長年連れ添った老夫婦が若返ったら…お互いにドキドキが止まらない!! 新感覚ラブコメ『じいさんばあさん若返る』

マンガ

公開日:2024/6/24

じいさんばあさん若返る

 ラブコメと言われた時、どんな主人公を思い浮かべるだろうか。多くの場合、若い男女を思い浮かべるのではないだろうか? 若々しく瑞々しい思春期特有の心の描写で、読者をキュンキュンさせてくれる作品も多い。もちろん、大人の主人公だって負けていない。さまざまな経験を積んできたからこその魅力で、読者をドキドキさせてくれる。今回はこれ以上ないほど大人な夫婦のラブコメ『じいさんばあさん若返る』(新挑限/KADOKAWA)を紹介しよう。このマンガを読むことで新感覚のドキドキとキュンキュンを感じることができるだろう。

『じいさんばあさん若返る』は著者の新挑限(あらいどかぎり)先生が描く、長年連れ添った夫婦がイケメン&美人に若返ってしまうコメディマンガ。その新感覚の面白さで2024年4月にアニメ化。2024年6月21日にはコミック8巻も発売された人気シリーズだ。

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 青森でりんご農家を営みながら暮らす老夫婦の正蔵(しょうぞう)とイネ(いね)。長年連れ添ったふたりであったが、正蔵はだんだんと老いによって体の自由がきかなくなってきていた。そんな正蔵には心残りがあった。イネを新婚旅行に連れていくという約束だ。長年連れ添ったイネにした若い頃の約束。その約束を果たせないままに動けなくなっていく自分を歯痒く思っていた。ある日、思い出の木になっていた金色のりんごを食べ、いつものように休んだのだが目が覚めると異変に気づく。

じいさんばあさん若返る

 なんと正蔵は若返っていたのだ。深く刻まれたしわは消え、若々しい肉体になっていたのだ。驚きつつもイネの元に向かうと同じく若返ったイネの姿があったのだった。

じいさんばあさん若返る

 イケメン&美人夫婦に若返ってしまった正蔵とイネ。その姿に驚きつつも受け入れていく周囲の人々。若返った仲良し夫婦が巻き起こす騒動に、彼らの住む青森の田舎も周囲の人々も徐々に変化していく。

『じいさんばあさん若返る』の魅力は長年連れ添った夫婦だからこそのラブコメにある。長年連れ添った夫婦ということは当然お互いを知り尽くしている。ふたりの関係が安定しているということだ。

 お互いの魅力を知り尽くしたふたりの関係がブレることはない。最上のパートナーであることを自覚しているし、他に目移りしないほど惚れているのだ。それを周りも理解し受け入れている。つまりふたりの間に互いの駆け引きはあれど、邪魔するような障害はないのである。

 ラブコメといえば恋敵が登場する、周りが反対するなど様々な障害や壁が立ちはだかるのが常である。それはラブコメにおける見どころでもあるし魅力でもあるのは確かだ。あらゆるものを乗り越えて近づいていくふたりに、ハラハラドキドキするのも楽しみのひとつではある。だがそれは視点を変えると読者にとってストレスにもなり得る。主人公たちがツライ状況にあれば、こちらも見ていてツラくなる。もちろん主人公たちには困難な状況を乗り越えることを期待しているが、もしそうならなかったらと思うと気が気ではない。それに想定していたカップルとは違うカップルで結末を迎える作品もあったりする。

 だが『じいさんばあさん若返る』にはその手のストレスは皆無なのだ。正蔵とイネは大きな壁を乗り越えて、ここまで夫婦として歩んできている。言うなれば、本作は波瀾万丈を乗り越えた先、ゴールインのそのさらに先にある幸せな時間の物語なのだ。

じいさんばあさん若返る

 ラブコメを読んだ誰しもこんな風に思ったことがあるのではないだろうか? この後、ふたりがどうなったのかを見たいと。それは単純にくっついた後の結末が見たいということではなく、その後のイチャイチャとか甘い生活とかを見せてくれよ! という願いだ。『じいさんばあさん若返る』はそんな願いを叶えてくれている作品と言ってもよいだろう。

 ふたりの馴れ初めも物語が進むと知ることもできるため、ふたりがどうくっついたか知りたい読者にとってもよいだろう。もしかしたらふたりの若い頃の話が今後追加される可能性もある。となれば、本来のラブコメ成分(とはいえゴールインは確定しているが)の追加摂取も期待できるかもしれない。

 それに正蔵とイネには高校生の孫である未乃(みの)と詩織(しおり)がいる。このふたりがどんな恋模様を見せてくれるのかを楽しむのもありだ。若返った最強夫婦の祖父母が味方なのだから孫のふたりもきっと幸せになれるだろう。

じいさんばあさん若返る

『じいさんばあさん若返る』は青森の田舎(モデルは弘前市や平川市周辺)を舞台に若返った老夫婦が騒動を巻き起こすコメディ作品だ。ノーストレスなラブコメだけでなく、高齢化が進む地方にも魅力がありできることがあるという力強いメッセージをも内包した作品だ。作品にもノーストレスを求める読者にこそ、田舎で暮らす正蔵とイネの姿はより魅力的に映るかもしれない。

文=ネゴト/ カリス魔王TK

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