結婚して3年なのにどうして処女のままなの…? 性生活にコンプレックスを持ちながら妊活を続ける妻の物語

マンガ

公開日:2024/5/9

奥さまは処女

奥さまは処女』(うなぎ/光文社)は 仲良しでも、セックスがうまくいかずにセックスレスに陥ってしまう夫婦のお話。結婚後も処女のまま何年も過ごしている妻の心の変化を追ったストーリーだ。

 セックスレスだから当然、妊娠しない。自分より後に結婚した友達がママになるのを、素直に喜べない。結婚して3年も経つのに「どうして自分は処女なのか」と、焦る主人公。夫との関係はすこぶる良好にもかかわらず、セックスレスであることや、処女であることで、もやもやする主人公は、著者本人である。

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『奥さまは処女』(光文社 2021/2/23 )の著者はブログ「奥さまは処女」で人気のブロガーうなぎさん。マンガは梅林イクミさんが担当している。本書は処女のまま結婚し、性生活にコンプレックスを持ちながら妊活する主人公うなぎさんのコミックエッセイだ。

奥さまは処女

奥さまは処女

 彼との出会いは21歳の時。遠距離恋愛中からお互いに性に対して淡白で、何度かベッドでチャレンジしたけどうまくいかず、そのまま26歳で結婚。タイミングを逃し、そのままセックスレスになり「このままでいいのか」と、悩む主人公うなぎの気持ちの変化や行動が描かれている。

 時々「脳内セックスレス解消委員会」なるものが登場し、客観的な意見をズバズバ言うネコ2匹とうなぎさんがあれこれ今後の動きを考えている。イラストの構図から、まるで読者も会議に参加しているような気分になるのも面白い。

奥さまは処女

奥さまは処女

 ベッドで「イタくてできない」を克服するために、まずはタンポンにチャレンジしてみる。非処女にとってタンポンはいざという時を試す為に便利なアイテムとして描かれ「一緒にスイーツ食べに行くぐらい親しい」と本当は切実な内容を冗談めかして表現されている。

 確かに未知なことは恐怖を感じるし、見えないからさらに怖い。だから、鏡を見ながらタンポンを入れようとしたら、自分の下半身を見てもっと怖くなる! 物事がスムーズにいかないうなぎさんの悩みや不安が垣間見えるエピソードだ。

奥さまは処女

奥さまは処女

 付き合って結婚して普通にエッチなことができて、妊娠して、子どもとの結婚生活が待っていたハズなのに、「どうして、それ以前の段階でストップしているのか?」という悩みは最近聞く「レス」とは違う、より深刻な問題であるし、そもそも当たり前と思っていたことが実はそうではないという現実の難しさを教えてくれる。

 淡白な夫のゴロさんにその気になってもらう目的で旅行を計画したり、病院に行き相談したり、人工的に精子を入れるシリンジ法にチャレンジしたり、とにかくあれこれ試してはうまくいかず、脳内会議の繰り返し。頭の中が妊活でいっぱいになっている思考が赤裸々で、共感できる人は多いのではないだろうか。

奥さまは処女

奥さまは処女

「セックスすること」は当たり前だと思い込んでいたうなぎさんは、自分と家族にとってそれは当たり前ではなかったという現実を目の当たりにした結果、うつ病になってしまう。そうなってから自分を見失いかけていたことに気づく。いままでいつも自分に正直に生きてきたはずなのに、結婚してから子どもができない自分は世間からどう見られているか、自分を一生懸命みんなの当たり前に加えようとしていた、そう気づけたのもまた脳内会議で導き出されたことなのだ。

奥さまは処女

奥さまは処女

 女性目線で見ると、結婚から続く妊娠と出産は年齢的にボーダーラインがあり「いま妊活しないと後で後悔するのではないか」と、焦る気持ちも分かる。実際、同じように焦っている人も多いかもしれない。でも、大事なのはうなぎさんも気づいたとおり「いま、自分がどうありたいか」が何よりも大切だ。優しい夫のゴロさんは、いつも彼女の気持ちを尊重してくれているのが、病気から立ち直れたきっかけでもあったといえるだろう。

 マンガの章ごとにうなぎさんの気持ちが文章で書かれていて、さらに共感できる。彼や夫がいる人でベッドでうまくいかなくて悩んでいる人、妊活で疲れている人にも読んでもらいたい。

「結婚したら子どもできて当然」の世間の目を気にするのではなく「自分がどうありたいか」「今後どんな生き方がしたいか」が大事なのだ。人にどう見られているかを気にする生き方から、既成概念の中に自分を当てはめようとする生き方から脱却した時に、心は自由になれるのだ。

文=ネゴト / 松永つむじ