「2024年本屋大賞」決定!! 大賞は宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』 全ノミネート作の順位を発表!
更新日:2024/4/10
全国の書店員が選ぶ、いま一番売りたい本を決める「本屋大賞2024」の受賞作が4月10日決定した。
21回目となる今回のノミネート作品10作の中から大賞に選ばれたのは、宮島未奈氏の『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)!
2024年本屋大賞受賞作 『成瀬は天下を取りにいく』(宮島未奈/新潮社)
【あらすじ】
同作は、第20回「女による女のためのR-18文学賞」大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞した短編小説「ありがとう西武大津店」を含む宮島未奈のデビュー作だ。
舞台は滋賀県。主人公の成瀬あかりは、いつも唐突におかしな挑戦を始める。あるときは坊主にして髪の伸びる長さを実験したり、またあるときは幼馴染を巻き込んでM-1に挑戦したりと、成瀬ワールド全開の爆走物語が繰り広げられていく。
一体、成瀬のバイタリティはどこからくるのだろうか…。同作を読めば、いつの間にか成瀬を身近に感じ、希望と勇気がもらえるだろう。ちなみに2024年1月には、同じく成瀬を主人公にした新作『成瀬は信じた道をいく』が発売。興味のある人はこちらもチェックしてみてほしい。
気になる残り9つのノミネート作品は?
2位『水車小屋のネネ』(津村記久子/毎日新聞出版)
【あらすじ】
『水車小屋のネネ』は、2023年3月に発売された人気作家・津村記久子の長編小説。毎日新聞夕刊で話題となった連載小説を書籍化したもので、第59回「谷崎潤一郎賞」に輝いた際には、名だたる選考委員たちから賛辞を受けたそう。
主人公は、18歳の理佐と10歳年下の妹・律。とある理由から親元を離れて姉妹で生きることを決意し、やがてたどり着いた町でしゃべる鳥・ネネや、ネネのいる水車小屋で番人として働き始める青年・聡など、さまざまな人たちと出会うことになる。
ネネに見守られながら助け合い、支え合う人々の40年が紡ぎ出されており、淡々と繰り返される何気ない姉妹の暮らしが読者の心を静かに震わせていく。
小説界の巨匠・筒井康隆すら唸らせたという、希望と再生の物語の結末とは――。
3位『存在のすべてを』(塩田武士/朝日新聞出版)
【あらすじ】
映画化もされた『罪の声』や『騙し絵の牙』でお馴染みの作家・塩田武士。そんな彼の新作『存在のすべてを』は、月刊『本の雑誌』が選ぶ「2023年度ベスト10」の第1位にも選ばれている。多くの書店員から「彼の最高傑作」といった評価を集め、“新たな代表作”との呼び声高い一冊だ。
平成3年に発生した誘拐事件から30年。これは別々の場所で2人の児童が同時に誘拐されるという前代未聞の事件であった。当時警察担当だった新聞記者の門田は、旧知の刑事の死をきっかけに被害男児の「今」を知る。被害当時4歳だった亮は、3年後に彼の両親ではなく、祖父母のもとに帰ってきたのだった――。
年間20万件以上の相談がある児童虐待をテーマに取り上げつつ、上質なミステリ小説として読み応えたっぷりに仕上げている『存在のすべてを』。昭和最大の未解決事件を描いた傑作長編『罪の声』との類似点も多いため、読み比べをしてみるのも一興だろう。
4位『スピノザの診察室』(夏川草介/水鈴社)
【あらすじ】
主人公は京都の町で働く内科医の雄町哲郎。彼が30代後半に差し掛かる時、最愛の妹を若くして亡くしてしまう。一人残された甥の龍之介と暮らすために哲郎は京都にやってきたのだ。彼は実は、かつて大学病院で数々の難しい手術を成功させた凄腕医師だった――。
映画化もされた、累計340万部突破のベストセラーシリーズ『神様のカルテ』の著者である現役医師・夏川草介が描く医療小説です。この物語には、医学教授たちの利権の絡む腹黒い権力闘争もなければ、患者が息を吹き返すように心臓マッサージをしながら「帰ってこい!」と絶叫するシーンもない。現役医師が命と向き合い続けて辿り着いた「人の幸せ」、そして困難の乗り越え方が描かれています。
本作では、京都を巡りたくなるくらい美味しそうな京都銘菓がたびたび登場します。命と向き合う緊張感の中で登場する甘い小休憩もまた魅力的なのかもしれません。
5位『レーエンデ国物語』(多崎礼/講談社)
【あらすじ】
『アルスラーン戦記』の田中芳樹、『霧のむこうのふしぎな町』の柏葉幸子、『夜市』の恒川光太郎、『ミミズクと夜の王』の紅玉いづき、『最果てのパラディン』の柳野かなた…。『レーエンデ国物語』は、錚々たる作家から称賛を集める超本格ファンタジーだ。
自由を求めて旅に出た父・ヘクトルとその娘・ユリアが行き着いたのは、空を舞う泡虫、乳白色の天へ伸びる古代樹、湖に建つ孤島城など、美しい情景に包まれた「レーエンデ」という地だった。しかしレーエンデには、一度かかると10年生きられないという呪い「銀呪病」がある。
ヘクトルとユリア、そしてヘクトルを敬愛する青年弓兵・トリスタンは、銀呪病にまつわる伝承によって運命に翻弄されていく――。何を求め、そのために何を選び、何を捨てられるのか…。その結末を、ぜひとも自身の目で確かめてみてほしい。
6位『黄色い家』(川上未映子/中央公論新社)
【あらすじ】
同作は、芥川賞作家・川上未映子が2023年2月に発表したクライム・サスペンス小説。“黄色い家”に集う少女たちの危険な共同生活を描いた作品で、「王様のブランチBOOK大賞2023」や「第75回 読売文学賞(小説賞)」といった数々の賞を総なめにしてきた。
物語は2020年春、主人公の伊藤花が“あるネット記事”を目にしたところから始まる。そこにはかつて共に暮らしていた吉川黄美が傷害と脅迫、逮捕監禁の罪で起訴されたというニュースが綴られており、花はふと20年以上前の濃密な数年間を回想していく。
17歳で親元を離れ、社会の仕組みからはじき出された花は、ひょんなことから黄美とスナック「れもん」を経営。そこで働く女の子たちと一緒に暮らし始めるのだが、「れもん」が火事になり、収入が途絶えたことで彼女らの運命が狂い出す。
人はなぜ金に狂い、罪を犯すのか――。そのことを問いかけながら、圧倒的なスピード感と緻密な筆致で、孤独な少女たちの闘いがあぶり出されていく。
7位『リカバリー・カバヒコ』(青山美智子/光文社)
【あらすじ】
一杯のココアから始まる12編の連作短編集『木曜日にはココアを』で心救われる話を描いた青山美智子。彼女の新作短編集『リカバリー・カバヒコ』は、公園に設置されたカバのアニマルライドを巡る、誰もが抱く小さな痛みにやさしく寄り添うお話。主人公たちは変わっていきますが、どこかで繋がっている感覚が、まさに青山ワールドといった読後感だ。
物語の軸になるのは、日の出公園に古くから設置されているカバのアニマルライド。表紙にも描かれているように、どこか不安そうで同時にどこかひょうきんそうな目と、経年劣化で剥げてしまった体が特徴。そのカバ、なんと自分の治したい部分と同じ部分を触ると回復するという都市伝説があるのだ。人々はこう呼ぶ「リカバリー・カバヒコ」と。近くの5階建て分譲マンション「アドヴァンス・ヒル」に住む人々は、それぞれの悩みをカバヒコに打ち明けていくのだが――。
8位『星を編む』(凪良ゆう/講談社)
【あらすじ】
瀬戸内の島に育った高校生の暁海と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂。人気作家・凪良ゆうの代表作『汝、星のごとく』では、ともに心に孤独と欠落を抱えた二人の“ひとつではない愛”の物語が紡がれていく。
『星を編む』は、『汝、星のごとく』で脇役だった人物たちの過去や、その後の物語にスポットが当てられた続編。ここには櫂と暁海を支える教師・北原が秘めた過去を描いた「春に翔ぶ」、漫画原作者・作家となった櫂を担当した編集者二人の物語「星を編む」、そして運命の恋を経験した暁海のその後の人生を描く「波を渡る」の3篇が記されている。
運命の恋と永遠の別れのあとも、人生は当たり前に続いていく――。小説ではなかなか描かれない“リアル”を丁寧に綴った『星を編む』。前作『汝、星のごとく』を読んでいない人でも楽しめる一冊だ。
9位『放課後ミステリクラブ 1金魚の泳ぐプール事件』(知念実希人:作、Gurin.:絵/ライツ社)
【あらすじ】
著者の知念実希人は、『ムゲンのi』『硝子の塔の殺人』などを手掛けた人気作家。現役の医師でもある強みを生かした医療ミステリのトップランナーともいわれており、そんな彼が「読書は楽しい。そのことを子どもに知ってほしい」との思いから、『放課後ミステリクラブ』シリーズを書き下ろしたのだという。
小学校を舞台に4年生の名探偵3人組が事件を解決していく『放課後ミステリクラブ』。依頼人は先生、学校で起こる不思議な事件…。殺人事件はない、しかしトリックは本格的だ。読者である子どもたちが人生初の“伏線回収”を体感できるよう、作中にはあらゆる場所に「?」が仕掛けられている。
確かに子ども向けではあるものの、著者は大人のミステリと全く同じ手法で同作を書いたそう。ぜひ親子で楽しんでほしい。
10位『君が手にするはずだった黄金について』(小川哲/新潮社)
【あらすじ】
直木賞作家・小川哲が自身を主人公に据え、成功と承認を渇望する人々の虚実を描いた私小説『君が手にするはずだった黄金について』。物語は、大学院生の僕(=小川哲)が就活のエントリーシートに書かれた「あなたの人生を円グラフで表現してください」という問いを熟慮黙考し、その結果「この問いに答えはなく、そもそも問いが間違っている」という結論に達するところから始まっていく。
ちなみにこの「円グラフ」の問いを出していた会社は、同作を出版した「新潮社」である。加えて主人公が口にする作家や小説の名前も実在するものばかり。一見「これはリアルの物語なのだ」と思わされるような始まりなのだが、読み進めていくと「これは創作なのだ」と暗示している部分も見受けられる。
このようにリアルと嘘が入り交じり、油断するとどこまでが真実で、どこからが創作なのかわからなくなるような構造が見どころの一つ。やがて主人公が遭遇する怪しげな人物たちも、全くの偽物なのか否か……。彼らに翻弄されていく主人公のように、読者もまた真実と謎が詰まった同作に最初から最後まで翻弄されてしまうはず。
「本屋大賞」に選ばれた作品は、全国の書店で実際に働く書店員の方々が「この本を読んでほしい!」と投票したおすすめの一冊。あなたはどの本から読んでみますか?
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