細田佳央太主演でドラマ化『七夕の国』。何にでも「穴を開ける」ことができる超能力を得た大学生が世界を救う…!?

マンガ

公開日:2024/4/13

七夕の国"
七夕の国』(岩明均/小学館)

 もし超能力を手にできるとしたら、どんな能力がいいだろう。空を飛ぶ、瞬間移動、どれだけ食べても太らない……など、とにかく自分にとって便利なら何でもいい。逆に何の役にも立たなかったり、他者に悪用されたりする危険な超能力はごめんだ。『七夕の国』(岩明均/小学館)で描かれる「穴をあける」超能力は、特に御免被りたい。一見、便利で悪用もされない超能力に感じる。しかし、穴をあけられる対象はモノだけにとどまらない点が本書の物語を壮大に、かつ深刻化させる。

 主人公は大学4年生の南丸洋二。彼は「新技能開拓研究会」というサークルの団長で、念を込めることでプラスチックやケント紙に数ミリの小さい穴をあける超能力が使える。ただこの力、キリさえあれば解決でき、就職活動にも役に立つはずがない。南丸も活用できるとは思っていなかった。

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 そんなある日、彼は丸神ゼミの丸神正美教授から呼び出される。在学中、まったく交流も接点もない人物からの呼び出しに疑問を抱くが、とりあえず顔を出してみることに。しかし南丸が訪れたときには丸神教授は消息不明。丸神ゼミに所属する講師・江見やゼミ生の多賀谷も彼の居場所を探しているのだという。教授の無事を知る唯一の手掛かりは、南丸との共通点。どうやら2人の先祖は共通しているらしく、教授はそのルーツと、黒嶺郡丸川町にある「丸神の里」と呼ばれる地を調べようと出かけた後、行方不明になってしまったというところまでは把握しているとのこと。南丸も、できることがあればと捜索に協力する。この出来事が彼の「穴をあける」という超能力と深く関係していることも知らずに。また、時を同じくして「丸神の里」で殺人事件が発生。警察の調べによると、殺された男性の頭部は鋭い刃物で円状にえぐられた傷があり、現場の窓ガラスには大きな丸い穴があいていたとのこと……。教授が消息不明になったことと関係があるのだろうか。

 いま紹介したあらすじは1巻の冒頭に過ぎないが、すでに伏線がちりばめられている。まず注目すべきは「穴をあける」という超能力について。上述したように、穴をあける対象に制限などがないのであれば、丸神の里で起こった殺人事件は、南丸と同じだが、より広範囲の穴をあけられる誰かの仕業だと推測できる。ただ誰もが持っている超能力ではないがゆえに、手口としては人物が絞られやすい。まるで正体がバレることに恐怖を感じていないかのようだ。一体誰が何の目的で事件を引き起こしたのだろうか……。

 また、南丸を呼び出しておきながら、行方不明になった丸神教授も気になる。そもそもなぜ南丸を呼び出したのか、彼に何を伝えるつもりだったのか。きっと2巻以降で明らかになるのだろう。

 本作は全4巻と短いながらも、読みすすめるほど謎が深まり、面白くなっていく。また、細田佳央太主演でドラマ化も決定しており、24年7月からディズニープラスで独占配信予定だ。ここまで謎と面白さがギュッと詰まった作品は稀有だろう。「穴をあける」だけの不便な超能力が、どのように事態を深刻化させていくのか。ぜひその目で確かめていただきたい。

文=トヤカン