「自分を理解し、今を楽しむだけで人生はなんとかなる」――“ニートと居候とたかさき”・野尻が『嫌なこと全部逃げてみた』に込めた思い〈インタビュー〉

暮らし

公開日:2024/5/15

料理って面倒だけど、鍋は最高

――そもそもの話なんですけど、野尻さんにとって「嫌なこと」ってありますか?

野尻:嫌だっていう感覚はなくて、面倒くせえなみたいな、これ面倒いなっていうマインドが唯一のマイナスなネガティブ思考って感じですかね。別にネガティブとかじゃないんですけど、強いて言うならそっち系の思考になりますね。

――一番面倒だと思うのはどんなことですか。

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野尻:意外と料理面倒くさいんですよね。本にも多分書いてあると思うんですけど、本当に許されるんだったら全然別に毎日外食でいいんですよ。好きなもの食べれるし、副菜主菜メインまで全部あるしみたいな感じで。ただ、金銭的にもなかなかそういうわけにはいかないんで、致し方なく料理してるって感じです。やっぱ1人分の料理作るのって食材を余らせちゃったりして難しいじゃないですか。そういうのを考えながら毎日やるってなったら、結構面倒だなと思って。
 うちの母親は仕事もしながら夕方帰ってきて、家族5人分の食事を毎日作って、次の日のお弁当まで作ってたんで、凄すぎるな、偉大だなって思います。

――面倒な自炊の中で、おすすめのメニューは何ですか?

野尻:本でも紹介しましたけど、本当に1個だけ結構あるのは、やっぱ鍋ですね。もう鍋は最強なんで、本当に。オールシーズン。別に夏とか冷房つければ食べれますし。
 鍋は食材切ってぶち込むだけじゃないですか。本当にもうめちゃくちゃ楽で美味しいです。味も今は鍋の素なんてめちゃくちゃあるじゃないですか。それに合わせて自分の好きな食材入れていいし。自分の具材で食べれるし美味しいし、シメまで行けるし、2日目も行けるしみたいな感じなので。鍋はめちゃくちゃオススメしますね。自炊は基本的には面倒だけど、鍋ならまだちょっと最高な気持ちになれるってことで、鍋はもうめちゃくちゃ推してます。

――もし可能だったら、1個お気に入りのレシピを教えていただけますか?

野尻:動画(※)でも作ったことあるんですけど、特別に一つ紹介します。
 鶏むね肉を細かく切って、ポリ袋とかに入れて、そこに醤油とお砂糖と酒とニンニクと白だし(醤油と白だしじゃなくて、めんつゆ1本でも大丈夫)を入れて、最後にマヨネーズを入れます。マヨネーズの油分で、鶏むね肉のパサパサ感がなくなって、鶏モモ肉に近いような感じで美味しくなるんですね。袋を揉み、30分くらい漬け込んで、あとは片栗粉をまぶして焼くだけです。焼くだけで、めちゃくちゃヘルシーで罪悪感もないけど、めちゃくちゃ美味しい。ご飯もめっちゃ進むようなおかずなんですよ。調味料は全部目分量でお願いいたします。
※2022/1/16の動画「鶏ムネ肉だけで絶品料理を作るニートと15年飼っていた柴犬が逃げちゃったたかさき」

たかさきとの最初の絡みは授業中のコカ・コーラ

――高校でのたかさきさんとの出会いから仲良くなるまではどんな感じで距離を縮めましたか?

野尻:たかさきとは高校1年生のときに同じクラスになって、最初はいわゆる別グループだったんですよ。大体出席番号順の近くで固まるみたいな感じで。1学期の初めての席替えでたかさきと席がすごく近くなって、お互いの仲良かったグループの人たちが自分とたかさきの所に集まってきて、大きな1グループになって。休み時間にトランプをやったりする中で、めっちゃ仲良くなりました。たかさきは、一緒にいて楽しいし、面白いし、ノリというか、会話の波長みたいのもすごい合って。高1のときから放課後とかもよく一緒に遊んでましたし、それこそ家に泊まりに行ったりもしていたような気がしますね。お互い部活ある中で。

――高校時代のたかさきさんは尖っていたんじゃないですか?

野尻:あーもうすごかったですね。

――最初話しかけるのが怖かったりしなかったんですか。

野尻:全く。すんごい小っちゃかったんで、高校1年生のときのたかさき。本当にこれくらいのイメージなんですけど、一番後ろの席でドカンって座ってて、逆にちょっとかわいかったですね。マスコットキャラクターみたいな。最初の方からいじられキャラだったんで、絡みやすいというか、話しやすさはありましたね。

高校1年生のたかさきさんのサイズを示す野尻さん
高校1年生のたかさきさんのサイズを示す野尻さん

――最初の会話って覚えてますか。

野尻:いや、最初の会話は本当に覚えてないですね。
 席が近くなる前の絡みで覚えてるのは、授業中、後ろでプシュッって聞こえて、振り返ったらたかさきが授業中にコーラを開けて飲んでたんですよ。その後、何話したか覚えてないですけど、話しかけに行った記憶だけ覚えてます。

――南さんは最初全然野尻さんに心を開いてなかったじゃないですか。どんなふうに今の関係になっていきましたか。

野尻:多分お互い歩み寄りとか多分なくて、自分も最初から特に変わってないんですよ。対話しないと、僕がこういう人間だっていうのがわからないじゃないですか。だから、南からしたら、ずーっと「たかさきと一緒に暮らしてる奴」みたいな目線だったと思います。
 南がうちに来たのは18歳くらいのときだったわけだから、ちょっとずつ南が大人になったっていうのもでかいと思いますね。ある程度のコミュニケーションっていうか、最低限の大人としての振る舞い、みたいな感じで南がちょっと成長したっていうか変わったっていうのは、大きいと思います。
 その中でYouTubeが始まって、より僕と接する機会が増えて、僕の人となりが向こうにも見えてきて、安心してくれたんじゃないかなっていう気はしますね。

どんなことも「楽しい」に変える視点を持つ

――芸人経験のある方々に囲まれてる中で、野尻さんいつも面白いじゃないですか。即興でネタを振られたり、会話したりしている中で、周りと自分を比べたりとか、緊張したりすることはあるのでしょうか。多分ないと思うんですけど。

野尻:えーないですね。でも、もちろん事実として芸人の人がやっぱり喋りとか頭の回転がすごい。僕は芸人とは違うっていうのは重々承知で、でも、別にそれが悪いとかマイナスとは考えてない。別にそれを引っさげて、行動とか、考え方とかに何か影響が出るみたいのは全くなくて。どちらかというと、せっかくこんな状況だし、楽しもうって気持ちが強いです。

――まさに本でも「緊張よりも『楽しい』が勝つ」とおっしゃってましたけど、そのマインドですかね。

野尻:そうですね。もう極端に言うと、自分の人生のベースが「楽しむ」で、「楽しむ」ことに重きを置きすぎてる思考なんです。些細なことでも楽しんだ方が絶対に楽しいんで。
 本当に何でもいいんです。例えば駅までの道とか、洗濯とか、そういう本当に些細なことでも、自分なりに楽しみ方を何か1個見つけるだけで、全然見方が変わってくると思うんですよね。駅までの道だったら、ちょっといつもと違う道歩いたりとかして、違う景色を見て、「おーここにこんなのあったんだ」とか、たまに猫に出会ったりとか、無駄にコンビニ寄ってみたりとか、小さな楽しみ方を自分の中で見つけて、そういう積み重ねが、人生全体の充実みたいなところに繋がっていくのかなって思っているんです。

――最後に、ファンの人たちに伝えたいこと、教えていただけますか。

野尻:そうですね。「いつまでも元気でいてね」っていう感じですかね。
 真面目になんですけど、人それぞれの考え方、生き方みたいのがありますよね。
 あなたが思ってることだけが全てじゃないから。でも、周りの声にも良い意味でも悪い意味でも影響されすぎないようにって伝えたいです。
 変な話、三者三様の僕らの考え方や行動のとり方を聞いても、「あっそうなんだ」とか、「これが正解なんだ」とか思ってほしいわけではなく、ただ、こういう人たちもいるんだよっていうだけ。
 なので、あなたもあなたなんだよっていうことが伝わっていればいいなと思います。
 そのために「こんな本出しました」「本書きました」とかじゃないんですけどね、別に。

取材・文=伊藤

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