“猫の本専門の出版社”刊行の、猫の体調確認ができる図鑑。多様な写真・図版で、6つの観点から猫の病気のサインをいち早く見つけられる、飼い主必読の1冊

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公開日:2024/4/3

猫の病気のサインがわかる図鑑 体調不良や痛みを見逃さないために
猫の病気のサインがわかる図鑑 体調不良や痛みを見逃さないために』(ねこねっこ:構成、服部 幸:監修/ねこねっこ)

 病気やケガを抱えていても症状が見えづらく、気づいたときには病状が悪化していることも多い猫。筆者も1.5ヶ月の頃に保護した猫と暮らしているのだが、最初の数カ月は痩せ気味の状態が続き、「何かおかしいなぁ」と思っていたら、駆除できていたはずの寄生虫がお腹に残っていた……ということがあった。

 それが発見できたのは、うんちを観察していたことと、定期的に動物病院に通っていたからなのだが、後から振り返ると「痩せ気味の状態が続いている段階で気づくべきだったな……」という反省もあった。

 そんな筆者にとって、『猫の病気のサインがわかる図鑑 体調不良や痛みを見逃さないために』(ねこねっこ:構成、服部 幸:監修/ねこねっこ)は、「あの頃に手元にあったら良かったのに!」と感じる本だった。

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 本書は、猫のさまざまな病気・ケガのサインを、「体の状態・行動」「おしっこ」「吐く症状」「うんち」「目、鼻、耳、口」「皮膚、毛」の状態から察知する術を教える内容。四六判のコンパクトなサイズで、150ページ程度と決して長くない本だが、一つ一つの症例に多くの写真や図版が使われていて、情報の密度は非常に高い。

 たとえば「猫の肉付き」についても、本書では痩せすぎ~太りすぎまで9段階の評価がイラストとともに紹介されている。筆者の猫のお腹に虫がいた頃も、本書があれば「この評価だと2~3くらいの痩せ気味だな」と客観的に把握でき、いち早く原因を探れたはずだ。なお9段階の評価はWSAVA(世界小動物獣医師会)の基準に基づくもの。本書にはその出典もきちんと紹介されていた。

 そのほか便の色や形、おしっこの色などについても、本書では写真と一緒に考えられる病気などが細かく紹介されている。また「高いところから飛び降りる様子から猫の慢性痛を見抜く方法(痛みがある猫は慎重に近くに降りる)」「首~肩のあたりの皮膚をつまんで脱水状態を確認する方法(脱水している猫は皮膚の戻りが遅い)」なども非常に勉強になった。

 猫関係の本では「専門家の監修をつけて、テキトーに写真を集めてササッと作った本だな」と感じるものも多いのだが、この本は決してそうではない。医師が監修している(東京猫医療センター院長の服部 幸さん)のはもちろん、「本当に猫が好きな人が丁寧に作った本だな」と読んでいて分かるのだ。

 本書を発行するのは「猫の本専門出版ねこねっこ」。2007年から猫専門の編集者・ライターとして活動する本木文恵さんが2020年に立ち上げた、猫の本だけを制作する“ひとり出版社”だ。

 近所のお医者さんにワクチン接種などで定期的に通いつつ、この本で猫の状態を自主チェックしておけば、猫の病気やケガに気づくのは早くなるはず。コンパクトな本だが、題名通り「図鑑」といえるほど充実している内容なので、猫と暮らしている人には一読をおすすめしたい。

文=古澤誠一郎