裏レート麻雀で人身売買された少女を引き取った高校生? アニメ化決定の『凍牌』がイリーガルすぎる

マンガ

公開日:2024/4/26

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凍牌(とうはい)-裏レート麻雀闘牌録-』(志名坂高次/秋田書店)

 きっと多くの学生が、一度は麻雀を体験したことがあるのではないだろうか。僕はそのうちのひとりで、大学の先輩に連れられて一晩中麻雀を教えてもらっていた。大学卒業とともに他の趣味ができて以降、さっぱり麻雀をする機会も少なくなってしまったが、素人ながら相手がリーチをかけているときに牌を打つときのドキドキ感は、いまでも忘れられない。もしそれに金銭の駆け引きがあったとしたら(日本では違法だが)……ドキドキどころではないだろう。『凍牌(とうはい)-裏レート麻雀闘牌録-』(志名坂高次/秋田書店)は、そんな裏レート麻雀が行なわれる世界が舞台のマンガだ。2024年にアニメ化が決定している。

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 主人公は高校生のケイ。金の欲が蠢くと同時に負け続けるプレイヤーの心をむしばんでいく裏レートの麻雀界で、彼は「氷のK」と呼ばれている。理由はその打ち方にある。いくら相手が戦局で有利な場面でも、顔色一つ変えないのが彼の特徴。むしろその場面をあえて作り、相手に心のすきを作らせようとする節さえ感じる。1巻の第1話でそれは証明されており、ガン牌(牌につく傷や汚れで、伏せたままでも何の牌か判別できるイカサマの一種のこと)によって3連勝し、トータル50万円ほど勝利中のプレイヤーに「ここからは2人で握りませんか?金額は100万で」と提案。札束を雀卓に載せる。そもそも高校生が大金を持っていることでさえすごいのだが……もし万が一でも負ければ大損だ。しかも相手はイカサマプレイヤー。頭がどうかしていると言われても不思議ではない。イカサマプレイヤーも負けるはずがないと高を括り、承諾する。

 しかし、そんな危ない局面だからこそ、ケイの力は発揮されるのだろう。彼の強さは圧倒的な記憶力にあった。たった半荘(親が2巡するまでの勝負のこと)4回で34種136枚の牌の印や傷を覚えてしまったのだ。「目には目を歯には歯を」とは、まさにこのこと。求める牌がどのタイミングで出るのかわかってしまえば、あとは早く、かつ高い点数でアガれる役を考えればいいだけ。もちろんリアルな世界ではこんな芸当はできないが、ケイはそれをいとも簡単にやりのけてしまう。彼の冷徹な戦い方に、手の震えが徐々に大きくなっていくイカサマプレイヤー。「どうしたのおじさん、震えてるよ?」と煽り、「凍死」と告げて局を終わらせる姿は、とても恐ろしく感じてしまった。

 そんな彼だが、家でひとりの少女を養っているという意外な一面もある。彼女はアミナという名で、人身売買により裏世界で密輸され戸籍・国籍がない。ケイの裏レート麻雀の勝利とともに引き取られ、現在は彼の家で入国管理局にバレないようひっそりと暮らしている。高校生であるケイがなぜアミナを引き取ったのか、それは1巻では明らかにされない。しかし今後、アミナの“あること”をきっかけに、ケイが大きな決断をすることになる。それほど本作では大変重要な人物でもあり、続編となる『凍牌 コールドガール』(志名坂高次/秋田書店)にも登場するため、ぜひ覚えておいてほしい。

 本作で繰り広げられる麻雀は、日本では違法であることは念を押しておく。決して真似をしてはいけない。ケイは、そんな違法な麻雀に挑戦し続けることで何を成し遂げようとしているのか。高校生でありながら危ない橋を渡り続ける理由は何か。麻雀の戦局を楽しむと同時にこれらの謎にも注目していただきたい。

文=トヤカン