あなたは信じる!? 「丑の刻参りのルール」「絶対に人に向けてはいけない禁断のマジナイ」日本に伝わる呪術の入門書
公開日:2024/3/19
古くから語り継がれる「呪術」には、まがまがしいイメージがある。しかし、実際は身近なもので「人の思いや行動」で「物事や運命」を変えるきっかけに。願いを込めれば、人生が好転するという。
呪術が「ずっと好き」だったと明かす著者による『呪術講座 入門編』(加門七海/KADOKAWA)は、日本に伝わる「ノロイ」や「マジナイ」を広く紹介する1冊だ。本書は、呪術には「効力がある」という前提で展開。科学的な「検証」もなく、現実の「あるなし論」も述べていないため、純粋に呪術と向き合える。
広く知られているが奥が深いノロイ「丑の刻参り」
夜な夜な、白装束で「藁人形」に釘を打ち付ける……。「丑の刻参り」は、経験がなくともその光景がパッと浮かぶ、ノロイの代名詞だ。
本書によると、厳密なルールがあるとは驚きだ。白装束を着て、顔に白粉を塗り、頭には火元で鍋などを載せる「五徳」を逆さまに。五徳には、三本のろうそくを立てて、藁人形に「五寸釘」をひたすら打ち込む。日数はおおむね「十四日間」で、毎日「午前二時過ぎ、即ち丑の刻」で実行。絶対、人に見られてはいけないという。
その出立ちにも意味はあり、白装束は「自分は常の世にいるものではない」という決意を表す。顔に白粉を塗るのは「死人の顔色、または呪的防御(アーマー)」の役割で、五徳を逆さまにするのは「天地を逆に」して「非日常」を示し、「負の力」を宿すのだそう。
ただ、ノロイも時代の変化を受ける。昨今は、呪いたい相手の画像を使って「スマホの画面をペンでつつき続けても、効果がある」と述べる人もいるという。結局、本人が「満足」できればかまわないのだそう。形は変われど、気持ちを「浄化」させる手段として、今なお根付いているのも面白い。
人に向けてはいけない禁断のマジナイ「きつねの窓」
日本でのマジナイは、おおむね「お祓い」を意味するという。期待されるのは、「病気などのマイナスの存在を除け、運が下がるのを退ける」役割だ。
人間の「体」を使い「頭のてっぺんから足の先」まで、まんべんなくマジナイをかける方法も。例えば、あらゆるモノを見る「目」にも力がある。誰かに「じっと見つめられる」と居心地が悪くなるのも、本書いわく、ある種のマジナイだ。
さらに、手も使って「モノノケの有無や妖怪の正体」を見破るためのマジナイ「きつねの窓」も紹介されている。このマジナイ、人を見るのは御法度。覗かれた相手は「死ぬ」と伝わっているからだ。息を吹いても相手が死ぬか、自分に「呪いが掛かる」ともされているため、絶対にやってはいけないという。
呪術は「超自然の神秘的な奥義」として、人びとの生活に根差し、寄り添ってきた。ただ、ノロイやマジナイの解釈に答えはなく、時代を超えても「百家争鳴の有様」とする、著者の主張にも納得だ。「呪術の世界は果てしなく広い」。本書は、その真髄へと迫る1冊だ。
文=カネコシュウヘイ