民族衣装を知れば国が分かる!歴史や文化も学べるイラストブック『心ときめく世界の民族衣装』
PR 公開日:2024/5/3
国によってデザインに様々な違いや特徴が見られる民族衣装には、人の心を引き付けるものがある。『心ときめく世界の民族衣装』(双森文/産業編集センター)は気候風土や文化的背景と共に、世界の民族衣装の奥深さを楽しめるイラストブックだ。
本作ではヨーロッパやアジア、アフリカなど、世界の民族衣装47種類をオールカラーで紹介。目で楽しみながら、資料集として国や地域の歴史が学べる作りになっている。
その土地での暮らしに適した作りになっている民族衣装には華やかなデザインのものも多く、見る側の心をワクワクさせる。
例えばハンガリー・カロチャ地方の民族衣装は、花や葉が浮き出るように見える「カロチャ刺繍」が施されており個性的だ。
特徴的なカロチャ刺繍は、19世紀に始められたそう。当初は白地に白い刺繍で単調な模様を表していたが、産業革命の波に乗るうちに20世紀に入り、現在のようなカラフルで立体的な刺繍になったという。
また、豪華な刺繍で華やかに彩られたトルコの民族衣装も味わい深い。
イスラム文化の影響を受けたこちらの婚礼衣装は、鮮やかな赤色と伝統的なアラベスク模様が美しい。ユニークな頭飾りは、他のアジア諸国でも似たような形状のものが見られるが細部はそれぞれ異なるようだ。
このように、民族衣装は国や地域ならではの飾りで彩られており、同じものがひとつとしてないからこそ、知る楽しさがある。
個人的に着てみたいと思ったのが、ペルー共和国のカラフルな民族衣装。羊毛の手織物でできたギャザースカート「ポジェラ」はかわいさ満点。機能的にも優れており、裾が大きく開くため、アンデス山脈の高地の住むケチュア族の暮らしに適しているそう。
スカートの内側は布が何重にも重ねられているため、高地の鋭い日光や冷たい雨にも耐えられるのだとか。かわいさの裏に、こうした機能的な工夫が隠されているのが民族衣装のすごさだ。
なお、民族衣装には苦しい思いをした暗黒時代や当時を生きる人々の強い思いが隠されていることもあるよう。その一例が、チェコ共和国の民族衣装。綿密な花模様の刺繍が施された「飾り襟」や頭全体を覆うボンネット型の「ヘッドドレス」、ふわっとしたバルーンスリーブのブラウスなど、刺繍とレースできめ細かい装飾がなされているのが特徴である。
こうした民族衣装となったのには、チェコ共和国が経験した暗黒時代が大きく関係しているそう。14世紀、当地ではボヘミア王が神聖ローマ帝国の皇帝に即位。帝国の首都・プラハはヨーロッパ文化の中心地として栄えた。
ところが、15世紀にオーストリアのハプスブルク家によって統治下に置かれたことから、20世紀初頭まで暗黒の時代を過ごすこととなる。
華やかな民族衣装は19世紀頃、農民の間で確立されたもの。長きにわたる逆境の中でも楽しみを見つけ、民族意識を根付かせていこうという想いが込められていたのだという。
こうした歴史的背景や込められた想いを知ると、これまでとは違った角度からも民族衣装を知りたい、学びたいと思えるようにもなるはず。民族衣装に触れることは、その国が歩んできた「これまで」を知ることに繋がるのだ。
服飾デザインや作画資料として活用もできるこのイラストブック、ぜひ自分なりの楽しみ方を見出してみてほしい。
文=古川諭香