佐久間宣行氏のブレイクの理由は? 「絶対寝かせない」高校生に向けた講演会の秘話などを詰め込んだ一冊

文芸・カルチャー

公開日:2024/4/9

ラジオパーソナリティ佐久間の話したりない毎日~佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)2022-2023~
ラジオパーソナリティ佐久間の話したりない毎日~佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)2022-2023~』(佐久間宣行/扶桑社)

 佐久間宣行氏がブレイクしている。昨年放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)で、お笑い芸人の東野幸治はその活躍ぶりに対し、「ええ加減にしてほしい(笑)。来年、仕事1本もなくなってもいいくらい。マツコ・デラックスさん以来の衝撃ですよ」と評した。

 元テレビ東京のプロデューサーで、2021年に同局を退社、フリーランスに転身した佐久間氏。独立して3年。会社員時代からの『ゴッドタン』『あちこちオードリー』は引き続き担当し、退社後に立ち上げたYouTubeチャンネル『佐久間宣行のNOBROCK TV』は登録者数170万人超え。ほかにもNetflixの『トークサバイバー!~トークが面白いと生き残れるドラマ~』や、裏方だけでなく、『オールナイトフジコ』(フジテレビ系)ではMCも務める。東野が「ええ加減にしてほしい」とこぼすのも、うなずけるほどの活躍だ。

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 そんな佐久間氏が会社員時代から今まで5年間続けているのが、『佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送)だ。毎週水曜深夜3時になると、彼の「ハッハハハハ!」という豪快な笑い声が聞こえてくる。

ラジオパーソナリティ佐久間の話したりない毎日~佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)2022-2023~』(佐久間宣行/扶桑社)は、番組でのフリートークやゲストとの対談をまとめた番組リスナー向けの本である。話題は佐久間氏の仕事や家族についてなど多岐にわたるが、仕事での経験を豪快に笑い飛ばすトークを活字として読んでみると、彼がなぜここまでブレイクを遂げたのか、その理由が見えてくる。

 佐久間氏は仕事に対して、とにかく手を抜かない。自身でも「けっこう誤解されるんですけど、俺はちゃんと準備しないとダメなタイプなのよ。ハハハハハ。フリースタイルの人間じゃないんだよ(笑)」と明かしているように徹底的に準備をするのだ。

 福島県の母校から、高校生のための講演会を依頼されたときには、徹夜して彼らのためになる講演内容を考え、「絶対寝かせねぇからな」と意気込むし(結果は、始まる前から1人寝ていて、途中で1人寝た)、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)のトーク番組のMCを任されたときには3日間徹夜し、放送をすべて見直して準備。フラフラになりながら収録スタジオへ。本番ではディレクターに「もろもろフリーでやっちゃってくださーい!」と丸投げされ、「マジかよ~、俺は準備の人なんだよ!」と大慌てする。

 もちろん徹夜なんてしない方がいいのだが、多忙すぎて徹夜しないとその時間を作ることができない。余裕がなければ、ない中での準備で済ます選択もあるが、そうはしない。愚直なまでに徹底的に準備をするのだ。

 なぜそこまでできるのか。フリーになってからの仕事への姿勢について佐久間氏は言う。

仕事の幅も広がりましたが、自分のできること、自分の武器を見据えて取り組むことに変わりはないので、勝手が違って戸惑うようなことはほとんどないんです。基本的に自分のやりたいこと、楽しい仕事しかしてないので。無理してやりたくないことをやるような年齢でもないですしね。

「自分のやりたいこと」「楽しいこと」に対して手を抜かず、しっかり準備をして成し遂げる。書いてしまうと、あまりに普通のことだが、実際にこれをできる人は意外と少ない。だって面倒だから。真摯(しんし)に仕事に向き合う姿勢は言わなくても相手に伝わり、またオファーが来る。オファーが増えれば「自分のやりたいこと」「楽しいこと」に仕事を絞ることができる。好循環。

 なんてことをビジネス書なんかで読むと、「わかってるけどさぁ…」とボヤきたくなるが、佐久間氏がアタフタしながらも、実直に仕事に向き合っている様子を読んでいると、素直に「自分も頑張らなくちゃな」と思わされる。

文=堀タツヤ