「ガンダム」×「人狼ゲーム」という異色のミステリーコミック! 宇宙戦艦という密室で行われた殺人事件の容疑者は誰か?
公開日:2024/4/11
「ガンダム」×「人狼ゲーム」×「ミステリー」という3つの要素を融合させた異色のガンダム漫画『機動戦士ガンダム ウェアヴォルフ』(伊藤亰:漫画、重信康(チーム・バレルロール):シナリオ、小太刀右京(チーム・バレルロール):アドバイザー、矢立肇・富野由悠季:原案/KADOKAWA)の第2巻が2024年3月26日に発売。宇宙戦艦を舞台にした密室殺人ミステリーは、2月に発売された第1巻「捜査編」に続き、「解決編」へと突入する。
物語の舞台は、アニメ『機動戦士Zガンダム』で描かれた「グリプス戦役」真っ直中の宇宙世紀0087年。連邦軍特殊部隊「ティターンズ」、反連邦組織「エゥーゴ」、ジオン公国残党「アクシズ」による三つ巴の争いが複雑な様相を見せる中、月の裏側の暗礁宙域で極秘任務に就いていたティターンズ特務部隊の母艦「ヘカーテ」は、エゥーゴのMS(モビルスーツ)隊からの奇襲で甚大な被害を受けた。さらには月の軌道から外れて宇宙を漂流することになり、そこでアクシズのMS隊からも攻撃されたヘカーテは再び絶体絶命の危機に陥る。そのとき、エースパイロットのラセッド中尉が黒いティターンズカラーで塗り上げられたガンダムタイプの試作実験機で出撃。その漆黒の機体から放たれる禍々しくも圧倒的な力で、アクシズの部隊を退けた。しかし、隊を救った英雄は、帰艦後もコクピットの中から出てこない。怪訝に思ったリュコス艦長の命令でハッチを強制開放すると、コクピットのシートに座っていたのは、胸を銃弾で撃ち抜かれたラセッド中尉の他殺死体だった。
漂流する宇宙戦艦という閉鎖空間で行われた密室殺人。艦内で起きた事件の捜査を担当するはずの保安部員は先の戦いで全員死亡しており、異常な状況で疑心暗鬼になる乗組員も出てくる。そこでリュコス艦長は、12時間後に全乗組員による投票を行い「最も疑わしき者」を決めて軟禁拘束すると通達。だが、その真の狙いは、適当な誰かを犯人として生贄にすることで、艦内の治安を回復させることだった。容疑者の有力候補に挙げられたのは、ラセッド中尉からイジメを受けていた整備士のマカミ軍曹と、同様にラセッド中尉からセクハラを受け、彼を恨んでいたことが周りに知られている補欠パイロットのレト少尉。ふたりは自分たちの疑いを晴らし、真の犯人を見つけるため協力して前代未聞の宇宙戦艦密室殺人事件の捜査を開始する。
ガンダム総合雑誌『月刊ガンダムエース』(KADOKAWA)の連載作品で、ガンダム世界観のミステリーという特殊な装いはしているが、物語の芯にあるのは、クラシックな王道ミステリー。さらに、12時間後に容疑者が吊るし上げられる人狼ゲーム的な状況がサスペンス感も生み出している。
「解決編」に突入する第2巻でまず描かれるのは、捜査の基本である現場検証。レト少尉とマカミ軍曹は、殺人事件の現場でもある試作実験機のコクピットに乗り込み宇宙空間に出撃し、事件の状況を再現しようとする。ところが、再びアクシズのMS部隊に攻撃されて……。そして、物語の冒頭ではヒーロー的に描かれていたエースパイロットの”クソ野郎”な本性も次々と明らかになり……。ミステリーを読み慣れていないガンダムファンと、ガンダムに詳しくないミステリーファン、どちらのタイプの人でも乗組員の中に潜む「人狼」の正体が気になりすぎて一気に読み進めてしまうはず。当然、ミステリーもガンダムも大好きな人ならば、3倍楽しめるのは間違いない。
文=丸本大輔