あたしのこと飼わせてあげる! 昼は美少女、夜はネコの奔放少女とネコ好きアラサー男性の同居生活を描いた『みーちゃんは飼われたい』
PR 更新日:2024/5/31
昼間は人間、夜はネコ。そんな摩訶不思議な存在が「あたしのこと飼わせてあげる!」と押しかけてきたらどうするだろうか? そのうえ人間の姿だと年端もいかない未成年で、周囲の視線を独占するほどの美少女だったら? 『みーちゃんは飼われたい』(高瀬わか/集英社)は、そんないろんな意味で危うい状況にドキドキが止まらない同居生活を描いたマンガだ。
ネコが大好きで、スーパーの副店長として働く主人公・夏梅いおり(なつうめいおり)が目を覚ますと、同じベッドに寝ていたのは全裸の美少女。昨晩、覚えていることといえば、塀のうえを歩いていた黒ネコをかくまってエサをあげ、そのまま泊めてあげたくらい。落ちついてから少女に話を聞くと、なんとその黒ネコこそが少女が変化した姿であり、昼は人間、日が落ちるとネコになってしまう「猫娘」だというのだ。
少女は「一緒にごはんを食べ、一緒に寝て、QOL(クオリティーオブライフ)上げてあげる」と、この部屋に居つく気満々。しかし主人公がいくらネコ好きと言っても、彼女は日のあるうちは人間で未成年の異性だ。せまい部屋に泊めるのはさすがに抵抗がある。なんのかんのと最初はしぶっていたものの、最終的にはネコの姿のかわいさに負け、押し切られる形でふたりの同居生活がはじまっていくのだった。
本作ではとにかく「猫娘」であるみーちゃんが魅力的だ。目力が強く、町を歩けば自然とまわりの視線を集めるほどの美少女。自信にあふれ、快活に笑い、うれしい言葉に照れ、ときにはふくれっ面にもなる。この百面相っぷりを見ているだけでいやされる。くわえて1日の半分はネコなので、ネコとしてのかわいさも惜しげなく披露してくれる。
そのうえ性格もネコっぽさを持ちあわせている。みずからの気が向いたときには積極的に近寄ってきてくれるけれど、基本的には奔放でマイペースで気まま。そんな性格をしながらも主人公のことを気に入ってくれて、端々で愛情を表現してくるのが大変にいじらしい。
一方で、主人公がもともと「ネコが大好き」ということがふたりの関係を素直に進ませてくれない。みーちゃんは人間として主人公を気に入っているけれど、主人公はどちらかというと言葉を交わすこともできなくなったネコの姿のほうが好きなのだ。
アラサーで奥手な男性が、年端もいかない美少女に気後れしてしまうのは当然だ。しかしネコの姿なら抱きついて匂いをかぐのも平気なのだから、みーちゃんがやきもきするのも当然だろう。どちらも対象は同じ自分だからこそ生まれる行き場のない感情に振り回されるところもまた魅力的なのだ。
ふたりの関係の変化を楽しむのがメインストーリーながら、他の猫娘や過保護な家族、恋のライバルらしき存在まで出てきて飽きることがない。ネコが好きな人も、かわいい女の子が好きな人も、恋愛が好きな人も楽しむことができるマンガだ。日々の暮らしにいやしが足りないと思ったとき、「猫娘」を飼うことは難しいかもしれないけれど、そのかわりに『みーちゃんは飼われたい』を読んでいやしを補充してほしい。