無くせる会社のムダ作業100個まとめてみた! 「やりすぎセキュリティ」や「察してちゃん」をぶった斬る

ビジネス

公開日:2024/4/8

無くせる会社のムダ作業100個まとめてみた
無くせる会社のムダ作業100個まとめてみた』(元山文菜/クロスメディア・パブリッシング(インプレス))

 新年度が始まり、良好なスタートダッシュを決めたいところだ。時間は誰に対しても平等に24時間しかない。ムダを省き、必要な部分にのみ注力できれば、仕事の成果を高めていけそうだ。

 企業・自治体・病院などの業務改善を推進する著者による『無くせる会社のムダ作業100個まとめてみた』(元山文菜/クロスメディア・パブリッシング(インプレス))は、DXやAI導入の前に、個人やチームで始められる「ムダ作業の解決策」を7つの切り口と100個の事例をもとに紹介している。特に「高いデジタルスキルがなくても、作業を効率化させたい」という潜在需要に応えており、手早くムダを省きたいビジネスパーソンの需要に合致する。

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 本書は、業務改善のための「人員追加」は、必ずしも成功しない、と述べる。例に挙げるのはカップラーメン。作るのに3分かかるカップラーメンを3人で作ったからといって1分にはならない、とたとえる。また、新しいテクノロジーやAIを活用する業務効率化も同様で、それらを使いこなすための手間が増えるため、当面は目的を達成し得ない。そこで本書は、手早く無くせるムダを紹介している、というわけである。

 例えば、本書が紹介する1つめの事例は「やりすぎセキュリティ」。いわゆるPPAPと呼ばれるもので、パスワード付きZIPファイルをメールに添付し送信、後からパスワードを送信するデータの受け渡し方法である。これを経験した人はわかると思うが、本書の言葉では「1通のメールを送るためだけに驚くほど複数の作業が発生する」。これは受信側にもいえることである。さらに、送信者のミスによりパスワードが送られてこなかったり、パスワードが誤っていたりして、仕事をストップさせてしまう滞留時間を生じさせるリスクもある。そこで本書が勧めるのは、安全性の高いクラウド環境にてフォルダを共有する方法。例えば、GoogleDrive、OneDrive、Dropboxなどを挙げている。

 このように、知っている人はすでに着手しているムダの省き方もあれば、目からウロコの省き方まで網羅している本書の中で、特に興味深いと思ったのは、Chapter5『「コミュニケーション」のムダ』にある“IPOを意識する”取り組みである。

 これを活かせる対象は、例えば、あいまい言葉による手戻り作業というムダ。「なるはやで」「いい感じで」といったあいまいな仕事の指示を受け、依頼された仕事の差し戻しがしょっちゅう起こる、また立場を逆にして、何度もやり直しを依頼しなければならない、という現象に一度は悩まされた人は、少数ではないだろう。

 依頼するほうも依頼されるほうも、こういったムダを省くために必要なのは、IPO(Input-Process-Output)のフレームワークで仕事の骨組みを作ること。つまり、仕事の依頼を明確にし、具体的な手順を決めてから業務に取り掛かる、と流れを明確化することにある。IPOは、まずアウトプット(成果)を設定し、次に「誰のために」「なぜこの仕事をするのか」をしっかり確認し、最後に「いつまでに」「何を作るか」をはっきりさせる。そうすれば、例えば「上層部の人たちなら自社の市場シェアの情報は少なくていい。逆に技術力の強みの情報は細かく整理したほうがいい」など、集める情報(インプット)がどんどんクリアになる。加えて、実際の進め方について期日を明確化するなど具体的にシミュレーションする。このように「あいまい」に対して徹底的に省く強い気持ちが、「あいまい言葉による手戻り作業というムダ」に効くのだという。

 IPOは、次項のムダ「察してちゃん」にも通じる。「言われる前に自分で考えろ」「そんなこと言わなくてもわかってくれよ…」という自分の考えを察して行動していくれることの強要である。本書いわく、「察してちゃん」は何もしなければ怒るし、やむを得ず行動してミスをしても怒る。最悪のケースでは、「私はそんなこと言ってない」「自分で勝手にやったことだろ」と責任を押し付けられる。このような職場では、お互いの顔色をうかがうように成果が出ないムダ作業がどんどん積み上がる。本書による改善策は、「IPO」で相手のやりたいことを整理してあげることを勧めている。

 本書が取り上げるムダは、職場の誰にとっても利益のないものばかり。まずはあなたからムダ作業を排除していけば、業務が改善されるばかりか、職場で感謝される存在になれるかもしれない。

文=ルートつつみ
@root223