猫砂のトイレは被災時にも活用できる?「猫飼い」が猫と安全に危機を乗り切る防災BOOK
公開日:2024/4/12
年明け早々、目を覆いたくなるほど悲惨な震災が起きた今、動物と暮らす人々の中では防災意識が高まっている。予期せぬ災害時、人はどうしてもパニックになってしまうもの。だが、平常時に「うちの子」を守るための防災術を頭に入れていたら、今できることを落ち着いて考えられるかもしれない。
『今日からはじめる ねこ防災――いっしょに乗り越えるための一冊』(かばきみなこ/自由国民社)は、世の猫飼いさんに備えてほしい防災BOOK。本作では、猫と一緒に在宅避難(在宅ひにゃん)をするメリットを解説。もしもの時に想定していた「避難の仕方」を見直すきっかけとなる。
自宅が安全な場合は「在宅ひにゃん」を
震災時はまず、愛猫と一緒に避難所へ向かおう。そう考えている猫飼いさんは多いかもしれないが、残念ながらペットの受け入れが可能な避難所は少ない。
最近、「同伴避難」という言葉をよく見聞きするようになってきたが、この場合はペットと飼い主が別々のエリアに分けられることが多く、動物は雨風をしのげるテント下などの半野外で過ごさなければならないこともあるそう。悲しいことに、温度管理され、衛生的にも安心できる屋内でペットと一緒に過ごせる「同室避難」は、ほぼないのが実情なのだ。
加えて、猫は環境の変化が苦手。飼い主と引き離され、見知らぬ犬猫と避難所生活を送る中で感じるストレスは大きく、体調を崩すこともある。こうした現実を踏まえ、著者は「在宅避難(在宅ひにゃん)」で愛猫の命を守ろうとアドバイス。家屋の倒壊や浸水などの恐れがなく、自宅が安全な場合は愛猫と一緒にステイホームしようと訴えている。
在宅避難では、十分な支援が受けられないのではないか。そう不安になる方もいるだろうが、災害対策基本法では自宅に滞在し続けている避難所外避難者にも生活環境の整備に必要な措置を講ずるよう努めなければならない、と定められている。そのため、在宅避難をしていても、物資や医療サービスなどの必要な支援は受けられるのだ。
あえて家にとどまる避難法もある。そう知ると、より現実的な命の守り方が見えてくることだろう。
身近なものを防災グッズとして役立てる!
支援が受けられるとはいえ、在宅避難で災害を乗り切るには、事前準備をしっかりしておくことが大切。そう分かってはいても、何を備えればいいのか悩み、なかなか防災の準備が進まないこともあるものだ。
そんな方に著者は、防災と日常を切り離して考えないように、とアドバイス。日常の中で使っているものを防災用品として役立てることを推奨している。
例えば、災害時用のペットフードは特別な非常食を用意せず、普段食べているものを多めに買い、備蓄。使った分だけ補充するというサイクルを作る。こうすれば、「普段使わないものへお金をかけるなんて…」と防災の準備を躊躇うこともなくなり、特別なグッズを用意する手間も省ける。さらに災害時には、いつもと違うフードを愛猫が食べてくれるだろうかとドキドキしなくてもよくなるのだ。
また、著者は事前準備の際には、人と猫が災害時に共同で使えるものを見つけてほしいとも語っている。具体的な例のひとつが、災害時に人間の非常用トイレとして猫砂を使うこと。実は人間の非常用トイレと鉱物系の猫砂には、水分を吸収して固まるという共通点がある。普段から多めに買い置きすることが多い猫砂は、防災用の備蓄としてもぴったり。扱い慣れており、災害時でも慌てることなく使用や処理ができるというメリットもある。
災害は、日常の延長線上にある。自分と愛猫の命を守るには、身近なものの使い道を多角的に考え、備えていくことも大切なのだ。
なお、本書では水道、電気、ガスが止まった時の具体的な対処法も紹介。停電時に役立つ「即席冷蔵庫の作り方」や我が家に必要な飲料水を導き出せる計算式など、頭に入れておきたい知識が満載。
また、日常の中で防災食の食べ比べをイベント化するなど、人が災害時に感じるストレスをできる限り軽減する防災術も学べるなど、人と猫、両方の心に寄り添う実用書となっている。
“ねこは防災準備をすることはできません。あなたのねこが頼れるのはあなただけ。”(引用/P4)
本書に綴られた、この言葉の重みを噛みしめながら、小さな命の守りを考えていこう。
文=古川諭香