自分は何をやってもダメ。生きづらいと感じている人に。決して他人事ではない「愛着障害」をマンガで学ぶ

マンガ

公開日:2024/5/17

マンガでわかる愛着障害

 職場での人間関係や、プライベートでの恋愛に友人関係。様々な人との関わりを経験する中で、「上手く他人と付き合えない」という悩みを抱えたことのある人はいないだろうか。

 どうせ自分は何をやってもダメ。人に迷惑をかけてばかり。お荷物にしかならない。必要以上に周りの目や意見を気にしてしまう。ずっとびくびくしてばかり。怯えて自分の気持ちや言葉を出すことなんかできない。恋人ができても全然長続きしない。最後には「重い」「面倒」とフラれる。辛い思いをするならひとりの方がいいとわかっているけど、ひとりでいることの寂しさに耐えられない。

 生きづらい。本当はこれらの悩みを克服したい。けれどどうすればいいのかわからなくて、もがいているうちにまた同じ失敗を繰り返す。そんな悩みを抱える人の手助けになるかもしれない一冊。それが『マンガでわかる愛着障害』(岡田尊司:監修、松本耳子:漫画/光文社)だ。

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マンガでわかる愛着障害

 様々な社会人が集う、とあるアトリエでのアートスクールを舞台にお話が展開される本作。中心人物となる大下莎菜は通い始めたこのアトリエで出会った鈴木朔太郎と恋人として付き合い始めたものの、コミュニケーションが上手くいかずぎくしゃくしてしまい、どんどん不安になっていた。

 それを横から見ていたアートスクールの主催者・茜は、それぞれがタイプの違う「愛着障害」を抱えているのでは?と気づく。自身も愛着障害を抱えた経験を持ち、スクールではアートセラピーのレッスンも行う茜や、サポートとして参加する心療内科医の岡田先生。そして莎菜や朔太郎と同じく、大なり小なり「愛着」に難を抱えた仲間たち。彼らと共に「愛着障害」への理解を深め、自分がラクに楽しく生きるための方法を模索する、そんな内容だ。

マンガでわかる愛着障害

 そもそも、愛着とは何か? 端的に言えば“人と人との程よい距離感を保つ能力”だが、主に幼少期の生育環境によって形成されるこれは、いくつかのタイプに分類される。

 なかでも大きく影響を与えるのが「安定型」「不安定型」のふたつで、不安定型に分類される人は何らかのコミュニケーション不良を抱えることも多い。それがいわゆる愛着障害に繋がりやすくなる、というわけである。

 少し難しい話のようにも感じるが、この愛着障害はけっして他人事ではない。実は上記の不安定型に分類されるのは全成人の約1/3とも言われており、それが具体的には冒頭のような、対人関係トラブルや精神状態の悪化を引き起こすケースもある。

 ダメだとわかっているのに失敗を繰り返し自己嫌悪に陥る。常に後ろ向きな発想に囚われ、一向にコンプレックスが解消できない。その辛さから抜け出す糸口は、もしかしたらこの愛着障害を知ることで掴めるかもしれない。

マンガでわかる愛着障害

 人の、自分の心における不調は、単純な身体の体調不良を治すことより難しい。そもそも「なにがどう不調なのか」を上手く言葉にできない人も多いし、それゆえになぜ不調なのか、原因もわからない。
 さらに言えば原因も人によって千差万別であり、故に不調を解消する方法も人によって違う。もっと言えば、自分が不調であることにすら気づけない人も少なくない。

 身体的な痛みや流れる血、化膿する傷口。そういった目に見える明確な特徴が出ればすぐにわかるのに、それが出るケースの方が少ない。そういった意味でも、心の不調に気づかないまま、ただなんとなく日々を生きづらいと思いながら、過ごしている人も大勢いることだろう。

マンガでわかる愛着障害

 本作がきっかけで、自身の心の不調について考えることで、もしかしたら自分の生きづらさの理由に気づき、目の前が少しだけ明るくなるかもしれない。ひとりでも多くの人が出口のない自己嫌悪やコンプレックス、生きづらさの迷路から抜け出せることを祈っている。

文=ネゴト / 曽我美なつめ