新しいオモチャで遊ぶ赤ちゃん。その様子を見た母親が絶叫した理由は?/3分間ミステリー かさなる世界③
公開日:2024/5/5
『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー かさなる世界』(恵莉ひなこ/ポプラ社)第3回【全5回】
1話3分ほどで読める短編のミステリー物語。話を読み終わったら、自由に想像して文章の中に“かくされた意味”を考える。潜むトリックは解説ページで答え合わせができるため、もう一度読むことで物語に隠された真実に気づけるはず。本全体を使ったトリックも仕掛けられているため、1話1話完結した話の中で“ある人物”に注目するとさらに作り込まれた世界が楽しめます。今回は『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー かさなる世界』に41編収録されているストーリーの中から、厳選した5つの物語をご紹介!
新しいオモチャ
みずほは、一歳の誕生日に新しいオモチャで遊んでいた。
オモチャは四角くて、みずほが両手でつかめば持ちあげられるくらいの重さだ。
パカパカと開いたり閉じたりできて、横から長いヒモが出ている。
ヒモは、おうちの壁にくっついていた。
みずほは興奮しながらヒモを引っ張ってみる。
強く引っ張ると、ヒモはすぽんとオモチャから抜けた。
こわれてしまったのかと思いきや、みずほがたくさんあるボタンを押すと、ボタンは明るく光った。
どうやらこわれていないようだ。
みずほはヒモから興味をなくし、ボタンに夢中になる。
そのうち、あるボタンを押すとオモチャに大きな変化が現れることに気がついた。
一度押すと、パカパカする部分が明るくなる。
もう一度押すと、今度はパカパカする部分が暗くなるのだ。
みずほがキャアキャア声をだしながらそのボタンを何度も押していると、となりで机に突っ伏していたママがぴくりと動いた。
「うーん……あら、寝ちゃった」
起きあがったママは、みずほがオモチャで遊んでいるのを見て、目を丸くした。
「ダメよ、みずほ!」
急に大きな声をだされておどろいたみずほは、ボタンを押したまま固まってしまう。
パカパカする部分は暗くなった。
「きゃああああ!」
ママが絶叫し、くずれ落ちる。
ボタンから指を離したみずほは、もう一度押してもパカパカする部分が明るくならないことに気がついた。
しかも、どのボタンももう光らなくなっている。
「うわあああん!」
新しいオモチャがもうこわれてしまったと思い、みずほは泣きだした。