なんでエンジニアって軽視されがち? 共感必至のお仕事マンガ『え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?』

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公開日:2024/6/11

え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?

 世の中には周りの人に評価されにくい仕事がたくさんある。システムを管理するSEもそんな評価されづらい仕事のひとつだ。だからといって、その仕事や人を軽視していいわけがないのだが、想像力のない人がトップに立つと突然待遇が変わってしまうこともある。

え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?』(下城米 雪 :著、 icchi :イラスト/主婦と生活社)は、主人公が会社を解雇されるシーンから物語がはじまる。X(旧:Twitter)でバズったことで大きな話題となった本作は、2024年1月4日には2巻も発売された。

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 主人公・佐藤愛は、ブラック企業での過酷な労働によるストレスから自分の心を守るため自作のコスプレ衣装を身につけて働く凄腕のSE。社内システムを全てワンオペしていたにもかかわらず、技術者を軽視する社風とコストカットを重視する新社長の意志により解雇されてしまう。

 1ページ目からタイトルを回収していく本作は、SEの仕事だけでなく働く人そのものにもスポットを当てた物語を楽しめるお仕事マンガだ。これからプログラミングをはじめたいと思っている人はもちろんだが、今の仕事に疲れている人にもおすすめしたい。

え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?

 愛が作り上げたのは、開発元も使用言語も用途も違うシステムをひとつのシステムで連携する全業務自動化システム・オルラビシステム。それが使えないと会社が立ちいかないほど重要なシステムにも関わらず、その制作者で管理者の愛は解雇されてしまい、突然無職になってしまう。そんなタイミングで偶然再会したのは、幼馴染みの鈴木健太だった。

 愛は、「コスプレしたまま働いても構わない」という約束で、健太が起業した会社に転職することに。未経験NGがウリの“真のプログラマ塾”の講師になった愛は、圧倒的な“カウンセリング能力”で顧客の悩みを解決していく。

え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?

 無名の会社・ダサい名前・コスプレ講師と、とにかく怪しい塾を中心に繰り広げられる物語は、忙しい日々を送る読者の心も癒やしてくれる。愛の優しさが詰まったエピソードを読み終わるころには、きっと「自分もがんばろう」と思えるのではないだろうか。

 無料体験にやって来た小田原茂は、あまりの怪しさに受講したのは間違えだったのではないかと後悔していた。しかし、あっさりと仕事の悩みを解決してもらえたことで、その考えを変えることに。さらには、雑談の中で話した「仕事が忙しすぎて家族と話す時間も取れていない」というプライベートな悩みにも解決策を提案してもらえるのだ。

え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?

「娘さんと一緒にアニメを見ましょ!」という愛の提案で、寝てばかりだった休みの日には娘との時間を大切にできるようになる。また、「どんなことでもやってもらうのは当たり前なのはダメ」という愛の言葉に共感し、日ごろの感謝を妻に伝えられるようになっていく。家族との時間をすごす小田原の笑顔を見ると、どんなに仕事が忙しくても「仕事は仕事、家族は家族」なのだと改めて実感させられる。

え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?

 こうした心温まる物語の裏側では、オルラビシステムを管理できる人がいなくなり愛の元勤務先・RaWiの業務が回らなくなりかけていた。エンジニアを軽視し道具扱いしてきたツケが回り、愛の同僚は全員転職していたのだ。業務を正しく評価できないうえ人を大切にできない会社で進んで働く人がいるはずもなく、新たに配置されたエンジニアたちも転職を決意する。

え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?

 2巻では、そんなエンジニア軽視の結果、いよいよRaWiの業務が停止する寸前になり、愛を連れ戻そうとしはじめる。一方、そんな思惑を知るはずもない愛は、健太の会社でのびのびと働いていた。そんな2巻では愛の力で、あらゆることに挫折してきたプログラミング未経験者・洙田裕也(なめだゆうや)の人生が大きく変わろうとしていた。

え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?

 愛はとても優秀なSEであるだけでなく、人の心の柔らかいところに寄り添える“愛”ある人間なのだろう。その優しさでさっきまで無気力だった人を動かせる、血の通った技術者なのだ。読めばその温かさできっと笑顔になれるので、真のプログラマ塾にやってくる顧客たちへの愛の優しさを通して癒やされてもらいたい。

文=ネゴト/ 押入れの人

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