「自分を理解し、今を楽しむだけで人生はなんとかなる」――“ニートと居候とたかさき”・野尻が『嫌なこと全部逃げてみた』に込めた思い〈インタビュー〉

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公開日:2024/5/15

自分で自分のことを100理解して、行動を決める

――ファンの方からもお悩みを募集しましたけれど、野尻さんはこういう質問コーナーやお悩み募集があったときってどうするタイプですか。

野尻:全く送らないですね。今回って若干お悩み相談寄りになったじゃないですか。自分は悩みっていうのがなくて。なので、お悩み相談とかを送る人の気持ちは正直わからないですね。

――ですよね。悩みがないって本当に興味深いです。読者さんの感想を読んでいても、「野尻さんにだけ異次元の境地にいる」っておっしゃる方がいて。やっぱり嫌なことから逃げた後のことを考えちゃって逃げられないことってあると思うんです。でも、野尻さんはきっと将来のことは考えないし、そこでもしよくないことが起こったとしても受け入れるじゃないですか。読者の方が「3秒先までしか考えない」とか「悩まない」とかいうスタンスを実践したいと思ったとき、どうしたら野尻さんみたいになれるのでしょうか。

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野尻:どうですかね。難しいですけど、でも、自分で自分を100理解するのが一番手っ取り早いと思ってます。悩み相談を送ったりしても、その答えを行動に移すのって結局自分じゃないですか。

――本にもあったその言葉すごく好きなんですよ。

野尻:他人に自分のことを質問しても、他人は自分の全部もわからないまま、その質問の文字だけ見て、答えを返してくるじゃないですか。それが自分の行動の決断を揺るがせるほどのものかって言われたら、自分の中では絶対そうではなくて。
 結局は自分で行動するんだったら、もう自分で考えて自分で理解して、自分で何ら後悔しない選択を選んだ方が、自分のためにもいいだろうなって思ってるんです。
 だから、視聴者の方に言うのであれば、やっぱり自分で自分のことを理解して、とりあえず何かを選択して行動するっていうのが大事だと思います。やっぱ自分主軸でいた方が絶対に楽なんで。

――自分で選択して行動するのが大事。

野尻:そうです。ただ、「行動しない」っていうのも、「行動しない」っていう行動をする選択。別に何かやらなきゃいけないわけじゃなくて、「これは自分には無理そうだからやめよう」っていうのも選択肢の一つ、行動の一つだと思うんで、「何かしなきゃ」ってとらわれるのは、何か違うかなと個人的には思います。
 本当に無理なものは無理なんで。無理っていうのはもう受け入れた方が絶対早いんで。自分を理解したうえで、行動するかしないかも自分で決めるのがいいですね。

――自分で自分を100理解するために、自己分析とか、性格診断とかをやったりはしないですか。

野尻:やらないですね。そういうのも所詮誰かが作ったものなんで。自己理解のために特別何かしてるとかいうのは別になくて。でも、やっぱりニートなので、人よりも自分と向き合う時間が長かったっていうのが秘訣ですかね、もしかしたら。
 とはいっても、普段から「自分はこうだな」って考える時間があるというわけではなくて、その都度その都度、自分の中で出てきた選択をしているって感じですね。現場というかライブでの判断に責任を持つことで、自分のかたちが見えてくる感じです。

意外と忙しい!? ニート生活のリアル

――「ニートなので時間がある」っておっしゃっていただいたんですけれども、この本を読んでニートの暮らしに興味を持たれた方も多いんじゃないかなと思いまして。

野尻:よくないですね。

――なので、毎日違うとは思うんですけど、1日のスケジュールをちょっと教えていただきたいなと。

野尻:本当にざっくりですけど、1日何も予定がない日のスケジュールでいうと、まずアラームなしの起床なので、大体11時、12時前後ぐらいに起きまして、いわゆる朝ご飯、昼ご飯一緒の「あひる」ってやつで、ご飯を食べコーヒーを飲みます。あとは動画を見たり、映画を見たり、ゲームをしたりして、大体夜を迎えていますね。夜ご飯作って、食べて。平日は「Mリーグ」という麻雀の試合のライブ配信を欠かさず見て、夜遅くからゲームスタート。深夜までやって、またアラームなしの寝床につくと。

――素晴らしいスケジュール。ぜひ私もそうしたい。

野尻:いえいえ、あまりそうはならないように。でも、それこそ、年明けに友達と会ってるとき、ふと「野尻って毎日何してんの?」みたいな感じで聞かれて。スケジュール帳見たら、KADOKAWAさんのこの本関係と、2月に行われたLIVEと、JOURNAL STANDARDさんのコラボがちょうど重なっていて、遊びの予定も含めたら、1ヶ月で、1日中何も予定がない暇な日が2日しかなくて。これは果たしてニートなのか? ってちょっと思いました。

――お忙しいタイミングでしたね。最近は舞台に立たれたりと活躍の場を広げていらっしゃると思うんですけど、YouTubeが始まる前と今では、やっぱり環境や心境に変化はありますか。

野尻:環境はめちゃくちゃ変わりましたよね。家にズカズカYouTube撮りに来てるやつがいるんで。パンイチとかで家にいられないなと思いますし。

――それは良い変化ですか。ご自身にとっては。

野尻:もちろんです。ゆっくりしたいなって気持ちもありますけど、これはもう自分の一存では決められないので。これに関してはもちろん良いことだなと、良い環境の変化だなと思ってます。

――楽しいですか。

野尻:はい、楽しいです。学校の先生と生徒みたくなっちゃいましたけど、今。

――「はい、元気です」のやつになっちゃいました。

野尻:はい、元気ですね。楽しいです。

――今後さらにこうなりたいみたいな展望はありますか? 今後のことは考えないっておっしゃってるのに恐縮なんですけど。

野尻:いえいえ、全然全然。本当にYouTubeのことに関しては、もう本当にただ撮られているみたいな感覚なんで、「みんなでこうなろうぜ!」「こうやってやろうぜ!」みたいなのは個人的にはあんまりないです。たかさきは思ってるかもしれないですけど。
 どっちかっていうと自分は今30歳ですけど、このニートとしての残りの人生、50年、60年とか、どうなるんだろうなって感じですね。
 こうなりたい、ああなりたい、そのためにこうするんだ、あーするんだっていう目標が明確にあれば具現化しやすいと思うんですけど、別にそういったものは特にないので、わからないです、正直。具体的なイメージみたいのは正直全く湧かないですね。

――新しく趣味や仕事として始めてみたいことはありますか?

野尻:ちょっと冷めたこと言うんですけど、そういうのは本当に何もなくて。
 例えば、今僕は小規模ですけどゲーム配信をやってて、ゲーム配信の世界がすごい難しいのは重々承知なんですけど、ゲームして、お金もらえて生活できたら最高やなって思うんです。でも、そうなるために何か努力するとかいう行動はとってない。こうならないかな、いいなとは思いつつ、実際に実現させるほどの熱意はないんで、本当にどうなるかわからないんですよね。
 それこそ競馬とかも本当に毎週やっていて、この熱量だったら、YouTubeで発信を始めてもおかしくないなとは思うんですけど、いかんせん仕事にする方向には熱意がないので、やっていなくて。いろいろ考えた結果、ずっとこのまま生きているって感じです。

――今、そういう人もいていいんだって救われた気がします。憧れがあったり、これいいなと思ったりしても、そこに行こうっていうまでの気持ちになれないの、すごくわかります。

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