「デスゲームを始めます」と宣言した直後に主催者が“即中止”を決断。なぜ?/3分間ミステリー かさなる世界①

文芸・カルチャー

公開日:2024/5/3

かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー かさなる世界』(恵莉ひなこ/ポプラ社)第1回【全5回】

 1話3分ほどで読める短編のミステリー物語。話を読み終わったら、自由に想像して文章の中に“かくされた意味”を考える。潜むトリックは解説ページで答え合わせができるため、もう一度読むことで物語に隠された真実に気づけるはず。本全体を使ったトリックも仕掛けられているため、1話1話完結した話の中で“ある人物”に注目するとさらに作り込まれた世界が楽しめます。今回は『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー かさなる世界』に41編収録されているストーリーの中から、厳選した5つの物語をご紹介!

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かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー かさなる世界
『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー かさなる世界』(恵莉ひなこ/ポプラ社)

デスゲームを始めます

 子どもから老人まで、さまざまな年齢の男女十人が、とある館のリビングに集められていた。

 この館は廃墟となって長く、ホラー好きの人たちの間では幽霊屋敷なんて呼ばれている場所だ。

 壁のあちこちにヒビが入っており、窓ガラスは一枚もない。

 肝試しにくる連中があとを絶たないため、窓には外側から板が打ちつけられている。

 床板は腐って穴が開いているところがいくつもあった。

 そんな汚い床に、十人は芋虫のように転がされていた。

 彼らは全員、自分がなぜここにいるのかわからない。

 ある女性は、何事もなく自宅で眠りにつき、目が覚めたらここにいた。

 ある少年は、道を歩いていたら何者かに気絶させられ、目が覚めたらここにいた。

 ある老婆は、バスに乗っていたら眠ってしまい、目が覚めたらここにいた。

 そんなふうにして、十人はこの場にいるのだ。

 しかも、口にはタオルがつめこまれ、手と足はグルグルに縛られている。

 これでは、ろくに身動きがとれない。

「全員、目が覚めたようだな」

 突然、機械で合成したような声が聞こえてきた。

 全員がなんとか顔をあげると、廃墟ににつかわしくない大きなモニターが、壁にかかっていた。

 そこに、仮面をかぶった何者かが映っている。

「誰よあれ? 変なマスクね」

 気が強そうな女性の声に、仮面の人物は機械音声で答えた。

「私はこれから始まるゲームの主催者だ。お前たちは、血で血を洗うデスゲームの参加者に選ばれたのだ」

「はあ? デスゲーム? 何よそれ?」

「お前たちには、これから行うゲームのルールにのっとり、たがいに殺しあってもらう」

「なんですって? そんなの、絶対にごめんよ!」

「どれだけ嫌がってもむだだ。最後のひとりになるまで、その部屋の扉が開くことはない。お前たちはここに閉じこめられているのだ」

「変な冗談はやめてよ。呪うわよ!」

「ふん。早く出たければ、ゲームに勝つことだな。では、まずルール説明を……」

 そこでふと、仮面の人物は違和感に気づいた。

 十人の参加者は、全員先ほどまでと変わらない様子で床に転がっている。

 

 そのため仮面の人物は、デスゲームの中止を宣言した。

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