Xフォロワー30万人超え、駐日ジョージア大使の初エッセイ。松屋の復刻メニュー総選挙で「シュクメルリ鍋」1位に貢献したあの人

文芸・カルチャー

公開日:2024/4/16

ジョージア大使のつぶや記"
ジョージア大使のつぶや記』(ティムラズ・レジャバ/教育評論社)

 シュクメルリとは、にんにくたっぷりで鶏肉の入ったミルクベースのジョージア料理だ。2023年夏、松屋で開催された第3回復刻メニュー総選挙で第1位となった「シュクメルリ鍋定食」。2024年に復刻販売され、X(旧Twitter)で話題となった。ジョージア大使が総選挙でも大いにPRをし、販売されれば食べに行き注目を浴び、松屋にシュクメルリを食べに行きたい人や食べた人で溢れた。

ジョージア大使のつぶや記』(ティムラズ・レジャバ/教育評論社)は、ジョージアのティムラズ・レジャバ大使の仕事や日本との関わりについて書かれたエッセイ本だ。全7章で構成され、内容は、ジョージアから日本に移り住み大学に通い就職するという生い立ちから、ジョージア大使になるまで、ジョージアについて、文学やスポーツについてなど多岐にわたる。

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日本人以上に日本語が上手い!Xを使った広報手腕に日本人も惹き込まれる

 大使は4歳頃から広島に移り住み、大学を卒業するまでの多くの時間を日本で過ごしていたため、日本語が堪能だ。さらに広島弁を操るカープファン。だが、彼のルーツはジョージアにあり、日本の文化に触れながらも外国人として育ってきた。思春期にアイデンティティがゆらいだようだが、高校時代にジョージアへ一時帰国し、ジョージアを身をもって知りアイデンティティが確立されることとなる。

 今ではSNS活動で話題の人となった。彼は大使の活動としてジョージアをPRしている。「本命は夏目漱石、芥川龍之介」とつぶやくほどの無類の文学好きという大使は、巧みな言葉の使い方で日本人の心にすっと入り込んでくる。いつもXを見ていて思ったのは、とても日本語がお上手な方だということ。ライターをしている私が嫉妬を覚えるほどの言葉の使い方だ。

 多くのバズりを生みだす大使だが、初バズりはジョージア大統領が来日して、天皇陛下の「即位礼正殿の儀」に出席した時。民族衣装のチョハを着た。報道され、「ジェダイの騎士っぽくてすごくカッコイイ衣装だけど、どこの国の方だろう」というXへの書き込みに「ジョージアに一票」と返信をした。普通なら、「うちの国です」と伝えればいいだけなのに、“一票”という言葉選びのうまさ。1万いいねを超えるバズりとなった。そして、それが自信となりつぶやきがどんどんなされ大使の「武器となった」というわけだ。

 人との縁を大切にする人柄で、Xでの文章はいつも丁寧で人へのリスペクトを忘れはしない。「何より大事なのは人を傷つけないことと、決めている」としながら、親しみのあるつぶやきでジョージアの魅力を発信し続けている。

 ジョージア大使のXをフォローしている人にとっては懐かしの出来事を、そんなつぶやきがあったなと思い返せる。フォローしていない人でもジョージアという国と文化の一端を知り、大使の仕事を垣間見られる本。カラー写真も差し込まれ、様子がわかりやすい。

 大使をとりまく事柄のあれやこれやを知りたいなら、是非本書を手にとってほしい。日本との関わりの深さ、ジョージアを知ってほしいという強い想いが伝わってくる。さて、今日も大使のつぶやきは要チェックだ。ガウマルジョス!

文=山上乃々