チンパンジーの群れにはインフルエンサーが存在する!? 猿、アリ、ネズミなどの動物の行動が意外と人間に似ていると驚く1冊

文芸・カルチャー

公開日:2024/4/10

ウォード博士の驚異の「動物行動学入門」
ウォード博士の驚異の「動物行動学入門」 動物のひみつ――争い・裏切り・協力・繁栄の謎を追う』(ダイヤモンド社)

 人間と動物は何が違う? と聞かれたら、あなたはどう答えるでしょうか。「見た目が違う」「遺伝子やDNAの構造が違う」「とにかく生き物として違う」などなど、様々な答えが出てきそうです。しかし、動物たちをよく観察してみると、どうやら人間よりも人間らしい部分があるようで……!?

 そんなまさか、な真実を書いたのが『ウォード博士の驚異の「動物行動学入門」 動物のひみつ――争い・裏切り・協力・繁栄の謎を追う』(ダイヤモンド社)。著者のウォード博士は、シドニー大学の動物行動学の教授で、アフリカから南極まで世界中を旅しながら、動物の生態を研究しています。突き抜けた動物愛を持つウォード博士の視点は、まさに独特。目次を見ると「シロアリは女王のために自爆する」「ゴリラは自分の罪をネコになすりつける」「クジラは恨みを忘れない」など、どれも興味深いものばかりです。

 面白すぎる動物の生態を、少しだけご紹介したいと思います。

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あなたのそばにネズミはいる

 繁華街をうごめく不気味なドブネズミ。できるだけお目にかかりたくない動物ですが、今回この本によってネズミに関する真実が明らかになりました。それがこちらです。

「世界中どこでも、人間のいるところには、ほぼ間違いなくネズミがいる」
「『ネズミから6フィート(約183センチメートル)以上、離れられる人はいない』と言う人さえいる」

 なんと、今この瞬間にも、我々のすぐそばにネズミがいるというのです。そもそも、ネズミの生息地を世界中に広げたのは、我々人間だとウォード博士は言います。大昔、人間たちが、様々な土地へと拡散して文化を広げるのと一緒に、ネズミも住まいを拡大していったのだとか……。

 思わずゾッとする真実ですが、ウォード博士いわくネズミは「とても社会的な生き物」。ネズミの行動を研究することは、人間をより深く理解するのに役立つとまで言います。というのも、ネズミはああ見えてとても仲間思い。ある実験では、湿った居心地の悪い空間にいる仲間を、わざわざ扉を開けて自分の棲家に入れてあげる行動が確認されています。また、ネズミは罠にかかった仲間を、ほぼ間違いなく助けようとするんだとか。見た目は不気味ですが、じつはとても優しいネズミ。ちょっとは印象が変わった……かも?

仲間が死ぬと、お葬式をするゾウたち

 仲間想いの動物といえば、有名なのがゾウ。数十年ぶりに会う仲間でも声とにおいで判別し、再会を喜ぶのだそうです。

 家族の死に対しても、ゾウは深い悲しみを見せるといいます。群れのリーダーが死ぬと、仲間のゾウたちは周りを数時間にわたって取り囲み、やがて、死んだゾウの体に葉や土を載せるのです。その様子はまるで葬儀をしているかのよう。動物の心の内はわかりませんが、ウォード博士いわく、ゾウは生と死を理解している可能性があるとか。どうりでゾウさんは、優しい目をしているわけですね。

憧れのチンパンジーを真似する、チンパンジー

 そして、より人間に近い行動をする動物の代表として、チンパンジーを紹介。面白いのは、チンパンジーの中にも、人間社会で言うインフルエンサー的存在がいるのだそうです。ウォード博士いわく、群れの中で低位のチンパンジーは、高位のチンパンジーに憧れて、行動を真似することがあるんだそう。まさにインフルエンサー。人間と同じように、「あの人(チンパンジー)みたいになりたいな」という気持ちが、チンパンジーにもあると思うと、やっぱり似た生物なんだなと、思えてきますね。

 厚さ約4センチで、読み応えたっぷりの一冊。動物の豆知識を手に入れて、春の歓迎会で披露してみてはどうでしょうか。

文=中村未来