スペイン男子クラブ初の女性監督は日本人!サッカーに捧げた32年間の軌跡と「考える」選手を生み出すマネジメント論

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PR 公開日:2024/5/2

本音で向き合う。自分を疑って進む"
本音で向き合う。自分を疑って進む』(佐伯夕利子/竹書房)

 私は向き合えているだろうか。自分自身と。そして、目の前にいる人たちと……。なんとなく過ごす毎日に行き詰まりを感じているのだとしたら、この本ほど、私たちを奮い立たせてくれるものはない。その本とは『本音で向き合う。自分を疑って進む』(佐伯夕利子/竹書房)。女性として世界で初めてスペインサッカー協会公認のナショナルライセンスを取得し、女性として初めてスペインで男子ナショナルリーグの監督を務め、2018年から4年間、Jリーグ理事も務めた、佐伯夕利子氏による1冊だ。

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 本書では、佐伯氏の32年間の軌跡、欧州サッカー界で味わった歓びや葛藤が赤裸々に語られている。佐伯氏がスペインに降り立ったのは、1992年の18歳の時。語学の修得を兼ねて女子サッカーチームに入ると、彼女は平日、渋々と大学に通う時間よりも、毎週末にゲームがあるサッカーの時間の方が心地よく感じたという。そんな時に知ったのは、スペインではライセンスがないとサッカーの指導ができないということ。逆に言えば、勉強して指導者のライセンスを取ればサッカーのコーチになれる。そこでスペインに来て2年目、佐伯氏は大学を辞め、19歳で指導者養成学校に通い始めた。まだ男性社会だったサッカーの世界へ飛び込み、なりたい自分を求めて突き進み続けた。

 養成学校で佐伯氏は授業についていくために、録音機に加え、西和と和西の辞書を2冊持ち込み、聞き取った内容を片っ端からノートに書き起こしていったという。そんな佐伯氏のバイタリティとサッカーへの情熱には圧倒させられる。それに、彼女がスペインで経験したエピソードにも何度もハッとさせられる。マドリードのサッカー協会に「女性ですが、指導者養成学校に入れますか」と問い合わせた時に気が付いた、自分の中にある偏見。ライセンスを取得して新米コーチになり、指導に対して11歳の少年から言い返された時の衝撃。――佐伯氏は、スペインで幾度となく自分と向き合い、自身の間違いに気付かされてきた。そして、そんな彼女の日々を知るにつれて、私たちも自分の中に自らを縛り付けている考えがあることに目を向けずにはいられなくなる。

 特に、2014年からスペインの強豪クラブ・ビジャレアルで120名の指導者たちに向けて行われた指導者改革の話は、私たちに新しい視点をくれる。この指導者改革では「考える」選手を生み出すために、指導者は選手に「問う」ことが求められ、指導者は心理学者にその言動を細かくチェックされたのだそう。「あなたは選手のうち、20人中13人にはこんなにも声をかけているのに、残りの選手にはまったくフィードバックしていない」「苛立っている時の、あなたの本心は何? ――『言う通りにしないおまえが気に食わない』と思っているのでは?」などと、痛い指摘をされたこともあったという。指示をするのではなく、対話をする。言葉にこれでもかというほど気を配り、選手たちの隠された本音に寄り添う。発言のない、一見「問題のない」選手たちにも、真摯に接し、メンバー全員の成長を目指す。スポーツマンではなくとも、「誰かを指導する」立場を経験している人ならば、これほど参考になるものはないだろう。

 JリーグやWEリーグの理事も務めてきた佐伯氏は、自身が得た知見を日本サッカーにも還元しているというが、普段サッカーに関わっていようがいまいが、佐伯氏の経験には誰でも心動かされてしまうはずだ。本書を読むと、普段感じたことのない、爽やかな風が心の中を駆け抜けていく。もっと自分と向き合い、他人と向き合ってみよう。そうすれば間違いなく見えてくる景色も変わってくるはずだ。自分の信じた道を突き進む佐伯氏の姿が、あなたの毎日もきっと変えてくれるに違いない。

文=アサトーミナミ

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