「お父さんってラクすぎる〜!」仕事して帰ってきても寝かしつけだけ。もしも妻が夫と役割交替したら?
公開日:2024/5/30
世帯全体の7割を超えている共働き世帯。いまやごく普通のライフスタイルとなりつつある共働き世帯だが、まだその多くは夫のほうが「大黒柱」である。ではその役割を交代してみたらどうなるのか?
『母がしんどい』『キレる私をやめたい』の作者田房永子さんが描く『大黒柱妻の日常 共働きワンオペ妻が、夫と役割交替してみたら?』(田房永子/エムディエヌコーポレーション)は、もとワンオペ妻が大黒柱となったことで見えてきた夫婦・家族の最適解を描く共働き深堀りマンガだ。
「夫が外で稼ぎ、妻は家庭を守る」ことがスタンダードだった時代、家計を支える中心人物を「一家の大黒柱」と呼んだ。現在は共働き世帯が全体の7割を超え、スタンダードはガラリと変わったが、「一家の大黒柱」の多くが夫であることの方が多い。フリーランスのデザイナー丸山ふさ子は、出産後7年間ワンオペで家事・育児を担当してきたが、夫の転職を機に家計の7割以上を担う「大黒柱妻」になることに。好きな仕事をして、子どもたちを寝かしつけだけすればいいなんて、“お父さん”ってラクすぎる〜! と思っていたが…。役割を交代したことで見えてきた大事なこととは?
子どもがいる世帯の母親の多くが、18歳未満の子どもを抱えながら仕事をしている時代。保育園や学童保育に預けながら働いていれば当然お迎えのために仕事もリミットがある。時間に追われながらの仕事。好きなだけ仕事ができる夫を恨めしく思いつつも、ノッてきたところで終えなければいけない仕事。仕事モードから育児モードへの脳チェンジが追いつかないふさ子の姿に、働く母親であれば自分を重ねてしまうはず。
白目を向きながら7年間家事・育児をメインでやってきた反動から、なかなか仕事モードを抜け出せないふさ子は、自分がワンオペ妻だったころ、大黒柱として働く夫に対しイラッとしていた言動を自分もやってしてしまう。
「適切な時間に帰らない。これが重罪!!」当時自分を救ってくれた言葉たちがブーメランのように自分に返ってくる日々。
立場・役割が変わると人は簡単に馴染んでしまう。こうはなりたくない、そんな目で見ていたはずの「昭和のお父さん」や「フラリーマン」になってしまっている自分。女性でも立場が逆転するとそうなってしまうものなのかと思わされる。
気まずさや不安を抱えながらも変わらないふさ子。その姿を見ていると、性別ではなく立場や役割が作り上げているものがいかに大きいかを教えてくれる。「大黒柱妻」になったふさ子は、このまま世に言う“お父さん”になってしまうのだろうか?
実際相手の立場になってみたからこそ見えてくる感情や行動を、内面と向き合い分析して描く田房節で、共感とくすりと笑える魅力たっぷりに描いた本作。役割を交替してみるという決断をし、実行した夫婦の壮大な実験に、自分たち夫婦・家族の最適解を問いたくなる。
どちらのこともわかるハイブリッド夫婦は、どんな夫婦のカタチ・家族のカタチを選ぶのか。気がついた大事なこととは何なのか。手にとって見届けて欲しい。
文=ネゴト/ Ato Hiromi