井口裕香 『ちいかわ』モモンガは、役が決まる前から勝手に声をあてて読んでいた【私の愛読書】
更新日:2024/4/26
さまざまなジャンルで活躍する著名人たちに、お気に入りの一冊をご紹介いただく連載「私の愛読書」。今回ご登場いただくのは、セカンド写真集「MORE MORE MORE」を発売した声優・井口裕香さん。
読書が仕事に直結する「声優」という職業ならではの、マンガ作品に対する愛情と向き合いかたを聞いた。
愛読書は『ちいかわ』!
――井口さんの愛読書を教えてください。
井口:ナガノ先生の『ちいかわ』です。アニメに出演していますが、お仕事で関わらせていただくことになる前、連載が始まってすぐのころからTwitter(現:X)で読んでいて、大好きだったんです。
――作品のどんなところに惹かれたのでしょう?
井口:最初は単純に「絵がかわいいな〜」と思って読み始めたんですけど、だんだんとストーリーに結構ダークな要素があって、かわいいだけじゃない魅力があるところに惹かれていきました。中でも、結果的に演じさせていただくことになったモモンガは、登場したときから大好きなキャラクターでしたね。勝手にいちファンとして、読みながら声を当てて楽しんでいたくらいです。
――普段お手に取られる本はマンガが多いのでしょうか。
井口:そうですね。小説は最近、なかなか読めていなくて。マンガは子どもの頃からずっと好きで、読み続けています。
――アニメ化されるタイトルも多いですから、アニメのお仕事をされていると、作品との距離感は難しくないですか?
井口:おっしゃるとおりです。好きな作品がアニメになっても、当然、出演できるとはかぎりません。それもあって、情熱的にハマって読むというよりは、好きな作品であっても割と客観的に、ハマりすぎないように楽しむタイプです。でも『ちいかわ』は例外で、もう本当にいちファンとして、今も昔もずっと大好きですね。
――モモンガというキャラクターは、どんなところがお好きなんですか?
井口:モモンガはあんまりいい子ではなくて、そこが家族といるときのわがままな私によく似ているんです(笑)。傍若無人で、わがままで、ちょっと悪そうで、手がかかる……そんな「くそガキ」感が好きですね。邪険に扱っても起き上がりこぼしみたいに自分の力で起き上がってきそう。生命力があって、図太い。そこは自分にも通ずるものを感じます。
私、素直な人間を演じるより、「くそガキ」感が強かったり、「見た目は幼いけど中身はおばあちゃん」みたいな、見た目と相反する要素のある役を演じるのが好きだし、そういうキャラクターに魅力を感じるところがあるんです。視聴者のみなさんにも、モモンガの小憎たらしい感じ、素直じゃないところを愛でていただけていたらうれしいですね。好かれるというよりは、「何か気になるアイツ」みたいな感じで、気にしてもらえたら。
――『ちいかわ』は時が経つほど、ますます人気が加速している印象です。
井口:そうですね。グッズもいっぱいできて、家が今、モモンガだらけになっています(笑)。とってもうれしいです。
――それこそ、声優さんの存在を意識しないような、小さなお子さんも当たり前のように触れている作品になりつつあるような。
井口:そうですね。もちろん、アニメが好きな方に、声優の存在を意識しながら見ていただけるのもありがたいことです。でも、小さい頃に何も意識せずに見たアニメって、思い出深いというか、ずっと心に刻み込まれますよね。そういう作品に携わることができているのは、声優冥利に尽きます。
――『ちいかわ』が好きだった子どもが、大きくなってから写真集を手に取ったら、また印象が変わるかもしれないですね。
井口:あはは。そんなふうにギャップを楽んでもらえることがあったら、おもしろいですね(笑)。先にお子さんを通じて知ってくれたお父さん、お母さんにも届いたりとか。
取材、文=前田久 撮影=金澤正平