仕事を理由に逃げる夫。妊活中なのに夫に拒まれ、追い詰められていく妻。すれ違うセックスレス夫婦の未来は…?
公開日:2024/6/26
セックスレスは離婚の理由になるほど大きな問題である。周りに相談しにくいデリケートな問題なので、当事者はひとりで悩みを抱えてしまいがちだ。『今日も拒まれてます~セックスレス・ハラスメント 嫁日記~』(ポレポレ美/ぶんか社)では、レスに悩む女性の姿が描かれている。あまりにリアルなセックスレスの悩みに、同じ経験のある人は激しく共感できるだろう。「家族」について真剣に考えるきっかけにもなるので、これから結婚を控えているカップルにもおすすめしたい作品だ。
主人公のポレポレ美と彼氏の山木さんは、交際して9年目のカップル。ケンカなんてほとんどしないし長く付き合っている様子は、周りの人から見ると理想のカップルに見えていた。順風満帆に見えるポレ美の人生だが、実は山木さんが原因のセックスレスに悩んでいた。山木さんの仕事は週刊の芸能記事の編集者。毎日忙しく、夜は疲れてすぐ寝てしまう。そんな山木さんをその気にさせるため、ポレ美は涙ぐましい努力を実践していた。
セックスレスのまま結婚したふたりは、新婚旅行でもレスを継続していた。仕事をしていないときでも、山木さんは疲れて眠ってしまうのだ。それでも服装に気をつかい、かわいい下着を身につけ、精力のつく食事を作るポレ美があまりに健気すぎて思わず応援したくなる。恥を忍んで周りにも相談しながらレスを解消のために手を尽くすも、セックスできないまま月日が過ぎていく。ポレ美がひとりで頑張ってひとりで空回っている姿を見ると、お互いが幸せな「家族」になる難しさを考えさせられる。
山木さんは、仕事が本当に忙しいからセックスをする余裕がないという。神経を使う仕事で心は常に緊張状態になっているため、ストレスまみれの中で時間に追われている自分に気をつかうべきだというのだ。この「他人が自分に合わせるべき」という考え方に、強い違和感を覚えてしまう。もしかして、山木さんはモラハラ気質なのでは…? という疑いがじわじわと頭の中を侵食しはじめる。
真剣に聞き出した結果、山木さんはポレ美は「大切な家族」だからセックスをする対象には見えないというのだ。なんと勝手な言い分なのだろうと思う一方で、一緒にいる時間が長くなればそういう気持ちになるのかもしれないとも思わされる。しかし、ここまで妻が望んでいるのなら、誠実に向き合うのもまた夫の役目なのではないだろうか。山木さんは不規則な時間でもポレ美に起こしてもらい、お風呂に入るときはタオル・パンツ・パジャマの3点セットを用意してもらうのに。ポレ美だけが努力して生活をサポートしているように見え、山木さんへの不信感が募っていく。
レスのまま時間がすぎていく中、ポレ美は周囲からの妊娠圧や子どもとのふれあいを通し、妊娠を強く意識し始める。しかし、セックスレスの状態で妊娠できるはずもない。9年間交際していたこともあり、ポレ美はこのとき30歳に。女性の妊娠のタイムリミットを思えば、ポレ美の焦りや悩みがひしひしと伝わってくるだろう。ポレ美が子どもを望み思い悩む一方で、実は山木さん自身も子どもがほしいと思っていた。夫婦で妊活に挑むも、山木さんの仕事や疲労、勃起不全などにより、レスすら解消できない。ふたりとも子どもを望んでいるはずなのに…。そんなままならない日々に、ポレ美は追い詰められていく。
タイトルやストーリーから、ポレ美が一方的にセックスを押し付けているように感じる人もいるかもしれない。しかし、お互い子どもを望んでいるのにセックスレスという現実は避けて通れない問題だろう。幸せな「家族」であるために大切なことについても考えさせられる作品だ。