予約が取れない人気店・落合務シェフの簡単イタリアン。ダイエットにも最適! 手間をかけずにプロの味【作ってみた】
公開日:2024/3/30
予約の取れないイタリアンレストラン「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」のオーナーを務める伝説のシェフ・落合務。これだけ人気を集めるシェフなら、家でもたくさんの凝った料理を作っている――と思いきや、実は数年前まで家で料理をしない人だったらしい。しかし2021年にがんが見つかり、闘病生活をきっかけに人生初の自炊生活をスタート。抗がん剤で食欲が落ちる中、負けるもんかとたくさん食べていたら太ってしまい、ダイエット目的で自炊を始めたのがきっかけだという。
『プロの味が最速でつくれる! 落合式イタリアン』(落合務/ダイヤモンド社)は、その中で活躍した野菜たっぷりの昔ながらのイタリア料理を、手間をギリギリまで省略して紹介しているレシピ本。料理人人生60年の、知識と経験、知恵が詰まっている。元々ダイエットのために始めたこともあり、落合シェフはこれを食べて「あっという間に6、7キロやせた」そう。
イタリアンというと、どうしてもピザやパスタが浮かんで「ダイエット……?」と疑問に感じてしまうが、本書のレシピは野菜や肉、魚などのたんぱく質が豊富なものばかり! しかもまとめて作り置きできるものが多く、毎日の食生活に自然な形で無理なく取り入れられる工夫もなされている。これはぜひとも実践して、手間や味を体感してみたい! ということで、実際に作ってみることにした。
「思い出の野菜パスタ」(P.14~P.15)
一品目は、落合シェフがイタリアの修業先で最初に食べたまかない「思い出の野菜パスタ」。材料はオリーブオイル、にんにく、赤唐辛子、玉ねぎ、塩、なす、ケイパー、トマトジュース、パスタ、チーズ、スプラウト。
シンプルな味つけだが、トマトジュースにケイパーで酸味を効かせるなど、プロならではの工夫が感じられる。こうした味を引き締めてくれる食材のおかげで、思った以上に本格的かつフレッシュな味わいに仕上がっていた。筆者の中で、これまでケイパーは余りがちな食材の一つだったが、これからはうまく活用できそうで嬉しい。
「自家製サルシッチャ」(P.60~P.61)と「ボルベッティ」(P.62)
続いて、作り置きとして非常に重宝しそうな「自家製サルシッチャ」と、サルシッチャの活用例「ボルベッティ」。作り方も材料もとてもシンプルで、豚ひき肉と刻んだにんにく、ローズマリー、赤唐辛子、塩コショウを混ぜ、ラップで包むだけ。冷蔵庫で3~4日、冷凍庫なら数週間持つ。
このサルシッチャをちぎって丸めて潰し、フライパンで焼いたものが「ボルベッティ」。元々棒状にしてあるので、片手でひょいひょい成形してフライパンに投入するだけなのがありがたい。手を汚したくない場合はスプーンでもいけそう。
つなぎのパン粉や玉ねぎを使用していない分、肉々しさがダイレクトにくる。この「肉を食べている」感、ローズマリーとにんにくの風味が非常にクセになる。豚ひき肉を大量買いしたくなるくらいにおいしかった。付け合わせの作り方は本書を見てほしい。
「なすとズッキーニのアーリオ・オーリオ」(P.84~P.85)
最後は、こちらもたくさん作って作り置きとして常備したい「なすとズッキーニのアーリオ・オーリオ」。作り方は、にんにくとセージ、赤唐辛子の風味とまとわせたオリーブオイルでなすとズッキーニを炒め、塩で味を調えるだけ。
塩だけで炒めることによって、野菜のうまみと甘みがこれでもかというくらいに引き出されている。この、シンプルだからこそのご馳走感がたまらない。また、ふわっと香るセージの香りが、料理の特別感と満足度を何倍にも高めてくれる。
どの料理も、使う調味料は最低限。手間も全然かからない。それなのに、素材の持ち味を最大限生かすことで、こんなに手軽にこうもおいしくなるのかと感動した。筆者も本書のレシピで、昔ながらのイタリアンの魅力をもっと深掘りしてみたくなった。
調理、文=月乃雫