「自分を理解し、今を楽しむだけで人生はなんとかなる」――“ニートと居候とたかさき”・野尻が『嫌なこと全部逃げてみた』に込めた思い〈インタビュー〉
公開日:2024/5/15
ルームシェア密着動画が大人気のYouTubeチャンネル「ニートと居候とたかさき」が、2024年2月に初著書『嫌なこと全部逃げてみた アラサー男3人のがんばらない日常』を刊行。3人のエピソードやかけあいを楽しみながら、共感したり、ちょっと役に立ったり、ダメな自分まで愛おしくなったりする一冊になっている。
今回は、進学校卒、多趣味、彼女持ち、コミュ強でニートの野尻さんに特別インタビューを行い、「好きなことだけに全力で打ち込む」新時代の人生哲学を教えてもらう。
野尻:高校卒業後、フリーター期間を経てニートに。ゲームや麻雀、競馬が好き。
たかさき:野尻と高校の同級生。卒業後からルームシェアをしている。元芸人で現クリエイター。
南:野尻とたかさきの家に居候をしている芸人(仮)。たかさきの元相方。
自分の言葉の意図と受け取り手とのギャップを埋めるのが難しかった
――おかげさまで書籍『嫌なこと全部逃げてみた』は好調な売れ行きですが、野尻さんの記事で、さらに盛り上がることを願って、取材を始めさせていただきたいと思います。
野尻悠輔(以下、野尻):微力ながらお力添えします。
――なんと素敵な言葉遣いで、ありがとうございます。書籍に関する周りからの感想で、印象に残っている言葉はありますか?
野尻:とりあえず、周りの声でネガティブな意見を目に、耳にしたことがないですね。全員が全員、読みやすいとか、デザインがかわいいとか、見た目がシンプルにおしゃれとか。内容も楽しいし、面白いし、スラスラ読めるんで、あっという間に読んじゃったとか、そういう声しか聞かないですね。正直なところ。
――嬉しいことですね。デザインに関しては、編集からたかさきさん宛に連絡をしていたのですが、たかさきさんはどんな感じでお2人に相談をしてくださっていたのでしょうか。
野尻:たかさきが、LINEのやり取りをそのままグループに転送して、「何がいいか選んで」みたいな感じで投げてくれていました。3人の中で「俺はこれがいいな」みたいに意見を出して決めていました。でも、割れることはあんまりなくて。カバー案も4種類ぐらいあったと思うんですけど、みんなの中では、ほぼ1、2択というか、結構意見はまとまっていたので、揉めるみたいなことはなかったですね。あとはたかさきには少し独りよがりなところがあるので、そこはもう僕らはお任せしますといった形で。
――さすがのチームワークですね。一緒の家にいながらも、デジタルベースでやられたんですね。
最初にたかさきさんから書籍化の話を聞かれた際はどういうふうに思われたんでしょう?
野尻:YouTubeに来るいわゆる「案件」というか、お仕事の依頼はたかさきに一任していて、たかさきがほぼ断ってるんで、実際僕らのところに届くのってほぼないんですよ。その中でたかさきが「俺らが本出せるのであれば、めちゃくちゃ面白そうというか、楽しそうだから、本出すのはアリかなって思ってるんだよね」みたいな感じで、みんなが揃っているときに話し出して。
たかさきがそういう話をYouTubeのメンバーの中でするのは稀なので、多分たかさき的にも本を出したいんじゃないかな? みたいに思って、みんな「本ええやん」とか、南とかも「面白そうやん」みたいな感じで、受けることに決まったって感じですね。
――たかさきさんの気持ちも慮りながら皆さん賛成してくださった。
野尻:そうですね。でも、内容というか、正直どんな本にするの? みたいな。どういう感じの本なの? みたいなところはみんな気になってましたね。
――実際、制作の中で難しいなと思ったことはありますか。
野尻:取材の中で何十時間と話していると、やっぱり膨大な文字数になるわけじゃないですか。だから、どうしても自分の言葉の意図と受け取り手とのギャップがたまにあったり、詳細を覚えていなかったりして、そこを埋め合わせていくのがちょっと大変でしたね。
南たちはよく喋るというか、二人とも会話が多いと思うんで、聞き手の立場になって考えたらそれも大変だったんじゃないかなと思いますね。
「できない人間だとまずわからせる」っていう考え方は、自分にはなかった
――今までの人生を言語化してみて、改めて自分に対しての気づきや発見はありましたか?
野尻:正直、僕は「自分で自分のことを理解できてなかったらダメやろ」って思ってるんで、自分の口から出てきた言葉とか、改めて文で見て驚いた一面は個人的にはあんまりなくて。
ただ、どちらかと言うと、たかさきと南に対して、こういうふうに思ってたんだなとか、こういうふうに考えてるんだな、みたいに思ったことの方が多かったです。新しい一面を見られましたね。
本にも書きましたけど、10人いたら10通りの考え方があるじゃないですか。今回客観的に見て、それが本当にバラバラな3人だなって思いましたね。3人とも色が違うなと。
――2人の項目で、一番「こんな考えもあるんだ」って思った項目を覚えていたりしますか。
野尻:自分の辞書になかったみたいな感じの言葉だと、南の「できない人間だとまずわからせる」っていう考え方は、自分にはなかったんで、「なるほどね」って思いました。自分ができないことを他人にわからせて、相手の迷惑とか都合を考えずに「これが俺だよ」って自分を押し通して、周りと付き合っていくみたいなのは、自分にはなかったんで、そこは一番勉強になったというか、ほーうって思いましたね。
――野尻さんは本で「ちゃんとしてるフリーターアルバイター」だったっておっしゃってましたけど、やっぱりピシッと見せるスタンスの方が多かったですか。
野尻:自分もどっちかっていうと、自分を突き通して周りとやっていくタイプなんで、あんまり南と変わらないかもしれないんですけど。ただ、やっぱりどうしても相手のことちょっと気になったりするわけじゃないですか。特に初対面の人とか、大人の人がいたりとかしたら一応。そこを一切無視して、「南やで」みたいな。「はい、俺や」みたいな感じでいるっていうのが、さすがやなって思います。
――3人とも全然違う考え方なのに、干渉しないスタンスと、「みんなもっと自由に生きていいんだよ」「ゆるく行こうね」っていうメッセージは共通してお持ちで、三者三様だけど、芯は一緒のところがあるのかなと思いました。野尻さんも3人の中でここは似ているなと思うことはありますか。
野尻:他人に干渉しすぎないとか、他人にあんまり期待しないとか、そういうところは確かに似てるんじゃないかなとは、今言われてみて思いますね。
――普段からやっぱ僕たち似てるよねとかは……思わない。思わないか。
野尻:それは全く言い合わないし、思わないです。さすがに30歳前後の男3人のルームシェアが、それで鼓舞し合ってたら、ちょっとさすがにきついものがあるんで。もしかしたら全員思ってるかもしれないですけど、表には出しては、皆言わないです。