ひろゆきの妻・西村ゆか、毒親など壮絶な過去を告白。「摂食障害は人生をやり過ごす武器」という考えを変えた夫の存在
公開日:2024/3/15
『だんな様はひろゆき』(朝日新聞出版)の原作者であり、SNSでのシャープな発言でも注目を集める西村ゆかさん。最近は夫妻でYouTubeなどに出演し、論破王のひろゆきさんが妻・ゆかさんの前ではタジタジになる…という微笑ましい様子も配信されている。
そんなゆかさんに、実は壮絶な過去があったようだ。このほど、毒親や摂食障害のこと、ひろゆきさんとのプライベートなどを綴った著書『転んで起きて 毒親 夫婦 お金 仕事 夢の答え』(徳間書店)が刊行された。
波乱に満ちた人生が、ひろゆきさんによって救われたというゆかさん。これまでの人生、そして西村夫妻の夫婦喧嘩からの立ち直り方や信頼関係の結び方について、本人に伺った。
摂食障害は人生をやり過ごすための武器だった
——本書を読んだ方から、ゆかさんの生き方を通じて気づきを得た、という共感の声が次々と上がっているようです。
西村ゆかさん(以下西村):『だんな様はひろゆき』では、ひろゆきくんの話だから客観視できましたけど、自分に焦点を当てるのは初めてで…。自分のことを語るなんておこがましいよな、という想いが常にありますね。
——ご両親に関しては、目をそむけたくなるようなつらいお話がたくさんありました。ゆかさんが10代の頃、お母様が「(ゆかさんの)顔を見たくないから」と言って深夜に遊び歩いていたとか、ゆかさんの同級生のお父さんにお金を借りた上に言い寄られていたとか…。
西村:そうそう、友人からも波瀾万丈だねってよく言われます。でも、自分に起きていたことだから、そう言われてもピンとこないというか。とりあえず、大変なことが起きても毎回毎回必死にやってきたぞ、という感じなんです。それに、なんとなく他の人と自分を比べてしまって。もっとハードモードの人はいっぱいいるから、自分は大したことないかな、とか、色々考えちゃって。
——家族のことが原因で摂食障害を負い、そのつらさをひろゆきさんが受け止めてくれた…というお話もありました。ひろゆきさんが掛けてくれた言葉は、それまでの恋人たちとは違っていたそうですね。
西村:家族間の争いの板挟みになってつらいとか、親からお金を無心されてつらいっていう話を正直に話すと、相手の機嫌が悪くなったり、逆に怒られたりすることが多かったんですよ。それに、相手に気持ち悪いと言われたり、相手が離れていったりしたらショックじゃないですか。だから、自分のネガティブな話を彼氏に話すっていうことが、それまではなくて。
ただ、ひろゆきくんと付き合い始めたぐらいのタイミングで、摂食障害がかなりひどくなっちゃって…。当時は、勤めていた会社を抜け出し、コンビニで食料を買い込んで、一気に食べてトイレで吐くことを、多いときで1日5回繰り返していました。治さないともっとおかしくなるし、ひとりで抱えていたら死んでしまうかも…って、キャパオーバーになっちゃって。その事実をそのままひろゆきくんに伝えたら、そうだったんだ、大変だったねって受け入れてくれたんです。
——ただ気持ちを聞いてくれた、ということでしょうか。
西村:そうですね。ちょうど同じ頃、中学生からの親友も「そんなに大変な想いを抱えていたなんて知らなかった」「伝えてくれてありがとう」と受け入れてくれたことがあり、2つの出来事が重なって、自分の気持ちをありのままに話しても人は離れていかないんだなっていうことに気づきました。同情してほしいとか、一緒に悲しんでほしいっていうことは全然望んでなかったけど、喋っても大丈夫だとわかったことがすごく大きくて。
——ひとりで抱えていたものを出せるようになったことが、大きな変化だったのですね。それによって摂食障害のつらさは和らいでいったのでしょうか。
西村:症状自体は変わらないんですが、この体験によってロックが解除されて、10年以上経ってようやく、ちゃんと治していこうという次のステップに進むことができました。摂食障害って普通の状態じゃないですよね。それは自分でもわかっていたんです。でも、いっぱい食べて吐くと一瞬スッキリする。それを繰り返すことで、家族の問題や人間関係のトラブルからくるストレスを発散し、やり過ごしていたんです。今考えると完全に間違っていますけど、自分には必要だという想いがありました。
——変な言い方ですけど、摂食障害を手放したくなかったというか…。
西村:そうですね。これがないと私はやっていけないという気持ちがあったから、その行動の異常さや、それを続けたときのリスクに全部蓋をして、これからも一緒に付き合っていくようなつもりでいました。でもそれを繰り返していると、常に胸焼け状態で食道も荒れているし、むくみも出てくるし、メンタルも落ち込む…。そんなときにひろゆきくんと親友が私の気持ちを受け入れてくれて、やっぱり治そう、ちゃんと病院を探そう、という次のステップに進むことができました。
夫婦喧嘩に夫の「ごめんなさい」はなくてもいい
——ひろゆきさんはいつも相手とバトルしているようなイメージもありますが、夫婦喧嘩では「良い方向に事が進むように少しでも努力しようとする」方だとか。失礼な言い方になるかもしれませんが、いじらしい一面もあるのだなと感じました。
西村:「自分で片付けると言ったのになんでちゃんとやらないの?」みたいなよくある夫婦喧嘩ですけど、彼は「僕が悪かった」みたいなことは言わないし、その場では決して認めないんですよ。で、できなかったことを正当化するような合理的な理由を言ってくるから喧嘩になるんですけど。でも、自分が悪かったことはわかっているみたいで、次の日にコーヒーが出てきたり、朝食で私のお皿があいたら、流しに持っていって一緒に洗い物を済ませてくれたりする。「ごめんなさい」が言えないんです。
——その謙虚な態度が何日か続くんですか?
西村:数日間くらいですけど。でも、毎回そうやって、できる範囲で善処しようとする姿勢は伝わります。ちょっと物言いが優しくなったりして態度に出やすいし、私も察するタイプなので、たぶん反省しているんだろうなと。
——ひろゆきさんは、プライベートでは基本的に物静かなタイプだとか。
西村:すごく静かだし、全然論破とかはしてこないですよ。夫婦で論破されてもしょうがないし、カメラが回っているところでやって! って私が言っちゃう。それを家でやっても誰もスパチャ投げてこないでしょって(笑)。
——その模様を動画で配信したいですね(笑)。夫婦喧嘩が、謝罪はなくとも、歩み寄りによって毎回消化されていると。
西村:夫婦一緒に暮らしていて、完全にぶつかることがなくなるのは難しいと思うけど、たぶんみなさんも、謝罪を聞きたいというより、状況を改善したい方がほとんどだと思うんですよ。喧嘩に勝っても、その問題がなくならなければ意味がない。私も若い頃は、とにかく気持ちをぶつけて言い合いになりましたけど、ある時、それが不毛であることに気づいて。言いたいことだけ言ってぶつかるより、その状況が改善する方法を見つけよう、と考えるようになりました。
——使い終わったティッシュが床に散らばっているそうですが…。
西村:改善されていることと、されていないことはあるんです。ティッシュはいまだにちゃんと捨てられないけれど、配信部屋以外には転がらないようになったから、まあいいかと。洗い物はその場で洗わないにしても水につけるようになったし、本にも書きましたが、家事を1日交代制にしたら、すごく改善されました。20年かかりましたけど、長いスパンで見たら状況がどんどん改善されているなと思います。
——それを聞くと、夫婦が長く連れ添うことも悪いことばかりじゃないなと思えますね。自分はこう変えたい、ここは譲れない、みたいな話し合いをすることもありますか?
西村:話し合いはしますね。時間はかかりますけど、そのほうがお互いの意見が通りやすくて。昔は「なんでわかってくれないの」ってただ不満だけをぶつけることもありましたけど、問題点を明確に言うと、あとはそれを彼ができるのかできないのか、したくないならその理由を聞けるし、建設的な話し合いができるようになりました。
——本書を読んでいても、お互いに自立した関係というか、いい意味で、感情をはさまないビジネスパートナーのようなドライな部分を持ちあわせるご夫妻なのだなと感じました。そのあたりもうまく秘訣なのかな、と。
西村:どっちがやったほうが得意、ということはお互いにあるじゃないですか。細々したことは私のほうが得意で、電気系統とか大掛かりなことは彼のほうがちゃっちゃとできる。それをお互いに担当分けして、それ以外のことはそれぞれがやるというか。
私もひろゆきくんも、お互いに甘えてる
——お母さんからお金を無心されたときも、ひろゆきさんに話すことで親の要求を断ることができた、というお話がありました。
西村:よく言われることですけど、「お金を貸すならもう戻らなくていい、くらいの気持ちでいたほうがいい」という話をひろゆきくんからもされて、いや、お前はお金があるからいいよなって思っていたんですけど、彼はそのあとに「嫌だったら貸さなきゃいいんじゃない」と言ってくれて。
何が嫌かって、お金が戻らないこともそうだけど、ちゃんと返すっていう約束を親が守ってくれないことが一番嫌で、それが積み重なると信頼関係がどんどん壊れていくんです。返すのが遅れるなら、それを話してくれたらそれでいいやって思えますけど、そういう話もない。裏切られたら傷つくから、お金を貸したくなかった。父親も母親も自分の親なんだから、本当だったら嫌いになりたくない相手なのに…。そんな時にひろゆきくんがそういう言葉を掛けてくれて、衝撃を受けました。
子どもの頃から、お母さんに頼まれたことは聞かなきゃいけないと思っていたし、そのまま大人になっちゃったんです。若い頃は稼ぎだってそんなにないし。それに、「ひどいよね」とか「もう貸すのをやめたら」みたいなことは周りから言われてましたけど、「信頼関係が壊れることに自分が傷つくなら貸さなくてもいい」という考えには至っていなかった。それもあって驚いたんだと思います。
——家族もそうですが、信頼関係の結び方みたいなものを、ひろゆきさんから学ぶこともあったのですね。
西村:そうですね。付き合い始めた頃、私の体調があんまり良くなくて、ひろゆきくんに迷惑をかけちゃうのが申し訳ない…って話したことがあって。彼は当時、まだ2ちゃんねるの管理人をしていて、自分の作ったサービスのことで全然知らない人から嫌なことを言われることも多かったようです。だから、身近な人の相談に乗るようなことは迷惑でも何でもないし、むしろそちらのほうが聞いてあげたいことなんだよ、と言われて嬉しかった記憶があります。
——一夫婦として、ゆかさんがひろゆきさんに求めるもの、ひろゆきさんがゆかさんに求めるものって、どんなことでしょうか。
西村:私が求めるのは「報告・連絡・相談」のホウレンソウ。これがすごくできない人で。まあ、お互いに歳を重ねて丸くなった部分もあるし、最近はすこしできるようになってきたかも。向こうは私に「怒らないでほしい」と言っているみたいです。怒るといっても、トイレをキレイに使うとか、洗い物の後にシンクの周りを拭くとか、そういうことなので、みんなからは「怒るというか、教育ですね」と言われます(笑)。
——ひろゆきさんはゆかさんに甘えているのかな、と感じるところもあります。
西村:なんだかんだ言って、それぞれ違うところで、お互いに甘えてるんじゃないかなって最近は思います。ひろゆきくんは怒らないでと言って甘えているし、私も言いたいことを言う環境が子ども時代にあまりなかったので。ちょっと言いすぎることが絶対にある。ただ、ひろゆきくんにはありのままの気持ちを言っても大丈夫だし、それで夫婦の信頼関係が壊れないことがわかっているから、そういう意味では私も彼に甘えているんだろうなって思います。
取材・文=吉田あき 撮影=水津惣一郎 ヘアメイク=タナカミホ