結婚式という風習(前編)/絶望ライン工 独身獄中記⑭
更新日:2024/3/21
人は悲しい。嘘をついてまで自分をよりよく見せようとする。
誰しも大小あれど人前で自分を偽るし、直接的な嘘でなくとも優良誤認させるような言動を発する。
嘘はつくもつかれるも苦しい。心の底に鈍痛が走る不快感がある。
婚活を経験し、その痛みを身をもって知る。あれはポーカー世界大会レベルの騙し合いである。
他人の嘘に苦しむ私ですら、もちろん嘘をつく。
私の嘘は自分をよりよく見せるためにではなく、むしろその逆であることが多い。
何故か昔から自分を過少申告する癖があります。
収入や仕事、立場や経歴など、実際の3割引きくらいで申告する。
それは自分に自信がないとか、謙虚な心の現れであるとかではない。
そうしたほうが先々で得であるということを、これまでの人生から学んできた結果である。
それは例えばよくある「掃除のオバチャンが実はその会社の役員だった」みたいな寓話に通ずるところがあります。
その逆じゃあ成立しないんだなァ、「社長だと思っていたオッサンがただの清掃員だった」だと誰も幸せになれない。
物語をマイナスから始めることで、転じてプラスになった時の振れ幅に人は惹きつけられるのだと思う。
真面目にコツコツ勉強して大学に行ったA君よりも、不良から改心して板金屋に就職したB君のストーリーを世間は評価する。
「Aはだたのガリ勉、Bは昔ヤンチャだったが今は立派なもんだ」
誰にも迷惑をかけず努力してきたA君。
一方B君はいじめ、カツアゲ、暴力とたくさんの被害者を出し、今もB君の過去の行いのせいで苦しんでいる人がいるかもしれない。
B君はパチンコ屋で出会ったバカと出来婚して、またバカを生む。これをbちゃんとするか。
そんなB君家族が乗るクルマはもちろん──
ところで、この「掃除のオバチャンが~」スピンオフ作品である「掃除のオバチャンの言葉で人生が救われた」系の話が筆者は大嫌いである。
これについてインターネット上で書こうものなら炎上必至のため、ここで詳細申し上げるのは憚られるが、これが「弁護士先生の言葉で人生が救われた」では成り立たないことに皆気が付くべきである。
皆無意識に人を職業や属性でランク付けしている。人間社会は地獄のランクマッチだ。
この差別スレスレのランクマについてワールドワイドウェブ以外で発表する機会があれば、その際別稿にて詳しく述べたい。
人生の過少申告に話は戻る。
私は臆病な人間なので、初対面の人に自分をさらけ出すようなことはしない。
仕事は会社員です。製造関連に勤めています。趣味で動画投稿とたまに音楽をやっています。
こんな感じで自己紹介することが多い。
逆に聞いてもいないのに自分のことをペラペラと喋る人には気を付けたい。それはよほどデリカシーがないか、TikToker並みに自己顕示欲が強いか、あるいは詐欺師である。
誰々と一緒だったとか、誰々の仕事を手伝ったとか、著名人の名を挙げて自分を語る輩も要注意です。こういった人はクラブ界隈に大変多い。
それで言ったら自分は初音ミクとロサンゼルスで一緒だったし、小池百合子の仕事を手伝っていたぞ。(元清掃工場勤務)
しかしどう自分を偽っても、何故か勝手に伝わってしまう自分の唯一無二の属性「独身」。
中学2年生と中学3年生の違いは中学生にしか判別できないが、相手が独身か既婚者かについては大人になると年齢関係なくなんとなく理解ってしまうから不思議だ。
特に同性の婚姻の有無についてはほぼ100%で的中する。
私は実は結婚して子供がいるとか、バツ2だとか、エミちゃんという20代女性のストーカーであるとか噂されているようだが、今のところ婚姻歴なし独身です。
これは嘘のつきようがない。
そして独身者だからこそ、今まで自分が当事者になることなくいくつもの謎の風習を見て来た。
男女が婚姻を宣言するためだけに、ドメスティックな感動ポルノやうすら寒いヴィデオを来場者に観せ、観覧料参萬円を申し受ける謎の奇祭。
それは、結婚式と呼ばれています。
<第15回に続く>41歳独身男性。工場勤務をしながら日々の有様を配信する。柴犬と暮らす。