい前? だから、今の時代は携帯電話が使われちゃってるけど、昔は携帯電話が出てこない作品もあるでしょ。松本清張のシリーズなんかもそうだけど、この時代の小説には携帯なんて出てこないから。

『火車』は、他人に成り代わるっていうお話。宮部みゆきさんの作品は全部は読んでないけど、まだ『火車』を超えるものには出会えていないかな。

——2冊目に挙げていただいたのが『照柿』です。

高田:これも、よく練られた話だよね。読んでいるうちに朝になっちゃった。最近はよく時代モノを読んでるんだけど、時代モノなんて全部嘘書いて大丈夫なんだ。本当のことかどうか、調べようがないからね。ある程度の時代考証はあるにしても、全部嘘だから、いくらでも広げて書けるんですよ。たとえば、今読んでるのは、辻堂魁さんの時代小説。これが面白くてね。この間ブックオフに行ったらさ、読んでないシリーズが10冊くらいあったから買って帰ったよ。

とにかく時代劇はなんでも書ける。この間九州に行ったんだけど、聞いたら、西郷隆盛って、もともと絵も写真も残っていないんだって。今出てるような顔の人かどうかもわかんなかったらしいね。

高田純次さん

——驚きですよね。

高田:そう。織田信長を本能寺で暗殺したのは明智光秀だと言われているけど、明智光秀は本能寺に行ってないことがわかって、明智光秀の部下が…みたいな話になってる。歴史で習ったのとずいぶん違うなと思ってさ。時代劇は何でも書けば真実になっちゃうから、俺もね、100%嘘を書けるよ。嘘つきだから。

『白夜行』もね、読んだら止まらなくなっちゃって。文学は、島崎藤村の『夜明け前』、森鴎外、それから芥川龍之介とか太宰治…これはひとつも読んでないの。わっはっは。

——読んでいないほうの名前ですね(笑)。

高田:そうそう。あ、『坊ちゃん』は読んだかな。『人間失格』なんてね、僕自身が人間失格なんだけど、読んでないの。シェイクスピアも読んでない。あ、『から騒ぎ』っていう作品を読んだくらいかな。他にも『ハムレット』とか有名な作品はいろいろあるけど、なんで読まないんだろうね。

高田純次さん

——お忙しいなか、どんなときに読んでいるんですか?

高田:俺、忙しくないんだよ。いや、忙しいときもあるけど、そんなには。だから、時間があるときは本を読んでる。するとね、漢字とか覚えるじゃない。もしかしたら『Qさま!!』(テレビ朝日)からオファーが来るかなって。

——次の仕事につなげようと(笑)。読書をするといいことがあるんですね。

高田:うん。3行以上の文章を読むと、すぐうたたねできるからいいよ。スーッとね。『火車』はね、財前直見さん主演でドラマをやったんだよね。でもそれは最初に犯人を明かしちゃって、原作と少し内容が違うの。『照柿』は映像化されてないかな。『白夜行』は映画やドラマでやったけど、とにかく本が面白い。あ、映画も3つ勧めてるの。

——教えていただいてもいいんですか…?

高田:どうしようかな。

——ぜひとも(笑)。

高田:えっとね、アンジェリーナ・ジョリーの『テイキング・ライブス』っていう映画があって、これは女の子が好き。さっきの『火車』と同じで、人の生活を乗っ取る話なんだけど、これが面白い。それとね、デンゼル・ワシントンの『トレーニング デイ』。あとは『イコライザー』。ひとつのシーンを3~4回観たんだけど、これが良くてね。それと、サスペンスなら『ファーゴ』も面白いよ。

取材・文=吉田あき、撮影=後藤利江

高田純次さん